私の道明寺の呼び方が名字から
名前に変わった。
もうすぐ同じ名字になるのに
紛らわしいだろと脅され
恐る恐る下の名前で呼ぶようになった。
結婚を決めて私は司の両親に
会うことになった。
病み上がりの私を気遣って
わざわざあちらの方から私に
逢いに来て下さった。
申し訳ないと思いつつも
司に連れられて数年ぶりに
道明寺邸へと足を踏み入れた。
お屋敷ではタマ先輩にも
再会することができた。
高校生のときに逢ったときよりも
さらに小さくなった先輩を見て
涙が止まらなくなった。
抱きしめたあの頃よりも皺が増えて
小さくなった先輩の身体。
全身で再会の喜びを表してくれた。
こうなったら坊ちゃんのお子様を
見るまで死ねないといって
私達を照れさせた。
先輩に再会した後、ご両親のいる
書斎に向かった。
人前だというのに堂々と手を繋ぐ司。
少し恥ずかしかったけれど
誰にも隠れずそういうことが
できて嬉しかった。
あともうちょっとのところで
司の顔が引き攣った。
どうしたの?と問いかけると
姉貴だ……と呟く。
ちょっと顔に縦線が入ってる。
司の勘は見事に当たり、人影が
私達の方に向かって突進してくる。
私の名前を叫びながら走ってきて
司の横を掠めて抱きしめられる。
相変わらずのすごい力に窒息しそうになる。
「姉ちゃん!ちょっとは
手加減しろって!」
姉ちゃんの馬鹿力で抱きしめたら
つくしが潰れるだろそれでなくても
怪力なんだから……
と、続けると椿お姉さんは
無言で司を羽交い絞めにし
強烈なキックをかましていた。
10年前と変わらない光景が
懐かしくて嬉しかった。
突然笑い出した私を見て司が
怪訝な表情をする。
「お前……俺が虐待されてるの見て
そんなに可笑しいのか?」
司の唇の端は引き攣ってる。
額に血管まで浮いてる。
笑いを堪えすぎて涙が出てくる。
「虐待とはどういう意味よ?人聞きの
悪いいいかたしないでくれる?躾よ躾!!」
いった側からお姉さんに
殴り飛ばされてる。
ますます笑いは止まらなくなり
泣き笑いの状態になる。
「つくし……てめえ……っ」
殴られた箇所を押さえながら
私を睨みつける司。
握った拳がプルプル小刻みに震えてる。
「だ……って懐かしいんだもん
もう2人のそういうところは
見られないって思ってたから」
私がそういうと切なげな
表情で司が私の名前を呟く。
お姉さんはそんな私の肩に
手を置くとにこっと笑って言った。
「司に泣かされたらいつでも言うのよ?
すぐに飛んできて
ボコボコにしてあげるから。」
そういわれてその光景を想像して
ますますドツボにハマる。
「つくし!笑いすぎて傷口開いても
知らねーからな!」
完全に臍を曲げちゃった司。
ボコボコにしてあげるから。」
そういわれてその光景を想像して
ますますドツボにハマる。
「つくし!笑いすぎて傷口開いても
知らねーからな!」
完全に臍を曲げちゃった司。
私にそう怒鳴るとふて腐れて
そっぽを向いた。
「いい年して拗ねないでよ。」
私がそう呟くとなんか言ったか?
と睨まれてしまった。
椿お姉さんは仕事があるから
またね。といってしまった。
その慌しい後ろ姿を見送りながら
司を振り返るとまだ膨れっ面をしてた。
「ごめん、笑いすぎた。」
ちょっとだけ申し訳なく思って
そう謝ると司は膨れっ面をやめた。
ぽんと大きな手の平で頭を撫でられる。
「お前、そうやってずっと笑ってろ
笑ってるお前が好きなんだ。
お前の笑顔ぜってー消したくないって
思ってる」
改めて言われるとすごく照れくさい。
「うん、私もずっとアンタと
一緒にいたい」
そう答えると道明寺の顔が
満面の笑顔に変わる。
私も微笑み返すと触れるだけの
キスが唇に降ってきた。
顔を見合わせて笑い合って
また差し出された手に掴まった。
初めてお会いした司のお父さんは
想像していたよりもずっと
気さくな人だった。
名乗るよりも前にいきなり名前を
ちゃん付けで呼ばれて固まる。
その後の言葉が続けられないほど
絶句してしまった。
「……お父さん、彼女驚いてます」
さすがに司もお父様の前では
言葉遣いもいつもみたいに
乱暴じゃない。
気を取り直して自己紹介した。
お父様は終始穏やかな微笑を
浮かべて私を見ていた。
「……君には司の代わりに怪我を
負わせてすまないことをしたね」
「い、いいえっ」
とんでもないと手を振る。
「こんなことになってしまったけれど
司を側で支えてやって欲しい。
君が気に病むことはないからね。」
それを聞いてまた涙腺が
緩むのを堪える。
多大な迷惑をかけたであろう私に
なんて寛大な言葉をかけて
くださるんだろう?
「司、信じてもらえないけれど
今はあなたの幸せを祈っているわ。
今度こそ幸せにおなりなさい。
つくしさん司を宜しくお願いします」
あのお母さんにまで頭を下げられて
私は萎縮しっぱなしだった。
「お父さん、お母さん、俺は
牧野つくしさんと自分の
誕生日に結婚します」
いいですよね?と司が問う。
2人は顔を見合わせ同時に頷いて
司の問いかけに答えて下さった。
その瞬間の司の顔は私が何度も
可愛いと思ったあの全開の笑顔。
対照的に私は緩みっぱなしの
涙腺がもっと緩んでしまった。
ただただ、嬉しかった。
そんな私を司は黙って抱き寄せてくれた。
滲んだ涙は司のスーツが静かに吸い取った。
あとで一緒に食事でもしようと
誘われて承諾して部屋を出た。
来たときと同じように手を繋ぎ
部屋を移動する。
ときどき立ち止まっては
触れるだけの小さなキスを交わす。
早く2人きりになりたい気持ちが強くて時々そうやって立ち止まっては焦りを
解消してキスを交わした。
東の角部屋にたどり着いた。
縺れ合うように部屋の中に入り
入ったとたんに深いキス。
唇が離れたあと司は私を抱え上げて
ベッドへと運ぶ。
ベッドの上に優しく下ろされて
私は自分を見下ろす司の姿に
堪らなくなって自分から
キスをねだった。
欲情するってこういう感情なんだと
激しく芽生えた感情に1人納得する。
お互いの着ているものを脱がし合い
ながら裸になって抱き合う。
前にこの部屋で抱き合った時は
監視をすり抜けて侵入して。
突然男に豹変した司が怖くて
泣いて拒んだんだっけ。
今となっては懐かしいその
思い出に笑いがこみ上げてきた。
「つくし、傷痕見せて。」
突然ゾクッとするような声で
囁かれて私は司を見上げた。
恐る恐るシーツを取って傷を見せた。
まだくっきりと赤く残ってる
その傷に司はそっと口付けた。
くすぐったさもあったけど
必死に堪える。
「お前に傷つけちゃったな……」
しみじみという司に私はくすっと
笑ってしまう。
「いいの……この傷は私にとっては
名誉の負傷だもん。この傷が刻まれた
理由を私はずっと忘れない」
私がそういうとバカ……と司が笑う。
「つくし、絶対に幸せになろうな?」
「うん」
もうなんの言葉も要らない。
今この時間あなたとここにいることが
私の一番の幸せだから……。
一緒にいたいという小さな想いが
ずっと……永遠にという言葉に進化する。
そっとベッドに押し倒され司の
キスが全身に降ってきた。
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