Lover's Concerto

Lover's Concerto

花より男子の二次創作ブログです。
同名のサイトもあります

このBlogと同名のサイトを
運営しています。

サイトはR18サイトなので
該当のお話には簡単な
鍵がかかっています。


もし、興味のある方が
いらっしゃいましたら
遊びに来てくださいね。

アメンバーさんは随時募集中です。

Lover's Concertoこちら



私の道明寺の呼び方が名字から
名前に変わった。

もうすぐ同じ名字になるのに
紛らわしいだろと脅され
恐る恐る下の名前で呼ぶようになった。

結婚を決めて私は司の両親に
会うことになった。

病み上がりの私を気遣って
わざわざあちらの方から私に
逢いに来て下さった。

申し訳ないと思いつつも
司に連れられて数年ぶりに
道明寺邸へと足を踏み入れた。

お屋敷ではタマ先輩にも
再会することができた。

高校生のときに逢ったときよりも
さらに小さくなった先輩を見て
涙が止まらなくなった。

抱きしめたあの頃よりも皺が増えて
小さくなった先輩の身体。

全身で再会の喜びを表してくれた。

こうなったら坊ちゃんのお子様を
見るまで死ねないといって
私達を照れさせた。

先輩に再会した後、ご両親のいる
書斎に向かった。

人前だというのに堂々と手を繋ぐ司。

少し恥ずかしかったけれど
誰にも隠れずそういうことが
できて嬉しかった。

あともうちょっとのところで
司の顔が引き攣った。
どうしたの?と問いかけると
姉貴だ……と呟く。

ちょっと顔に縦線が入ってる。

司の勘は見事に当たり、人影が
私達の方に向かって突進してくる。

私の名前を叫びながら走ってきて
司の横を掠めて抱きしめられる。

相変わらずのすごい力に窒息しそうになる。

「姉ちゃん!ちょっとは
手加減しろって!」

姉ちゃんの馬鹿力で抱きしめたら
つくしが潰れるだろそれでなくても
怪力なんだから……

と、続けると椿お姉さんは
無言で司を羽交い絞めにし
強烈なキックをかましていた。

10年前と変わらない光景が
懐かしくて嬉しかった。

突然笑い出した私を見て司が
怪訝な表情をする。

「お前……俺が虐待されてるの見て
そんなに可笑しいのか?」

司の唇の端は引き攣ってる。
額に血管まで浮いてる。

笑いを堪えすぎて涙が出てくる。

「虐待とはどういう意味よ?人聞きの
悪いいいかたしないでくれる?躾よ躾!!」

いった側からお姉さんに
殴り飛ばされてる。

ますます笑いは止まらなくなり
泣き笑いの状態になる。

「つくし……てめえ……っ」

殴られた箇所を押さえながら
私を睨みつける司。

握った拳がプルプル小刻みに震えてる。

「だ……って懐かしいんだもん
もう2人のそういうところは
見られないって思ってたから」

私がそういうと切なげな
表情で司が私の名前を呟く。

お姉さんはそんな私の肩に
手を置くとにこっと笑って言った。

「司に泣かされたらいつでも言うのよ?
すぐに飛んできて
ボコボコにしてあげるから。」

そういわれてその光景を想像して
ますますドツボにハマる。

「つくし!笑いすぎて傷口開いても
知らねーからな!」

完全に臍を曲げちゃった司。

私にそう怒鳴るとふて腐れて
そっぽを向いた。

「いい年して拗ねないでよ。」

私がそう呟くとなんか言ったか?
と睨まれてしまった。

椿お姉さんは仕事があるから
またね。といってしまった。

その慌しい後ろ姿を見送りながら
司を振り返るとまだ膨れっ面をしてた。

「ごめん、笑いすぎた。」

ちょっとだけ申し訳なく思って
そう謝ると司は膨れっ面をやめた。

ぽんと大きな手の平で頭を撫でられる。

「お前、そうやってずっと笑ってろ
笑ってるお前が好きなんだ。
お前の笑顔ぜってー消したくないって
思ってる」

改めて言われるとすごく照れくさい。

「うん、私もずっとアンタと
一緒にいたい」

そう答えると道明寺の顔が
満面の笑顔に変わる。

私も微笑み返すと触れるだけの
キスが唇に降ってきた。

顔を見合わせて笑い合って
また差し出された手に掴まった。








初めてお会いした司のお父さんは
想像していたよりもずっと
気さくな人だった。

名乗るよりも前にいきなり名前を
ちゃん付けで呼ばれて固まる。

その後の言葉が続けられないほど
絶句してしまった。

「……お父さん、彼女驚いてます」

さすがに司もお父様の前では
言葉遣いもいつもみたいに
乱暴じゃない。

気を取り直して自己紹介した。

お父様は終始穏やかな微笑を
浮かべて私を見ていた。

「……君には司の代わりに怪我を
負わせてすまないことをしたね」

「い、いいえっ」

とんでもないと手を振る。

「こんなことになってしまったけれど
司を側で支えてやって欲しい。
君が気に病むことはないからね。」

それを聞いてまた涙腺が
緩むのを堪える。

多大な迷惑をかけたであろう私に
なんて寛大な言葉をかけて
くださるんだろう?

「司、信じてもらえないけれど
今はあなたの幸せを祈っているわ。
今度こそ幸せにおなりなさい。
つくしさん司を宜しくお願いします」

あのお母さんにまで頭を下げられて
私は萎縮しっぱなしだった。

「お父さん、お母さん、俺は
牧野つくしさんと自分の
誕生日に結婚します」

いいですよね?と司が問う。

2人は顔を見合わせ同時に頷いて
司の問いかけに答えて下さった。
その瞬間の司の顔は私が何度も
可愛いと思ったあの全開の笑顔。

対照的に私は緩みっぱなしの
涙腺がもっと緩んでしまった。

ただただ、嬉しかった。

そんな私を司は黙って抱き寄せてくれた。
滲んだ涙は司のスーツが静かに吸い取った。


あとで一緒に食事でもしようと
誘われて承諾して部屋を出た。

来たときと同じように手を繋ぎ
部屋を移動する。

ときどき立ち止まっては

触れるだけの小さなキスを交わす。

早く2人きりになりたい気持ちが強くて時々そうやって立ち止まっては焦りを
解消してキスを交わした。

東の角部屋にたどり着いた。

縺れ合うように部屋の中に入り
入ったとたんに深いキス。

唇が離れたあと司は私を抱え上げて
ベッドへと運ぶ。

ベッドの上に優しく下ろされて
私は自分を見下ろす司の姿に
堪らなくなって自分から
キスをねだった。

欲情するってこういう感情なんだと
激しく芽生えた感情に1人納得する。

お互いの着ているものを脱がし合い
ながら裸になって抱き合う。

前にこの部屋で抱き合った時は
監視をすり抜けて侵入して。
突然男に豹変した司が怖くて
泣いて拒んだんだっけ。

今となっては懐かしいその
思い出に笑いがこみ上げてきた。

「つくし、傷痕見せて。」

突然ゾクッとするような声で
囁かれて私は司を見上げた。

恐る恐るシーツを取って傷を見せた。

まだくっきりと赤く残ってる
その傷に司はそっと口付けた。
くすぐったさもあったけど
必死に堪える。

「お前に傷つけちゃったな……」

しみじみという司に私はくすっと
笑ってしまう。

「いいの……この傷は私にとっては
名誉の負傷だもん。この傷が刻まれた
理由を私はずっと忘れない」

私がそういうとバカ……と司が笑う。

「つくし、絶対に幸せになろうな?」

「うん」

もうなんの言葉も要らない。

今この時間あなたとここにいることが
私の一番の幸せだから……。

一緒にいたいという小さな想いが
ずっと……永遠にという言葉に進化する。

そっとベッドに押し倒され司の
キスが全身に降ってきた。
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道明寺と結ばれて3ヶ月が経った。

相変わらずの状況。

道明寺はまだ婚約解消ができない。

なかなか相手が首を縦に
振ってくれないらしい。

あれから何度か肌を重ねた。

1度箍が外れると止まらなくなる。

置かれてる状況も忘れ、限られた
時間の中お互いを貪るように
深く愛し合った。

道明寺の私の呼び方が名字から
名前に変わった。




そしてとうとうその日はやって来た。

私の住むマンションに意外な人が
訪ねてきた。

道明寺の……婚約者だった。

モニターを確認してその姿を
視界に入れたとき得も言われぬ
恐怖が襲ってきて蘇る。

この中に入れてしまったら
私と道明寺の聖域が土足で
踏み荒らされるようで怖い。

でも、逃げられないということは
分かっていた。

あの人がここに何しに来たのか
分かりすぎるほど分かっていたから。

お話があるので入れてもらえませんか
といわれ私はオートロックを開錠した。

しばらくして玄関のチャイムが
鳴りその人はやってきた。
屈強なお供の人たちを引き連れて……。

その人はSPと思われる人を
廊下で待たせ1人で私と対面した。

「初めまして、瀧川千夏と申します。」

穏やかに名乗りを上げる。

向こうは私の存在をたぶん
知っているのだろうから
改まって名乗りはしない。

「単刀直入に言います。司さんと
別れてください!」

来た……やっぱり用件はそれか。

でも、私は逃げないって決めたの……。

この人にどんなに恨まれたって
構わない。

「……嫌です、別れません」

私の返事は予測していたように
彼女は微笑う。

「困るのよ、1度去った女と
縒りを戻されると」

笑いながら言うけど瞳は笑っていない。

ぞっとするような冷たさを感じた。

なんとなく出逢った頃のあの人に
似ている感じがした。

「誰になんといわれようと私は司と
別れるつもりはありません!
1度間違いはしたけれどもう2度と
別れるつもりはないです」

怯まず言い返す。

目の前の綺麗な人は私の返事を
聞いて顔を歪ませる。

そのとき道明寺から今日ここに
来るという合図のメールの
着信音が鳴った。

「そう、あなたは私から
あの人を奪うのね?」

低く呟くような声で千夏さんは言った。

怖い……

嫉妬で狂ってる。

異常なくらいに目がギラついている。

この人の気持ちも分からなくもない。

突然現れた見知らぬ女に最愛の
婚約者を奪われたのだから。

いや、奪ってはいない。

自分に都合よくいえば奪い返しただけ。

インターホンが鳴る。
道明寺だ!

私は玄関ホールに逃げ込んだ。

廊下で千夏さんのSPと道明寺が
押し問答している。

「道明寺!入ってきちゃダメよ!」

「つくし!いったいどうしたんだ?」

「あんたの婚約者が来てる!!」

なんだと?と道明寺の顔が歪む。

「お願い、外に居て!」

私がそう叫んだ瞬間玄関に千夏さんが
やってくる足音がする。

「司さん、この女と別れて!」

無表情のまま千夏さんが近寄ってくる。
手には銀色に光るものを持っていた。

ナイフだ……どうしてそんなもの
こんなお嬢様が持ってるの。

ああ、そうか護身用なんだ。

私と違ってこういうものを
携帯しないと自分の身を
護れない人たちなんだと悟った。

全身から血の気が引いていく。

「千夏?!何してんだお前!
手に持ってるものを捨てろっ!」

「嫌よ!私のこと幸せにするって
言ったじゃない!!」

「すまない……俺はコイツが」

「聞きたくない!」

両手で耳を塞いで嫌だ!と
首を振る千夏さん。

「一緒に……死にましょう?
その人を選ぶと言うなら
あなたを殺して私も死ぬわ」

狂ってる・・・。

私は息を呑んで見守った。

私への憎悪が道明寺に向けられている。

「……千夏、やめろ。」

千夏さんは道明寺に護身用ナイフを
突きつけながら近づいていく。

どうにか彼女の気をそらさなきゃ……

「……千夏さん……刺すなら私を
刺しなさい!私がいなければ
いいのでしょう?貴女が司を殺して
死ぬというなら私が代わりに
死んであげる」

彼女の手を掴み、刃先を私の
喉元に向けさせる。

「早くやりなさい……私は死んでも
いいっていってるの。ほらここを
切れば貴女の望みどおりになるわよ?」

頚動脈に沿って刃を当てる。
金属の冷たさが肌から伝わってくる

千夏さんのさっきの狂気に満ちた
視線は既に正気に戻っていた。
浮かぶ怯えの色

「やりなさいっていったでしょう!」

私は躊躇う彼女の手をさらに
引っ張り刃先を首に当てて力を込める。

首に痛みが走る。ちょっと力を入れれば簡単に傷をつけてしまえるだろう。

首筋が切れたことが分かる。

ぬるっとした液体は首筋を
伝い落ちていることも……。
鈍い痛みが走る。

「つくしっ!やめろっ!」

「道明寺は黙ってて!!」

私は怒鳴って道明寺を黙らせる。

「どう:たの?そうか……なら
自分でやるわ、貸しなさい、それ」

私は隙を見て千夏さんから
護身用ナイフを奪い取って
それをまた首に当てる。

さっきよりもいっそう力を
込めて柄を握る。

「やめてください!嘘です、
死んで欲しいなんて思ってません!」

正気を取り戻した彼女は
涙ながらに叫んだ。
涙で頬を濡らし嗚咽が聞こえる。

私はそっと護身用ナイフの
刃をしまって司に手渡した。

震えている千夏さんの肩を
そっと抱きしめた。

「私は貴女の婚約者を奪った
それは言い訳できる状況じゃない。
あなたに申し訳ないと思ってる。
そんな私が偉そうに言えること
じゃないけれど簡単に死ぬとか
言わないであなたが死ぬこと
誰も望んでなんかいないの、
自ら命を粗末にしないでそんなことして
司に一生消えない傷を負わせるつもりなの?」

あ……と彼女は道明寺を見上げた。

「ごめんなさい、私」

涙とともに謝罪の言葉を
口にする千夏さん。

「納得が行かないなら私が消える」

ちょっと脅すようにそういうと
慌ててやめてと顔色を変える。
よかった正気に戻ったみたい。

「嫌です!ごめんなさい」

私の脅かしに子供のように
泣き出した千夏さん。

「千夏……ゴメンな……お前を傷つける
気持ちはなかったんだ」

私の腕から千夏さんを抱きとって
抱きしめる道明寺。

その手つきは本当に彼女を大切に
思っていたからこそできる抱擁だった。

「司さん・・・私今なら貴方が
つくしさんに惹かれる理由がわかる。
私ナイフ握っただけでこんなに
手が震えてるのに……つくしさんは
なんの躊躇いもなかった……強い人だね」

意識がとぎれそうになりながら
2人の後ろ姿を見守る。

寄り添う2人を見て胸が一杯になる。

自分でつけた傷が痛い

ぬるっとした感触が手にあって
本格的に血が流れてきて
いるのがわかる。

脅かすだけだったからたぶん
急所はずれていると思う。
痛みが全身に回って呼吸も
苦しくなってくる。

「つくし!」

薄れる意識の間から司に
呼び戻されるような声がする。


「……なん……で……かな?人のも……の
奪った……罰……受け……たのかもよ?」

馬鹿……俺はお前のもんだろ?」

道明寺の顔に涙が光ってる。

優しく抱きしめてくれた。

道明寺は私のもの……。

なぜかその言葉が嬉しくて
このまま死んでもいいと思った。

「ち……なつさん」

遠のく意識の中、私は必死で
彼女を呼ぶ。

「こ……れは……私が自分でやったの
あなた……何……も悪……くない……」

彼女の手に腕を伸ばす。

正気に返ったらしい彼女は涙を
たくさんこぼして私の手を握った。

「つくしさん……ごめんなさい、
わたし……っ」

すすり泣く彼女の声が聞こえてきた。
そこで私の意識は途切れた。


















次に気が付いたとき、私は
病院のベッドの上だった。

目を開けると私の手を握ったまま
ベッドサイドの椅子に腰掛けて
眠る道明寺の姿があった。

そっと手を伸ばして道明寺の頬に触れる。

まぶたに手が触れたとき
はっとしたように道明寺が
目を覚ました。

「つくし!」

よかったと私を抱きしめる。

「道明寺?その痣どうしたの?」

私が尋ねるとバツが悪そうに
痣に手をやる。

「あきらに……殴られた」

こめかみと唇の端に痣ができて
赤黒く腫れていた。

「美作さんに?」

信じられない……あの穏やかな人が
道明寺に手を上げるなんて!

「お前をこんな目に遭わすために
譲ったんじゃないってきちんと
けじめをつける前にお前に
手を出した咎だって」

美作さんの告白を思い出して
胸が締め付けられる。

「ごめん……道明寺。心配させちゃったね」

「全くだ!もうあんな無茶するなよ
本気で心臓止まるかと思った!」

そっと抱き寄せられて唇が重ねられる。

あの時本当に死んでもいいって思った。

でも今は・・・こうやって抱きしめられて
道明寺の温もりを感じられることが
素直に嬉しい。


「道明寺……千夏さんは?」

私がそう口にすると辛そうに顔が歪む。
触れて欲しくない話題だったみたい。

「……その話は……」

道明寺は口篭って教えてくれない。
罪悪感が膨らんでいく。

「ねえ!聞かせてよ!どうしたの?」

「警察の奴にお前を傷つけたのは
自分だって自首した」

道明寺の言葉に私は絶句する。

「そん……なっ!あんなことをしたのは
私のせいなのに……」

胸の奥が締め付けられるように痛くなる。

「興奮するな……傷口開くぞ?」

「こんな傷!あの人の心の痛みに
比べたらなんでもない……!私のせいで
あの人・犯したくもない罪を犯したのよ?」

思い切り怒鳴ったせいで傷に響く。

「この馬鹿……大声出すな。」

痛みに顔を歪めた私を道明寺は
無茶すんなと叱る。

「先に身体を治せ、俺も彼女を
助けられるように動いてみるから、な?」

約束だよ?と小指を差し出す。
道明寺も同じように小指を
出して絡めてくれた。







私の傷は思ったよりも深く
完全に塞がるまで数ヶ月は
かかるといわれた。

当たり前だ。
刃物の刃先を握ったんだから

季節は秋から冬になった。

皮肉にもこんなことになって
道明寺の婚約はやっと白紙に戻った。

娘のスキャンダルで倒産しそうになった千夏さんのお父様の会社は
美作商事と花沢物産が買収し
何とか潰れないで済んだ。

起き上がれるようになって
1度だけ千夏さんに会いに行った。

そして本当のことを警察に証言した。

護身用ナイフは千夏さんのものだけど
刃先を首に押し付けたのは
自分の方だと。

私が告訴しないというと
彼女はその場で泣き崩れた。

ごめんなさいと何度も繰り返す。
私よりも背が高くて大柄な
彼女が痩せて小さくなった。

司さんをよろしくと頭を下げられた。

私にそんな風に頭を下げてもらえる
権利なんてない。

彼女が心に負った傷のことを考えると
とても訴える気になどなれなかったから。

婚約破棄と今回の私の件で道明寺にも
かなりのダメージがあったようだ。

初めの頃は毎日お見舞いに来てくれたけど
最近は1週間に1度が精一杯みたい。

その代わり入れ替わりでF3や滋さん
桜子、優紀がお見舞いに来てくれて
いつも部屋は賑やかだった。

あまりにも煩すぎて看護士さんに
怒られることもしばしば。

私が怪我を負ったことで美作さん以外は私と道明寺が付き合ってたことを
知ったらしく水臭いと怒られた。

12月になってすぐに退院が決まった。

優紀のところでいいといったけど
私の退院を嗅ぎつけてマスコミが
来るかも知れないとの警戒戒があって

しばらく美作さんちで身の回りの
お世話になることに決めた。

道明寺がそう美作さんに面と向かって
頼んでくれたらしい。

頭を下げられたって言ってた。

お前はいろんな意味で奇跡を起こす
女だって言われ、からかわれた。



道明寺に逢いたい。

思うように会えなくなってから
逢いたさは募るばかりで。

いつも1人になってから涙をこぼし
泣き疲れて眠るの繰り返しだった。




結局、道明寺には逢えないまま
退院の日を迎えた。

美作家のSPが私を守るように
周りを取り囲む。

退院が決まってめでたいっていう
雰囲気じゃなかった

どこから聞きつけたのかマスコミが
玄関と正門に詰め掛けていた。
急遽私を乗せた車椅子は職員用の
通用口へと向かう。

そして通用門の横に付けられた
車に乗って逃げるように病院から去った。

どうやら私が美作邸に世話には
なることはまだバレてはいないらしい。

病院とは対照的に屋敷の周りは
静まり返っていた。

たった10数分の道のりなのに
どっと疲れてしまった。

美作さんの家に到着すると
思いがけない人が待っていた。

照れくさそうな顔をして私を
見つめる道明寺。

その姿を瞳に焼き付けた
瞬間に涙腺が壊れた。

涸れたはずの涙がボロボロと
零れ落ちる。

やっと逢えた!

「何で泣くんだよ……」

照れて困惑してる道明寺の顔。

涙でその姿が霞む。

「だってずっと逢いたかったの
もう逢えないかと思った・・・」

車椅子から立ち上がって道明寺に
思い切り抱きつく。

道明寺は私をしっかりと受け止めて
抱きしめてくれた。

「つくし……待たせてゴメンな?
お前の誕生日に結婚しよう!」

そうプロポーズのあとに左手の
薬指にはめられたシルバーのリング。

「返事は?」

「……うん。」

胸が詰まってそれ以上はいえない。

玄関ホールの真ん中で抱き合う
私達にいつの間にか集まってきた
仲間達の冷やかしの声が飛んだ。

すごく幸せだと思った。

その晩は私の退院祝いと称して
夜遅くまで宴会が開かれた。







新人研修を終えてホテルに
缶詰状態からやっと抜け出せた。

私は道明寺の言うとおり
会社を辞めることにした。
もしも、自分のせいでお世話になった
会社に迷惑がかかってしまったら
申し訳ない。

私が選んだ人は大事な取引先の
社長令嬢の婚約者だから。

俺の都合でお前を路頭に
迷わせられないって言ってくれた。

道明寺が事情を話してくれて
私は退職後、美作さんのお家に
拾ってもらえることになった。

初め無茶すんなよと道明寺に
詰め寄っていた彼も最後には
事情を理解してくれた。

密かに始まった同じ人との
2度目の恋は前のときのように
突っ走るような勢いはない。

だけどそれ以上にお互いの気持ちが
流れるように伝わってきて切なくなる。

早く婚約者との関係を清算したい
道明寺とただ側にいられるだけで
満足してる私。

意識の違いはあるけれど
円満解決なんて望んでない。
それは恋という感情が絡んでる以上
無理のような気がする。

道明寺と付き合うようになって
私は涙脆くなった。

彼の前では笑ってる。
でも1人になるとバカみたいに
涙腺が緩んじゃう。

恋って相手を思う気持ちが強くなると
同時に泣き虫にさせる。

こんな気持ち、前のときは感じる
余裕がなかった。
道明寺を思って流す涙なんてなかった。

早く私だけの道明寺になってとは
口が避けても言えない。

守られるという選択をして
いつ切れるか分からない細い糸で
つながれてるだけ。

私は信じて待つしかないって思ってる。








急な退職に上司はあまり
良い顔をしなかった。
私だって辞めたくはない。

これから掛けてしまうであろう
迷惑のことを考えると私は姿を消す
選択しか残ってたない。

そこに突然現れた美作さんが
「彼女は俺の婚約者です。」と
いって周りを驚かせた。

あの穏やかな微笑みを見せられては
誰も何もいえない。

しかも大得意先の社長令息の
言うことを疑うわけもなく
拍手で送り出された。

私は突然の出来事に絶句するばかりで
攫われるように会社を出た。

全力疾走するのは本当に久し振りで
加齢とともに体力が落ちてる
ことに気付かされる。

ちょっと走っただけなのに息切れ。

一緒に走ってる美作さんには
呼吸の乱れなんてない。

額には汗が光ってるけど。


「……どうしてあんなこというの!?」

助けてもらったことも忘れて
私は美作さんに詰め寄る。

私を見つめ返した美作さんの表情は
いつもと違って笑みがなかった。
怖いくらいに真剣な表情で私の
顔を見据えていった。

「……あんなこと?ああ……
婚約者って言ったことか
牧野困ってたから。」

「こ、困るのは美作さんでしょ?
どうしてあんな嘘ついちゃったの?」

私がそう問い詰めると美作さんは
自嘲するように微笑う。

「お前本当に鈍感だな」

美作さんの笑う理由がわからなくて
困惑してしまう。

「私が鈍感なのと……美作さんが
嘘つくのとどういう関係があるのよ?!」

訳がわからなくてイライラする。

どうしてそんなに不機嫌なの?

「……こんだけ分かる行動しててなんで
分かんないんだよ!ずっとお前が
好きだったんだ!たとえ司を敵に
回してもどんなことがあっても
お前の側にいたい!」

顔を真っ赤にして俯く美作さん。

……3年間こうやって近くにいて
はじめてみる彼の照れる顔。

「司は婚約者と切れようとしてるけど
もう婚約発表の準備寸前だったんだ。
今さらそれを白紙に戻すなんて
無理なんだよ!お前が傷つくだけだ!
司なんかやめて俺にしておけ!」

ぶつけられた彼の本音が痛いくらいに
胸に突き刺さる。

信じられない!

今度は間違えないっていったら
頑張れって言ってくれたじゃない?

軽くパニック状態に陥る
私の思考回路。

ふわりと抱き寄せられて
激しく心臓が鳴る。

何も言わずにずっと側にいてくれたのは
西門さんに問われて私が答えたことに
がっかりしてたのは……

私のこと好きで居てくれたからなの?

「美作さん……あの……」

なにを言っていいか分からず
恐る恐る話しかける。

「……ゴメン、気持ち押し付ける
つもりないんだ……お前ときどき
泣いたあとみたいに瞼腫らしてるから
つい苛っとして……」

そんなことないよ……?
驚いたけど嬉しかった。

いつもおちゃらけてる彼の
真剣な表情にドキッとした。

美作さんの嘘偽りない告白を聞いて
私は真剣に答えなきゃいけないと思った。

「ううん、嬉しかった、ありがとう。
でも私は道明寺のことが好きなの
もう、諦めないって決めたの
バカみたいだけど待つって決めたの」

あんな嘘をついたのはきっと
私を守ってくれるためだと思う。

ただ守られて自分だけ安全な
地位にいるのだけは耐えられない。

道明寺に知られたらきっと
怒るだろうけど私はその嘘に
付き合うことにした。

「俺は……待つから……泣きたくなったら
いつでも泣ける場所提供してやる」

「やだなぁ……私そんな泣き虫
じゃないもん……」

いつだってこの人の前でなら
安心して本音を出せた。

それはきっとこれからも変わらない。

花沢類とはまた違う安心感。

送るよ……?

美作さんはそういって笑った。


私は知らなかった。

道明寺が私達の会話をずっと
聞いてたことに……。

そして付き合いだして初めての
危機が訪れるなんて予想も
していなかった。








いつもより少し遅い時間の訪問者。

誰かと思ったら道明寺だった。
モニターでチェックしてから
ロックを解除する。

部屋に入るなりいつもされる
抱擁もキスもない。
無言で入ってきてソファーにどっかりと腰を下ろす。

お茶はって訊くと要らないって
短く答える。

いつもと様子の違う道明寺。

私はもう寝るつもりだったから
パジャマだった。

寝室に行ってガウンを羽織る。

今夜は来ないと思ってた。

だってここに来るときは必ず
メールを寄越すから。

座り込んだままずっと無言の道明寺。

目を合わせようともしない。

どうしたのかな?

すっごく疲れた顔してる。
お仕事きついのかな?

「……道明寺?大丈夫?今お布団
敷くから待ってて!」

立ち上がって客用の布団を
引っ張り出そうとする。

「いい、お前の隣で寝る」

そう短く答えると急に私を抱き上げて
ベッドルームに運んでいく。

急に怖くなった。

道明寺は何かに怒ってる?

私をべッドの上に降ろすと急に
部屋の灯りを落とされる。
不意に訪れた暗闇に恐怖を感じる。

だって闇の中でも道明寺の怒りが
自分に向けられてるのが分かるから。

「道明寺?」

「……黙れよ。」

そういって訳がわからないまま
塞がれた唇。
怖くなって顔を退かせようとする
私の両手首を押さえつけて
さらにキスをされる。

恐怖で身体を支配されながらも
私は必死で抵抗して
道明寺の唇を噛んで押し戻す。

「イヤ!こんなキスはやだっ!」

思い切り叫んで道明寺の身体を
突き飛ばす。
こんな……相手の気持ちを
無視するようなキスをするなんて……。

「そうか……イヤなのか……」

道明寺どうしちゃったの?
何でそんなに怒ってるの?

その原因が自分にあるとも知らず
私はただただ道明寺の暴挙に
驚くばかりだった。

「あいつの方が……いいか?こんな風に
こそこそしなくていいもんな?」

その言葉で道明寺が誰のこと
いってるのかが分かった。

美作さん?

「……なんで?」

「用があって瀧川にいた。
そしたらあきらが永瀬の社員と
婚約したって……たまたま通りがかった
場所にお前とあきらがいて
偶然見ちまったんだ。」

あれを……見られてた?

一瞬にして身体中の血液が引いて行く。

美作さんに思いをぶつけられた
ことは否定しない。

でも……それを道明寺の口から
聞かされるなんて辛すぎる。

「……見てたなら知ってるよね?
私ちゃんと自分の気持ち言ったよね?
そりゃ好きっていわれて吃驚したけど
道明寺は私(の気持ちを疑うの?」

道明寺は無言のまま私から
フイッと目を反らした。

そっか、否定しないってことは
やっぱり疑ってたんだ。

「どうすれば信じてもらえる?」

気付いたらそうきいていた。

「疑ってなんかいねえよ!」

声を荒げる道明寺。
私は視線を落とす。

「じゃあどうしてアイツの方が
いいんだろなんて聞くの?
言葉だけじゃ信じらんないんだよね?」

私はベッドから降りて自分の
着ているものに手をかけた。

死ぬほど恥ずかしい
でも今はこの方法しか思いつかない。

パサッと音を立ててパジャマの
上着が床に落ちた。

「牧野……!」

息を呑んで道明寺が私の方を
見るのが分かる

「言葉だけじゃ信じられないんでしょ?だったら心だけじゃなくて身体も
アンタのものにしてよ!
こんな貧弱な身体要らないかも
知れないけどっ!」

冷気が裸の肩に触れて震えが来る。

恥ずかしくて逃げたくなる。

「バカッ!風邪引くだろっ?!
服を着ろよっ!」

道明寺はそういって私が脱いだ
ガウンを肩に掛けて羽織らせる。

「あの時は無理やり抱いたくせに
私から迫ると嫌なんだ?」

ボソッと呟く私の声を聞いて
道明寺は私の頬を平手打ちした。

「いい加減にしろっ!」

乾いた音と共に部屋に
響き渡った怒鳴り声。

叩かれたところがジンと
痛くなってくる。

殴られるなんて思いもしなかった。
私の勇気は……
無駄になったの?

そっと道明寺の顔を見上げると
辛そうに顔を歪ませてた。
こんな顔見たかったんじゃないのに。

「……もう……やめる?」

気が付いたら胸を締め付けられたまま
そう口にしていた。

「なにいって!」

「私そんな顔の道明寺見たくないよ!
私のせいで道明寺はしなくていい
苦労してるんでしょ?」

心が悲鳴を上げる。

本当は今すぐにでも胸に飛び込んで
抱き締めてもらいたい。

「俺はおまえだけだっ!!
お前のためにする苦労なら
そんなの苦痛に感じない!」

そう叫んで抱きしめてくれた。

「ごめんお前をそんな風に
泣かせるつもりは……」

その呟きとともに涙が頬を伝ってくる。

絶対に泣くまいって決めたのに
勝手に涙が頬を伝って零れ落ちていく。

「私を道明寺のものにして……!」

私は自分から道明寺の腕の
中に飛び込んでいった。

道明寺は飛び込んできた私を
しっかりと受け止めてくれる。

傷ついた心同士を癒すように
私たちはそっと唇を重ねた。
また新しい涙が頬を伝っていく。

受け入れてくれたことが嬉しくて
ただただ涙をこぼす。

ゆっくりとお互いの心の傷を
癒すような口付け。
このまま時が止まってしまえばいい。

この幸せな夢が覚めて欲しくない。

そっとベッドに座らされて
さっき羽織らされたガウンが
脱がされる。

「後悔しないか?」

「しないよ?だって本当に
好きな人にしかこんなこと
……しないもん」

私がそういうとクスッと
道明寺は笑う。

長い指で涙を拭ってくれた。

「もう、黙れ」

言葉と同時にまたキスで唇を塞がれた。

甘い吐息がお互いの唇から
漏れていく。
初めてのときは感じることの
なかった心の奥に生まれた甘い疼き。

心の奥からこの人を愛しいって思えた。


慈しむように這わされた長い指。

汗ばむ肌から伝わってくる
お互いの体温。

呼吸を忘れるほど何度も交わした
深くて長いキス。

刻み付けられた貴方のモノという証。

痛みに耐えしがみついたこと。

私はどんなことがあっても
この夜を忘れない。

貴方の腕の中に抱かれたこと
絶対に後悔なんかしない。