茗荷の花


  台風の過ぎし月夜に茗荷の花は少女のように
              微笑みて 咲く



  言ひたきをすぐには言葉に出せなくて
          椀に残れる蜆を啜る
パラソルの地を這う陰の円の中
        もう一人の我と反語を交わす


   真夏の暑い日に日傘を挿して歩いていると  ふと
   円い陰の中にもう一人のわたしがいて 現実の私と
   心のなかで ああでもない こうでもない会話をしている
   自分に気ずいて ふっ と苦笑い
更地となる老舗の跡に向日葵が  
         一本大きな花を咲かせをり


    明治じだいのころから呉服の店を営んでいた銭屋と
    いう老舗が閉店したかなり広い敷地に大きな向日葵が
    咲いていました
羞じらへるような花唇の胡麻の花
          羽音と共に蜂を呑み込む


   町中の畑に淡いピンク色をした胡麻の花がさいていた
   夏のあるかなしかの風ゆれている
   細長い筒状の花に蜂が蜜をもとめて羽の音も一緒に呑み込まれる
   ように消えていった
初秋になると亡き父を思い出す  萩の花がさきみだれて
  少し涼しい風が吹くころだった  
  


  秋来ぬと目にもさやかに萩の風 
           永の別れの父を偲びぬ 
まだまだ残暑がきびしいけれど小高い山に登ってみると
   吹く風は爽やかな秋を思わせる  吾亦紅の花が茅などに 
   混じって咲いているまるで音符の様な風情に揺れている


   登り来し山頂に吾亦紅  音符のような花のさやけし

  
   吾亦紅が素朴に咲いていたので折って帰えろうと
   と思ったがやはり野原に咲くのが一番似合う
  

   手折りたき思いの過る吾亦紅末枯れし原がやはり相応し
            
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雷鳴の大きな音と共に大降りのあめになった暫くすると
  雷雨のさり西の空が明るくなり広々とした青田にそよそよと
  風がわたりにしびがさしてきた  大気が心地よい
  稲の葉のそよぐ田の中に一羽の白鷺がさっきの雷のこと
  知らないように首をのばして立っていました
 

   雷雨去り西日広がる青き田に
      小鷺は余韻の静けさに立つ
          
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不況の長引くせいか商店街もシャツター通りなどと
  呼ばれる此のごろ   縄のれんを掛けたまま廃屋になった
  飲みやさん軒下に置去りにされた招き猫の目がなにか言い
  たそうにしょんぼりしている
 

   縄のれん掛けたるままの廃屋に
        物言うような招き猫の眼
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   久しぶりに田舎へ帰った穂麦もうれて 風に波打って
   赤城山を借景に茜色に染まっている自然の美しさに感動
   

   農夫らも熟るる穂麦も夕照の中遠くかすかに
               河鹿なきをり
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鎌倉の八幡宮へ行きました 階段の途中の聳える銀杏の木
 新緑の芽吹きも推定八百年前から毎年この様に春になると
 大樹いっぱいに芽の吹く生命力に素晴らしさを感じました


八百年の春を芽吹きし大銀杏
      実朝しのぶ朧なる鐘