ううっ、まともに顔合わせられないよ。
なんか、超恥ずかしいんですけど?
やっと嗚咽が止まって再び
道明寺と向き合う。
あんな子供みたいに取り乱して
号泣して。
「 ……泣き虫。」
ボソッと呟く道明寺。
「 あんな風に泣くのは卑怯だろ?
あんまり可愛いから押し倒したく
なるじゃねーか。」
その呟きを聞いてあたしは
慌てて飛びのいた。
何考えてんだこいつ……
カアッと頭に血が昇る。
「怪我人のクセに何考えてんの
あんたはっ!やっぱいっぺん
死んじゃえっ!」
拳を握り締めて全力で叫んでいた。
「いてっ!過剰反応すんな
むっつり助平!」
傍にあったものを手当たりしだい
投げつけていた。
「やめろって!つくしっ!」
殴りかかった両腕を受け止めるように
グイッと掴まれる。
思い切り暴れたせいで呼吸が乱れる。
名前を呼ばれてあたしは
やっと我に返った。
うっすらと額に滲む汗。
そこに大きな声が響いた。
「やっぱり司と牧野はこうでなきゃな」
「お?最中だったか、邪魔して悪いな。」
いつの間にか入り込んできた
お祭りコンビ。
2人のニヤケ顔を見てあたしは
自分の体勢を確認する。
髪振り乱して……
息切らせたまま道明寺に
馬乗りになってた。
もちろん掴まれた両腕はそのまま……
一瞬で全身から血の気が引いていく。
これじゃ完全に病人に奇襲かけてる図。
あたしと道明寺は我に返って
その場に固まった。
あたしが絶叫するとF4全員
揃い踏みで腹抱えて馬鹿笑いしてる。
「やっぱ牧野って最高!」
「只者じゃねー!」
くっくっく……もうだめ……
俺……ホントに死んでもいいかも。」
最後に聞いた道明寺のせりふに
あたしの額にはピシッと血管が浮く。
「道明寺!アンタ……アンタらも
全員グルでハメたわね?」
「わりぃ……」
悪びれもせず笑いながら謝る
道明寺の態度にあたしは
収まったはずの怒りが再び
沸点に達する。
「最悪!やっぱさっきの撤回
考え直す!」
そう怒鳴って部屋を出て行こうと
すると慌てて引き止められる。
「冗談だって……悪かったよ。」
「冗談にしたってタチが悪すぎんのよ
この大馬鹿!あたしの涙返せ!」
そういってその憎たらしい頬を
両手で思いっきり抓った。
「いってー怪我人に何しやがる!」
「これでもかなり手加減したわよ!
次やったら絶対許さない!!」
フンッとそっぽっを向く。
ホントはグーで殴りたいくらい
ムカついていた。
でも怪我人にそれはまずいだろうと 思って感情をセーブした。
怒って暴れるほどのことじゃない、
冷静にって必死に気持ちを
押さえつけた。
「どこがだよ!司の顔腫れてるぞ?
ったく……相変わらず怪力だな!」
それでもやり場のない怒りは
標的を変えて暴走する。
バカ野朗を庇い立てした諸悪の
根源をあたしは睨みつける。
「……あんたたちもやられたい?
グルなんだから同罪だよね?」
あたしは低い声で怒りを
抑えつつ言った。
「……牧野、眉間に皺……もう
年なんだから戻らなくなるよ」
警戒なく近づいてきた類に
にっこり笑って言われて
ちょっとだけ隙ができる。でも言われたことの意味を良く考えると微妙に腹が立ってくる。
「年って自分より年上にだけは
言われたくないわよ!って!
あんたたちなんか尊敬に
値しないけどねっ!」
「牧野って何気に酷いこというよね」
「酷いのはどっちだ!人のこと
からかって遊びやがって!」
でも、この懐かしいノリに胸がいっぱいになる。なんだか怒る気が
失せてしまった。
最後は一緒になって笑ってた。
「なに笑ってんだよ気持ち悪いな」
「懐かしいなって思って……
すっきりしたから勘弁してあげる。次はないけど……」
そういってそのまま道明寺に
わざとらしく笑いかけた。
「俺たちを怒鳴りつけたり殴ったり
脅迫できるのは牧野しかいないよねあいかわらず短気だし……
前よりも凶暴だし」
類の呟きにあたしはカッと
頬を火照らせる。
「人聞き悪い言い方しないでよっ!
誰が凶暴なのよ?!」
あたしが類を怒鳴りつけると
3人声を合わせて
「「「お前だよ、お前!全部
本当のことだろうが!!」」」
……と、反撃してきた。
あたしとあいつがいてそれを
懐かしいメンバーが囲んで。
怒って騒いでみんなで笑い合って……
そんなことはもう2度と
ないと思ってた。
懐かしさについ涙腺が緩んでしまう。
「おまえ、泣くことないだろ
悪かったって……」
「違うの……懐かしくて……
もうこんな風にあんたたちと
一緒にいることできないって
ずっと思ってたから」
あたしがそういうとみんな
一斉に黙り込む。
「……悪かったよ、からかったりして。」
口々にゴメンと謝ってくれたみんな。
もう、いいのと首を振るあたし。
「……あいつらも呼ぶか?」
「あいつらって誰?」
「滋と桜子と優紀ちゃんだよ」
「お前と音信不通になって
すっげー心配してんだよ!
このこと内緒になんてしてみろ!
後で何されっかわかんねーぞ?」
その言葉であの3人が急遽
呼び出されることになった。
急に呼び出されたにもかかわらず
彼女たちは1時間もしないうちに
道明寺邸にやってきた。
あたしの顔見るなり滋さんが
抱きついてくる。
桜子と優紀も同じように
我先にと抱きついてくる。
優紀が申し訳なさそうな表情で
あたしに言う。
「ゴメン、花沢さんにつくしの
会社教えたのわたし」
「……どうせ脅されたんでしょ?
西門さんに、でも、もう隠す
必要ないから気に病まなくていいよ。」
優紀は西門さんと付き合っている。
彼氏に対して隠し事をさせるのは
ちょっと忍びなかった。
「じゃあ?」
優紀の顔に笑みが宿る。
「……仕方なくね。悪趣味な
悪戯しやがったけど……
憎めないしさ」
照れくさいから早口で
そういって誤魔化す。
「……照れちゃって可愛いわね」
優紀がからかい口調でそういう。
「でも、今度こそ上手くいくといいね
焦らないでゆっくりやり直せば
いいじゃないの」
しんみりとした口調で優紀は言う。
「うん、ありがとう」
優位の優しさが身に染みる。
軽く抱き合って感謝の気
持ちを伝える。
「おい、あっちに食事を
用意したって、いこうぜ?」
そう誘われてあたしたちは
身体を離した。
その夜、日付が変わるまで
あたしたちは道明寺邸で騒ぎ
滋さんと桜子、それに椿お姉さんも
加わって翌朝まで大宴会をした。
夜通し騒いで興奮したせいで
道明寺が高熱を出して
お医者様にこっぴどく
叱られたけれど。
気の許せる仲間がいるって
改めていいことだなって
心の底から思った。