07.貴方の腕の中 | Lover's Concerto

Lover's Concerto

花より男子の二次創作ブログです。
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新人研修を終えてホテルに
缶詰状態からやっと抜け出せた。

私は道明寺の言うとおり
会社を辞めることにした。
もしも、自分のせいでお世話になった
会社に迷惑がかかってしまったら
申し訳ない。

私が選んだ人は大事な取引先の
社長令嬢の婚約者だから。

俺の都合でお前を路頭に
迷わせられないって言ってくれた。

道明寺が事情を話してくれて
私は退職後、美作さんのお家に
拾ってもらえることになった。

初め無茶すんなよと道明寺に
詰め寄っていた彼も最後には
事情を理解してくれた。

密かに始まった同じ人との
2度目の恋は前のときのように
突っ走るような勢いはない。

だけどそれ以上にお互いの気持ちが
流れるように伝わってきて切なくなる。

早く婚約者との関係を清算したい
道明寺とただ側にいられるだけで
満足してる私。

意識の違いはあるけれど
円満解決なんて望んでない。
それは恋という感情が絡んでる以上
無理のような気がする。

道明寺と付き合うようになって
私は涙脆くなった。

彼の前では笑ってる。
でも1人になるとバカみたいに
涙腺が緩んじゃう。

恋って相手を思う気持ちが強くなると
同時に泣き虫にさせる。

こんな気持ち、前のときは感じる
余裕がなかった。
道明寺を思って流す涙なんてなかった。

早く私だけの道明寺になってとは
口が避けても言えない。

守られるという選択をして
いつ切れるか分からない細い糸で
つながれてるだけ。

私は信じて待つしかないって思ってる。








急な退職に上司はあまり
良い顔をしなかった。
私だって辞めたくはない。

これから掛けてしまうであろう
迷惑のことを考えると私は姿を消す
選択しか残ってたない。

そこに突然現れた美作さんが
「彼女は俺の婚約者です。」と
いって周りを驚かせた。

あの穏やかな微笑みを見せられては
誰も何もいえない。

しかも大得意先の社長令息の
言うことを疑うわけもなく
拍手で送り出された。

私は突然の出来事に絶句するばかりで
攫われるように会社を出た。

全力疾走するのは本当に久し振りで
加齢とともに体力が落ちてる
ことに気付かされる。

ちょっと走っただけなのに息切れ。

一緒に走ってる美作さんには
呼吸の乱れなんてない。

額には汗が光ってるけど。


「……どうしてあんなこというの!?」

助けてもらったことも忘れて
私は美作さんに詰め寄る。

私を見つめ返した美作さんの表情は
いつもと違って笑みがなかった。
怖いくらいに真剣な表情で私の
顔を見据えていった。

「……あんなこと?ああ……
婚約者って言ったことか
牧野困ってたから。」

「こ、困るのは美作さんでしょ?
どうしてあんな嘘ついちゃったの?」

私がそう問い詰めると美作さんは
自嘲するように微笑う。

「お前本当に鈍感だな」

美作さんの笑う理由がわからなくて
困惑してしまう。

「私が鈍感なのと……美作さんが
嘘つくのとどういう関係があるのよ?!」

訳がわからなくてイライラする。

どうしてそんなに不機嫌なの?

「……こんだけ分かる行動しててなんで
分かんないんだよ!ずっとお前が
好きだったんだ!たとえ司を敵に
回してもどんなことがあっても
お前の側にいたい!」

顔を真っ赤にして俯く美作さん。

……3年間こうやって近くにいて
はじめてみる彼の照れる顔。

「司は婚約者と切れようとしてるけど
もう婚約発表の準備寸前だったんだ。
今さらそれを白紙に戻すなんて
無理なんだよ!お前が傷つくだけだ!
司なんかやめて俺にしておけ!」

ぶつけられた彼の本音が痛いくらいに
胸に突き刺さる。

信じられない!

今度は間違えないっていったら
頑張れって言ってくれたじゃない?

軽くパニック状態に陥る
私の思考回路。

ふわりと抱き寄せられて
激しく心臓が鳴る。

何も言わずにずっと側にいてくれたのは
西門さんに問われて私が答えたことに
がっかりしてたのは……

私のこと好きで居てくれたからなの?

「美作さん……あの……」

なにを言っていいか分からず
恐る恐る話しかける。

「……ゴメン、気持ち押し付ける
つもりないんだ……お前ときどき
泣いたあとみたいに瞼腫らしてるから
つい苛っとして……」

そんなことないよ……?
驚いたけど嬉しかった。

いつもおちゃらけてる彼の
真剣な表情にドキッとした。

美作さんの嘘偽りない告白を聞いて
私は真剣に答えなきゃいけないと思った。

「ううん、嬉しかった、ありがとう。
でも私は道明寺のことが好きなの
もう、諦めないって決めたの
バカみたいだけど待つって決めたの」

あんな嘘をついたのはきっと
私を守ってくれるためだと思う。

ただ守られて自分だけ安全な
地位にいるのだけは耐えられない。

道明寺に知られたらきっと
怒るだろうけど私はその嘘に
付き合うことにした。

「俺は……待つから……泣きたくなったら
いつでも泣ける場所提供してやる」

「やだなぁ……私そんな泣き虫
じゃないもん……」

いつだってこの人の前でなら
安心して本音を出せた。

それはきっとこれからも変わらない。

花沢類とはまた違う安心感。

送るよ……?

美作さんはそういって笑った。


私は知らなかった。

道明寺が私達の会話をずっと
聞いてたことに……。

そして付き合いだして初めての
危機が訪れるなんて予想も
していなかった。








いつもより少し遅い時間の訪問者。

誰かと思ったら道明寺だった。
モニターでチェックしてから
ロックを解除する。

部屋に入るなりいつもされる
抱擁もキスもない。
無言で入ってきてソファーにどっかりと腰を下ろす。

お茶はって訊くと要らないって
短く答える。

いつもと様子の違う道明寺。

私はもう寝るつもりだったから
パジャマだった。

寝室に行ってガウンを羽織る。

今夜は来ないと思ってた。

だってここに来るときは必ず
メールを寄越すから。

座り込んだままずっと無言の道明寺。

目を合わせようともしない。

どうしたのかな?

すっごく疲れた顔してる。
お仕事きついのかな?

「……道明寺?大丈夫?今お布団
敷くから待ってて!」

立ち上がって客用の布団を
引っ張り出そうとする。

「いい、お前の隣で寝る」

そう短く答えると急に私を抱き上げて
ベッドルームに運んでいく。

急に怖くなった。

道明寺は何かに怒ってる?

私をべッドの上に降ろすと急に
部屋の灯りを落とされる。
不意に訪れた暗闇に恐怖を感じる。

だって闇の中でも道明寺の怒りが
自分に向けられてるのが分かるから。

「道明寺?」

「……黙れよ。」

そういって訳がわからないまま
塞がれた唇。
怖くなって顔を退かせようとする
私の両手首を押さえつけて
さらにキスをされる。

恐怖で身体を支配されながらも
私は必死で抵抗して
道明寺の唇を噛んで押し戻す。

「イヤ!こんなキスはやだっ!」

思い切り叫んで道明寺の身体を
突き飛ばす。
こんな……相手の気持ちを
無視するようなキスをするなんて……。

「そうか……イヤなのか……」

道明寺どうしちゃったの?
何でそんなに怒ってるの?

その原因が自分にあるとも知らず
私はただただ道明寺の暴挙に
驚くばかりだった。

「あいつの方が……いいか?こんな風に
こそこそしなくていいもんな?」

その言葉で道明寺が誰のこと
いってるのかが分かった。

美作さん?

「……なんで?」

「用があって瀧川にいた。
そしたらあきらが永瀬の社員と
婚約したって……たまたま通りがかった
場所にお前とあきらがいて
偶然見ちまったんだ。」

あれを……見られてた?

一瞬にして身体中の血液が引いて行く。

美作さんに思いをぶつけられた
ことは否定しない。

でも……それを道明寺の口から
聞かされるなんて辛すぎる。

「……見てたなら知ってるよね?
私ちゃんと自分の気持ち言ったよね?
そりゃ好きっていわれて吃驚したけど
道明寺は私(の気持ちを疑うの?」

道明寺は無言のまま私から
フイッと目を反らした。

そっか、否定しないってことは
やっぱり疑ってたんだ。

「どうすれば信じてもらえる?」

気付いたらそうきいていた。

「疑ってなんかいねえよ!」

声を荒げる道明寺。
私は視線を落とす。

「じゃあどうしてアイツの方が
いいんだろなんて聞くの?
言葉だけじゃ信じらんないんだよね?」

私はベッドから降りて自分の
着ているものに手をかけた。

死ぬほど恥ずかしい
でも今はこの方法しか思いつかない。

パサッと音を立ててパジャマの
上着が床に落ちた。

「牧野……!」

息を呑んで道明寺が私の方を
見るのが分かる

「言葉だけじゃ信じられないんでしょ?だったら心だけじゃなくて身体も
アンタのものにしてよ!
こんな貧弱な身体要らないかも
知れないけどっ!」

冷気が裸の肩に触れて震えが来る。

恥ずかしくて逃げたくなる。

「バカッ!風邪引くだろっ?!
服を着ろよっ!」

道明寺はそういって私が脱いだ
ガウンを肩に掛けて羽織らせる。

「あの時は無理やり抱いたくせに
私から迫ると嫌なんだ?」

ボソッと呟く私の声を聞いて
道明寺は私の頬を平手打ちした。

「いい加減にしろっ!」

乾いた音と共に部屋に
響き渡った怒鳴り声。

叩かれたところがジンと
痛くなってくる。

殴られるなんて思いもしなかった。
私の勇気は……
無駄になったの?

そっと道明寺の顔を見上げると
辛そうに顔を歪ませてた。
こんな顔見たかったんじゃないのに。

「……もう……やめる?」

気が付いたら胸を締め付けられたまま
そう口にしていた。

「なにいって!」

「私そんな顔の道明寺見たくないよ!
私のせいで道明寺はしなくていい
苦労してるんでしょ?」

心が悲鳴を上げる。

本当は今すぐにでも胸に飛び込んで
抱き締めてもらいたい。

「俺はおまえだけだっ!!
お前のためにする苦労なら
そんなの苦痛に感じない!」

そう叫んで抱きしめてくれた。

「ごめんお前をそんな風に
泣かせるつもりは……」

その呟きとともに涙が頬を伝ってくる。

絶対に泣くまいって決めたのに
勝手に涙が頬を伝って零れ落ちていく。

「私を道明寺のものにして……!」

私は自分から道明寺の腕の
中に飛び込んでいった。

道明寺は飛び込んできた私を
しっかりと受け止めてくれる。

傷ついた心同士を癒すように
私たちはそっと唇を重ねた。
また新しい涙が頬を伝っていく。

受け入れてくれたことが嬉しくて
ただただ涙をこぼす。

ゆっくりとお互いの心の傷を
癒すような口付け。
このまま時が止まってしまえばいい。

この幸せな夢が覚めて欲しくない。

そっとベッドに座らされて
さっき羽織らされたガウンが
脱がされる。

「後悔しないか?」

「しないよ?だって本当に
好きな人にしかこんなこと
……しないもん」

私がそういうとクスッと
道明寺は笑う。

長い指で涙を拭ってくれた。

「もう、黙れ」

言葉と同時にまたキスで唇を塞がれた。

甘い吐息がお互いの唇から
漏れていく。
初めてのときは感じることの
なかった心の奥に生まれた甘い疼き。

心の奥からこの人を愛しいって思えた。


慈しむように這わされた長い指。

汗ばむ肌から伝わってくる
お互いの体温。

呼吸を忘れるほど何度も交わした
深くて長いキス。

刻み付けられた貴方のモノという証。

痛みに耐えしがみついたこと。

私はどんなことがあっても
この夜を忘れない。

貴方の腕の中に抱かれたこと
絶対に後悔なんかしない。