Lover's Concerto -12ページ目

Lover's Concerto

花より男子の二次創作ブログです。
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ううっ、まともに顔合わせられないよ。


なんか、超恥ずかしいんですけど?

やっと嗚咽が止まって再び

道明寺と向き合う。


あんな子供みたいに取り乱して

号泣して。


「 ……泣き虫。」


ボソッと呟く道明寺。


「 あんな風に泣くのは卑怯だろ?

あんまり可愛いから押し倒したく

なるじゃねーか。」


その呟きを聞いてあたしは

慌てて飛びのいた。


何考えてんだこいつ……


カアッと頭に血が昇る。


「怪我人のクセに何考えてんの

あんたはっ!やっぱいっぺん

死んじゃえっ!」


拳を握り締めて全力で叫んでいた。


「いてっ!過剰反応すんな

むっつり助平!」


傍にあったものを手当たりしだい

投げつけていた。


「やめろって!つくしっ!」


殴りかかった両腕を受け止めるように

グイッと掴まれる。


思い切り暴れたせいで呼吸が乱れる。


名前を呼ばれてあたしは

やっと我に返った。


うっすらと額に滲む汗。


そこに大きな声が響いた。


「やっぱり司と牧野はこうでなきゃな」


「お?最中だったか、邪魔して悪いな。」


いつの間にか入り込んできた

お祭りコンビ。


2人のニヤケ顔を見てあたしは

自分の体勢を確認する。


髪振り乱して……

息切らせたまま道明寺に

馬乗りになってた。


もちろん掴まれた両腕はそのまま……


一瞬で全身から血の気が引いていく。

これじゃ完全に病人に奇襲かけてる図。


あたしと道明寺は我に返って

その場に固まった。


あたしが絶叫するとF4全員

揃い踏みで腹抱えて馬鹿笑いしてる。


「やっぱ牧野って最高!」


「只者じゃねー!」


くっくっく……もうだめ……

俺……ホントに死んでもいいかも。」


最後に聞いた道明寺のせりふに

あたしの額にはピシッと血管が浮く。


「道明寺!アンタ……アンタらも

全員グルでハメたわね?」


「わりぃ……」


悪びれもせず笑いながら謝る

道明寺の態度にあたしは

収まったはずの怒りが再び

沸点に達する。


「最悪!やっぱさっきの撤回

考え直す!」


そう怒鳴って部屋を出て行こうと

すると慌てて引き止められる。


「冗談だって……悪かったよ。」


「冗談にしたってタチが悪すぎんのよ

この大馬鹿!あたしの涙返せ!」


そういってその憎たらしい頬を

両手で思いっきり抓った。


「いってー怪我人に何しやがる!」


「これでもかなり手加減したわよ!

次やったら絶対許さない!!」


フンッとそっぽっを向く。


ホントはグーで殴りたいくらい

ムカついていた。


でも怪我人にそれはまずいだろうと 思って感情をセーブした。


怒って暴れるほどのことじゃない、


冷静にって必死に気持ちを

押さえつけた。


「どこがだよ!司の顔腫れてるぞ?

ったく……相変わらず怪力だな!」


それでもやり場のない怒りは

標的を変えて暴走する。


バカ野朗を庇い立てした諸悪の

根源をあたしは睨みつける。


「……あんたたちもやられたい?

グルなんだから同罪だよね?」


あたしは低い声で怒りを

抑えつつ言った。


「……牧野、眉間に皺……もう

年なんだから戻らなくなるよ」


警戒なく近づいてきた類に

にっこり笑って言われて

ちょっとだけ隙ができる。でも言われたことの意味を良く考えると微妙に腹が立ってくる。


「年って自分より年上にだけは

言われたくないわよ!って!

あんたたちなんか尊敬に

値しないけどねっ!」


「牧野って何気に酷いこというよね」


「酷いのはどっちだ!人のこと

からかって遊びやがって!」


でも、この懐かしいノリに胸がいっぱいになる。なんだか怒る気が

失せてしまった。


最後は一緒になって笑ってた。


「なに笑ってんだよ気持ち悪いな」


「懐かしいなって思って……

すっきりしたから勘弁してあげる。次はないけど……」


そういってそのまま道明寺に

わざとらしく笑いかけた。


「俺たちを怒鳴りつけたり殴ったり

脅迫できるのは牧野しかいないよねあいかわらず短気だし……

前よりも凶暴だし」


類の呟きにあたしはカッと

頬を火照らせる。


「人聞き悪い言い方しないでよっ!

誰が凶暴なのよ?!」


あたしが類を怒鳴りつけると

3人声を合わせて


「「「お前だよ、お前!全部

本当のことだろうが!!」」」


……と、反撃してきた。


あたしとあいつがいてそれを

懐かしいメンバーが囲んで。


怒って騒いでみんなで笑い合って……


そんなことはもう2度と

ないと思ってた。


懐かしさについ涙腺が緩んでしまう。


「おまえ、泣くことないだろ

悪かったって……」


「違うの……懐かしくて……

もうこんな風にあんたたちと

一緒にいることできないって

ずっと思ってたから」


あたしがそういうとみんな

一斉に黙り込む。


「……悪かったよ、からかったりして。」


口々にゴメンと謝ってくれたみんな。


もう、いいのと首を振るあたし。


「……あいつらも呼ぶか?」


「あいつらって誰?」


「滋と桜子と優紀ちゃんだよ」


「お前と音信不通になって

すっげー心配してんだよ!

このこと内緒になんてしてみろ!

後で何されっかわかんねーぞ?」


その言葉であの3人が急遽

呼び出されることになった。


急に呼び出されたにもかかわらず

彼女たちは1時間もしないうちに

道明寺邸にやってきた。


あたしの顔見るなり滋さんが

抱きついてくる。


桜子と優紀も同じように

我先にと抱きついてくる。


優紀が申し訳なさそうな表情で

あたしに言う。


「ゴメン、花沢さんにつくしの

会社教えたのわたし」


「……どうせ脅されたんでしょ?

西門さんに、でも、もう隠す

必要ないから気に病まなくていいよ。」


優紀は西門さんと付き合っている。


彼氏に対して隠し事をさせるのは

ちょっと忍びなかった。


「じゃあ?」


優紀の顔に笑みが宿る。


「……仕方なくね。悪趣味な

悪戯しやがったけど……

憎めないしさ」


照れくさいから早口で

そういって誤魔化す。


「……照れちゃって可愛いわね」


優紀がからかい口調でそういう。


「でも、今度こそ上手くいくといいね

焦らないでゆっくりやり直せば

いいじゃないの」


しんみりとした口調で優紀は言う。


「うん、ありがとう」


優位の優しさが身に染みる。


軽く抱き合って感謝の気

持ちを伝える。


「おい、あっちに食事を

用意したって、いこうぜ?」


そう誘われてあたしたちは

身体を離した。


その夜、日付が変わるまで

あたしたちは道明寺邸で騒ぎ

滋さんと桜子、それに椿お姉さんも

加わって翌朝まで大宴会をした。


夜通し騒いで興奮したせいで

道明寺が高熱を出して

お医者様にこっぴどく

叱られたけれど。


気の許せる仲間がいるって

改めていいことだなって

心の底から思った。





連れて行かれたのは病院じゃなくて

10年ぶりの道明寺邸。


類の話だと道明寺は3年も前に

日本に戻ってきていたという。


 ほんとに何も知らなかったあたし。


すべての情報に耳塞いでたから

確認しようともしなかった。


久しぶりに足を踏み入れた

その屋敷の様子は怖いくらいに

変わってなかった。


「つくしちゃん!」

 

あたしを見るなりそう叫んで

抱きついてきた椿お姉さん。


「ご無沙汰……しています。」


「来てくれてありがとう……

司はあっちの部屋よ……類にも

嫌なこと頼んで悪かったわね。」


「……いいよ。」


類は気にしてないからという

表情でお姉さんを見つめ返した。


3人で長い廊下を歩く。


何度もここに来たことはあるけれど

案内なしで歩いたことってない。


「それじゃ行きましょう。」


涙を拭ってあたしの腕を取ると

部屋に案内してくれる。


類はあたしたちの後を黙って

着いてきた。


案内された部屋は10年前と

同じ東側の角部屋。


ドアを開けて中にはいっていく。


「……薬で眠らせてるの。

もうすぐ目が覚めるころだと

思うから傍にいてあげて?」


あたしはお姉さんに言われて

黙ってうなずいた。


それじゃ行くわね?と

お姉さんと類はあたしに

笑いかけると行ってしまった。


10年ぶりに見た道明寺の姿。


相変わらず睫毛長くて綺麗な寝顔。


頬は少し痩けて身体も

あの頃よりも痩せたみたい。


そっと頬に手を這わせる。


温かくて……柔らかかった。


ふと頬に這わせていた手を

グッと掴まれる。


つかまれた感触に気付いて

道明寺の顔を見た。


「ま……きの?」


眠っていたはずの道明寺が目覚めてあたしを見ていた。


「目が覚めた?よ……く眠っていたみたいね?」


「な……んでおまえが……?」


彼はあたしが何でここにいるのか

不思議に思っているようだった。


「呼ばれたの……元気だった?

あ、元気じゃないか……

刺されたんだもんね。」


あたしは道明寺に背を向ける。


「それが10年ぶりに会った

彼氏に言う台詞かよ……」


「どこの誰が彼氏だ!馬鹿男っ!」


ため息つきつつそう呟いた道明寺にあたしは思いっきり怒鳴った。


「おまえっ!耳元で大声出すんじゃねーよっ!

少しは怪我人労われっ!」


耳を塞ぎながらそう怒鳴り返してくる道明寺。


「怪我?自業自得でしょ!、

女性の気持ち弄んだんだから! 

ザマーミロだよっ!」


「誰がいつ弄んだんだよ!

テメエいったいなにしに来たんだよ?

喧嘩売りに来たのかよ!」


「違うわよ!女性の気持ち弄んだ

最低男の馬鹿面拝みに来たのよ!」


「てめーいい加減にしろ!本気で怒るぞっ!」


道明寺は青筋立てて怒り狂ってる。

今にも血管ぶち切れそう。


でもあたしは殴られても

言いたいことは言ってやる!と

思って怯まずに応戦する。


「……ホントに馬鹿なんだから」


トーンを落としてポツリと

呟くようにあたしは言った。

 

「あ?なんだと?もっかいいってみろ!

本気で殴るぞ?」


低い声で脅す道明寺の声。


あたしは気にせずに続けた。


「馬鹿だから馬鹿だって言ったのよ!

何でヒトコト知らせてくれなかったの?

あたし類から聞くまであんたの

あの言葉は口から出た

でまかせなんだって思い込んでたんだよ?

一緒にいたいって言ったじゃん

あの時言ってくれたのは

本気なのかってずっと疑ってたんだよ?」


そういうと道明寺はさっきの怒りが嘘みたいに押し黙ってしまった。


10年分の思いが溢れ出す。


「悪かったよ、報せなくて

どうにかなったら必ずお前を

迎えに行くつもりだった」


初めて聞いた謝罪らしき言葉。


「ホント馬鹿……アンタあたしのこと

見縊らないでよね?だてに修羅場

潜り抜ける生活してきてないわよ!」


「馬鹿馬鹿言うなよ……ホント可愛くねーな。」


笑いながらそういう道明寺。


久しぶりに見たその笑顔が

ちょっとだけ嬉しくて思わず

憎まれ口をたたいてしまった。


「悪かったわね!可愛くなくてっ!」


10年ぶりに再会したってのに

顔合わせるなり喧嘩始めたあたし達。


変わらない懐かしい光景にくすぐったくなる。


ふと視線が合わさった瞬間

思い切り吹き出した。


「それにしてもお前かわらねーな

その口の悪さ……見舞いに来といて 馬鹿面はないだろ?」


「本当のこと……でしょ……っ!」


最後まで言い終わらないうちに

あたしの唇は塞がれた。


長い長いキス。


とても病人とは思えない力で

引き寄せられていた。


「……つくし、逢いたかった

約束守れなくてゴメンな」


抱きしめられて囁かれた

本当の意味での謝罪の言葉に

あたしの閉じ込めた想いが解けていく。


「……あたしも!ずっと司に会いたかった」


司の傷に触らないようにあたしも

そっと抱きしめ返していた。


「……俺のこと許してくれるなら

結婚して欲しい。」


「許すもなにも……ううんあたしで

よかったら……」


ホントはずっとこの日を待っていたんだ。


何もかも受身だったこの恋。


でも誰にも負けないほどあたしは

全力で彼を想ってた。


忘れたくても忘れられないくらい

あたしは道明寺を愛してたんだ。


「……生きてて良かった……お前に

また会えたから」


道明寺の呟きにあたしの中で

何かが切れた。


「何いってんのよ!周りにたくさん

迷惑かけて!ほんとに馬鹿なんだから!」

 

「だから馬鹿って言うんじゃねーよっ!」


「何度でも言ってやるわ!周りは

みんなアンタに馬鹿なんて

いえないだろうから!

あんたが死んだら……あたし……」


感極まって言葉が詰まってしまう。


堪えてた涙がどんどん溢れ出していって

それ以上の言葉を続けられなかった。


「……ごめん、悪かったよ。」


バツの悪そうな道明寺の

言葉が降ってくる。


「じゃあ、誓って!あたしより

先に死なないって!」


もう頭の中ぐちゃぐちゃだった。


「分かった……誓うから……泣くなって、な?」


大きな手が背中を撫でてくれた。


小さな子供にするみたいに宥められて

やっと涙が止まった。


やっぱり泣いちゃった。


絶対に泣かないって決めたのに。


意地っ張りで素直じゃない

牧野つくしが復活する。


10年分の閉じ込めた想いを

開放するようにあたしは

道明寺の胸の中で泣き続けた。







彼のいった4年で迎えに来るって

言う言葉をずっと信じて待っていた。


でも彼が向こうへ行ってから

一度も連絡はなくて。


もう終わったと思ってあたしも

特に連絡しなかった。


ただ時が満ちるのをずっと

待っていた。


ときどき、雑誌やテレビで姿を

見ることがある。


スクリーンや文字を通してでしか

あいつの近況を知ることは

できなかった。


何度か連絡を取ろうと試みては

みたけれど全部取り次いで

もらえなかった。


あたしはあいつの帰りを待つと

決めてから自分なりにあいつに

つりあうよう努力してきたつもり。


生まれは変えられないけど

経歴はいくらでも積むことはできる。


でも結局約束の4年目が過ぎても

あいつは帰ってこなかった。


思えばあの場所で誓い合うの

嫌がってたもんね。


あたしが泣くからしぶしぶ

誓ったって感じだった。


あたしは毎年春になるとひとりで

あの桜を見に行った。


そして……。


祈ることは毎年変わっていった。


最後に行ったときは。


あいつを早く忘れさせてくださいだった。


風で枝が揺さぶられて枝が凪いだ。


大丈夫だよ、きっと会えるよ


……って慰めてくれるみたいだった。


そのうちあたしはその桜の木さえ

見に行かなくなった。


そうしてさらに6年の月日が流れた。


その間も彼、道明寺からの

連絡は一切なかった。


もうあの約束のことは頭の奥に

閉じ込めて思い出さないように

蓋をしていた。


あれから10年が経った。


英徳を卒業したあとあたしは

小さな広告代理店に就職した。


今では自分の下に何人も

部下を持つ身分。


いわゆるお局になりかけている。


それでもみんな仲が良くて

上司とか部下とかの境界線がなくて

楽しい場所だった。


職場に泊り込んでアパートには

帰れないような仕事のときもある。


小さな会社だからこそ社員の

団結力が強かった。


」牧野先輩!」


どうしたの?と振り向くとあたしの

すぐ後ろに後輩が立っていた。


「お、お電話です…あの…花沢物産の副社長さんていう方から。」


類?


何であたしの勤めてる会社知ってるの?

F4とは先に彼らが学園を

卒業してから一切連絡を

取っていなかった。


生活するのに精一杯だったのと

向こうもそれぞれ家業を

手伝い始めたから。


彼だって風の噂じゃパリ支社に

赴任したって聞いた。


そんな類があたしにいったい

何の用事だろう?


あたしは慌ててオフィスに戻って

受話器を握り締めた。


「も、もしもし?」


「牧野、すぐに来て欲しい!司がっ!」


久しぶりに聞いたその名前に

あたしは放心してしまう。


「……ど、道明寺が……どうしたの?」


震える声で聞き返すと花沢類は落ち着いて話を聞けという。


良からぬ不安がわたしを包む。


冷静沈着な彼がこんなに慌ててる

ことが珍しい。


「刺されたんだ……」


「……は?またっ?」


一瞬ポカンとしてしまった。


「半分はあんたのせい」


その後の言葉であっさりと我に返る。


「どうして10年も会ってないのに

あたしのせいになるのよ!?」


思わず大きな声を出してしまい

慌てて口を噤む。


「司、まだあんたのこと忘れてないぜ?

婚約断ったら…逆上した

女にやられたって話だ。」


それが本当ならどうして今まで

1度も連絡くれないの?


「……冗談よしてよ!あたしたち

10年も会ってないんだよ?」


思わず声が荒くなっちゃう。


「本当に?」


さすがにあたしの剣幕に

類も変だと思い始めたみたい。


「当たり前でしょう?ずっと連絡も

取らなかった人といまさら何の

関係があるっていうのよ?!」


八つ当たりするように言い放つ。


類は何も悪くないのに……


「……牧野が怒る気持ちは分かった

とりあえず話聞いて……よ」


そういわれて今日仕事終わるころ

迎えに来るからと一方的に言われ

電話は切られた。


その日、1日動揺が凄まじくって

仕事が手につかなかった。


取り返しのつかない失敗をする前に

部下に仕事を代行させた。


あいつが縁談断って相手の

女性に刺された?


ありえない!


だってあたしたちはもう……

終わったはずじゃなかったの?


一番嫌な自然消滅っていう終わり方。


だったらどうして?


頭の中がぐちゃぐちゃだった。


でも、類の話だけは聞いてみようと思った。

きっかり定時に花沢家の車が

会社に迎えに来た。


社ビルの前に高級車が停まって

みんな驚いたように振り返っていく。 


運転手さんがいうにはあたしを

先に迎えに行ってそれから

類を迎えに行くという

指示があったという。


うちの会社から花沢物産本社まで

そんなに時間はかからずに到着した。


通用口に車を回すと類が

車に乗ってきた。


「……久しぶり、牧野」


「久しぶりじゃないわよ!」


緊迫した電話寄越してなんなの?

その飄々とした態度は!


「そんなに怒るなよ……自分の

彼氏のことでしょ?」


「冗談よしてよ!あたしはいつまでも昔の男を待ってられるほど

若くもないのよ?!」


道明寺を彼氏だろといわれて

妙に腹が立つ。


この人にだけは絶対それを

言われたくなかった。


「だったらいい人見つけて

さっさと結婚すりゃよかったでしょ?

独身でいるのはあんたがまだ

司を待ってるからでしょ?」


痛いとこを突かれてめちゃくちゃな

反論をしてしまう。


「待ってるわけじゃないよ!

あたしはひとりが好きなの!」


こんなに感情剥き出しで

怒鳴ったのって久しぶりかも。


「あんた……声でかい」


うるさそうに耳をふさぐ

ジェスチャーをする類。


「うるさくて悪かったわね!」


そう怒鳴って横を向く。


あたしは怒ってるのよ!


ん?そういえば誰かのことで

こんなに腹を立てるのも

久々だったわ。、


「司のことなんだけどさ」


徐に話を切り出し始めた類。

あたしは怒っていたことも

忘れて類を見る。


「あいつさ、ずっと頑張っていたよ

早く牧野を迎えに行きたいって。

大学も3年で卒業してMBAの

資格も取って……でもあんたを

約束どおり迎えにいけなかったのは

親父さんが亡くなったからなんだ。

お袋さんまでもが心労で倒れて

アンタを迎えにいくどころじゃなかった。

突然、全部を継いだろ?

すごく大変だったみたいだよ。

庇う訳じゃないけどそんな所に

アンタを呼んだら要らぬ苦労

させちまうからって……」


道明寺……少しだけ心が痛む。


そんな大変なときにあたしのことも

ちゃんと考えてくれてたんだね?


連絡をしなかったのはあいつなりの

思いやりだったの?


あいつはいつだってそう……。


素直に感情をぶつけてくると思えば

気持ちを言葉にして伝えるのが苦手。


「あいつさ、いくつも縁談を蹴ってるんだ。政略結婚だけは絶対しないって

でも今度のだけが相手が悪くて」


バカじゃないのって言いたくなった。


あのときの約束を思い出して

目頭が熱くなる。


そして何も知らずにただじっと

あいつを待ってただけの自分の

行動力のなさを呪いたくなった。


「あたしは、あいつに会う資格なんて

あるのかな?」


思わず呟いた。


あたしは信じて待つどころか

気持ちまで疑った。


そんなあたしが彼と対面……

してもいいのかな?


そうしたら類はあたしの気持ちを汲んで

背中を押してくれた。


「会ってやりなよそれで許して

やって欲しい。」


そっと抱き寄せられる。


涙を見せたくなくてあたしは

類にしがみついた。


いつまでも成長しない自分にうんざり


それでも見捨てないで逢いに来てくれた

類の気持ちが嬉しかった。