いやー、季節はすっかり初夏の様相ですな!

道行く若奥さまたちも、ヴィン・ディーゼルばりに袖無しシャツで二の腕を露にし、俺としても、「かじりてぇなぁ…」という、間違ったゾンビのような心持ちで凝視する、そんな今日この頃である。
さて、最近というか今年に入ってからの俺はと言えば、イップ・マン、イップ・マンとはしゃいで一人で詠春拳の構えを真似するような、そんな毎日を過ごしてきた。
順当にいけば次は、デニス・トー版のシリーズやスピンオフの『マスターZ』あたりではしゃぎたいところだが、ちょっと待って欲しい。
七月と言えば、六日はスタローンの誕生日、30日はシュワちゃんの誕生日と、世界の二大マッチョスターを輩出した、一年の中でも屈指のマッチョ月!
織姫と彦星に思いを馳せるよりスタローンとシュワちゃんに思いを馳せる方が先やろがい!という話である。
そう言えばこんなエピソードを聞いたことがある。
まだ二人とも若く、同じマッチョスターとして激しくしのぎを削っていた時代。
ある時シュワちゃんの元に出演依頼がきた。
脚本を読んだシュワちゃんは、「こいつぁクソだ!」と判断し依頼を断った。
次に同じ依頼がスタローンの元に届いた。
スタローンはシュワちゃんに、「こんな話があるんだけど、君はどう思う?」と聞いてみたという。
シュワちゃんはこう答えた。
「その話は僕のところにもきているよ。それは素晴らしい脚本だと思うね!僕も出演を真剣に検討しているよ!」
それを聞いてスタローンはこの依頼を受け、作品は無事に大コケしたという…。
いやぁ、心暖まるエピソードだなぁ!
といった話を踏まえた上で、今回ご紹介する作品はこちら!
改めて見るとひどいジャケットだ!
名探偵ばりの鋭い推理力を持つ皆さんなら薄々察しておられるだろうが、この作品こそが、シュワちゃんがスタローンに押し付けてコケさせた一本だ!
「スタローンがスタちゃんに!!」
こんな頭の悪い煽り文句がかつてあっただろうか!?
スタローンの元にパワフル母ちゃんが襲来!
スタちゃん刑事のドキドキマザコンライフが、今始まる!
それではストーリー!
泣く子も黙る鬼刑事スタローン。
今日も今日とて、全く潜む気のない潜入捜査を敢行、パナ○ニックに熱い風評被害を撒き散らしながら、何かよく分からない事件を力づくで解決に導くのだった。
おまけに職場では、みんな大好き女上司の警部補とただならぬ関係で、職場で公然と痴話ゲンカをカマすなど、もう笑っちゃうくらいのハードボイルド街道を突き進んでいた!
そんなある意味最強の男スタローンにも弱点はあった。
それは、実家のオカンには頭が上がらないこと!
そして、その噂のオカンがこの度、息子の暮らしぶりを確認するために田舎からやって来た!
到着するなり、小さい頃のオムツ姿のスタローンの写真を誰彼構わず公開する、ド深夜に掃除機をかける、トイレ用洗剤でスタローンの銃を洗うなどなど、過保護なんていう既存の単語では言い表せないほどやりたい放題なママ。

↑洗浄済みの銃にションボリなスタローン。
これには鬼刑事のスタローンも、いつも以上にトロ~ンとした虚ろな目にならざるを得ないのだった。
さすがに銃をオシャカにしたのは悪かったと思ったのか、息子にサプライズで銃をプレゼントすることにしたママ。
しかし、買った相手が悪かった。
どう見ても正規ルートじゃねぇ!!
案の定この売人は、盗品の違法銃を売りさばいていたようで、いきなり何者かの襲撃を受けてハゲが死亡。
ママは殺人事件の目撃者として、無事にスタローンの職場に正式にご招待。
職場にママがいるなど、成人男性としては最も勘弁してほしい状況だが、この違法銃を巡る事件が思わぬ陰謀へと繋がっていく!
ママとバディを組んで陰謀に挑むスタちゃん!
陰謀というには雑でスケールの小さい陰謀!
唐突にカットインされるスタローンのシャワーシーン!
夜のオフィスで繰り広げられるオフィスラブ!
止まれ!さもなくばママが撃つぞ!
果たしてスタローンは、暴走特急ママとヒステリー女上司、ついでに事件解決というマルチタスクをクリアすることができるのか!?
そして、シュワちゃんの判断は正しかったのか!?
これは素晴らしい脚本だと思うよ!
僕も皆にお勧めすることを真剣に検討しているよ!
ではこの脚本の何が素晴らしいかと言えばこうだ。
普通この手の作品では、親子ドラマと事件の二本柱を並行して描きつつ、最終的には双方が見事にリンクして大団円を迎える、そんなクオリティの高い脚本を期待しがちだ。
だが本作はひと味違う。
親子関係の描き方も雑なら事件の展開も雑、双方の絡みも蓋然性が薄いという新機軸!
「誰か止める奴はいなかったのか!?」という意味においての蛮勇にはエールを送りたい!
いや、まあ、結局のところ、やっぱり州知事になる男の判断力は違うな!という話で、さすがの俺も、本作が世間から辛辣な評価を受けている現実には納得せざるを得ない。
では本作のレビューを、「この脚本はクソだ!」の一言で締めくくってしまっても良いだろうか?
答えは"ビッグミステイク"だ!
本作の魅力はなんと言っても、他では見ることのできない多種多様なスタちゃんの恥態姿だ!
「男の教科書」として知られ、だいたいどんな作品でもハードなタフガイを演じてきたスタローン。
しかし本作では、それらの役とは一線を画する演技に果敢に(ヤケクソ気味に)トライ!
例えばこうだ。
ママがド深夜に掃除機をかけ始め、安眠を妨害されて頭を抱えるスタローンだが、その時のポーズがドギースタイルだ!しかもブリーフで!
↑ドギースタイルのプリケツが悩ましいスタローンが拝めるのは本作だけ!
あるいはこうだ。
事件の捜査方針を巡って女上司さんと言い合いをしていたかと思うと、いつの間にか痴話ゲンカを始める二人。
「あのことを怒ってるんだろ?」みたいなことを言いながら女上司さんに詰め寄るスタローンだが、その時の出で立ちはと言うと、ママの連れてきた小型犬を胸に抱いて上目遣いだ!
極めつけはこうだ。
年がいもなくママの子守唄で寝かしつけられたスタローンだが、案の定というかなんというか、悪夢にうなされることになる。
その内容とは、これだ。
パンパース姿のスタちゃんが堪能できるのも本作だけだ!
そんなわけで、シュワちゃんも見放すクソ脚本で世間的にも辛辣な評価を受けつつも、スタローンのレア過ぎる七変化に何とか価値を見出だすことに成功した本作。
しかしながらこの作品には、もう一つ見過ごせない意義あるとように思うのだ。
かつては、騙し騙されの勢いでバチバチに火花を散らしていたスタローンとシュワちゃんだが、今では誕生日にゴツいサバイバルナイフを贈ってはしゃぎあうほどの、そんな唯一無二の親友となっている。
つまり、今が冬の季節であったとしても、年を重ねればいつか雪は溶け、お互いに笑い合える日も来る、そう信じさせてくれる記念碑的作品と言えるのではないだろうか。
例え内容はどうかしていたとしてもだ!
そして、これはあくまで例えばの話なのだが、仮に今、お互いに反目し合っている二人のハゲマッチョがいたとしても、10年後20年後には、「そんなこともあったよね」と笑い話になるに違いないと、そのように思いながらノースリーブの人妻を凝視する俺なのだった。
以上!