MUFGがモルガン・スタンレーに$84億程度の出資をすることに決まった。最大20%まで出資が可能で取締役も派遣し、戦略的な業務提携を行うことに合意したようである。

今回のMUFGの合意を見るにつけ、どうしても思い出してしまうのが、86年に住友銀行がゴールドマン・サックスに$5億を出資した顛末である。出資当時は"Jpana as No.1"の頂点で、邦銀がとうとうアメリカの投資銀行に楔を打ち込んだとずいぶん騒がれた。しかし、当初から懸念されていた出資の方法が、未公開企業に対する無議決権株であったことと、提携の具体的な内容が良くわからなかったことが、後々まで尾を引いたように思われる。

住友としては、金を出した以上はそれに見合うだけのノウハウを獲得して、日本でも銀証の垣根を越えて投資銀行として確固たる地位を築こうという意図があった。ところが、出資後は具体的な業務提携も遅々として進まず、ましてやノウハウの導入など、GSにうまく言いくるめられて、ほとんど成果のない状態となってしまった。私の個人的な印象では、いいように金だけ出資させられた状態と言っても過言ではないと思っている。取締役も確か1,2名派遣はしていたはずであるが、多勢に無勢。議決権はないから、総会があっても圧力どころか出席もできず、未公開だから売るにも売れずで、どうにもできない状態が99年まで続いた。

幸いにして99年にGSが株式を公開したので、580億円の売却益が得られたが、それがなければ大失敗の投資となっていたであろう。

MUFGの出資は、住友の場合と異なり、

1 無議決権ではなく普通株
2 MSは公開企業
3 MSは銀行
4 MSは破綻の淵にあり、MUFGは救世主
5 MSは今後FEDの管轄下に入る。MUFGはすでにUnionBanCalを持ち、USでの銀行経営に1日の長がある

と、住友に比べれば手玉に取られる可能性は少ないと考えられる。

これから発表されるであろう具体的な提携内容が、どの程度実行され成果を出すことができるのか。有形無形のリターンを随時注目していきたい
5大投資銀行のうち最後まで残っていたゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが、投資銀行から商業銀行に変わることが決まった。29年の大恐慌以来、紆余曲折はあったにしても、投資銀行の、しかも大手がすべて消滅してしまうような再編はなかったが、サブプライムの衝撃は1業種の消滅まで導くほどのインパクトがあった、いや、あるということであろう。

両社とも正確には銀行持株会社になって、その傘下に商業銀行をぶら下げるという手法をとるようである。これによって、傘下の商業銀行では預金の受け入れも可能となるが、最も大きなインセンティブは、FEDからの短期資金の直接借入が可能となることである。下位3社はともにマーケットの売り圧力と資金繰りの窮状によって、破綻ないし吸収に追い込まれてしまった。

政府の不良資産の買取機構の設立の発表によって、一時的にはマーケットも落ち着きを取り戻したようにも見えるが、買い取り価格の算定などの詳細は明確になっていない。不良資産を抱える金融機関は、大幅な損失が見込まれるようなら売りにも出さないであろう。債務超過はもちろん、あくまでも自己資本をあまり毀損しない範囲での処理でなければ、自分で自分の首を絞めることになり、買取はうまく進まないことが予想される。

そうかといって、むやみに買取価格を引き上げれば、税金が投入されるだけに、選挙にも影響する。ブッシュ政権はレームダックで動けず、新政権も決まらず、両候補者も高給取りの金融機関の救済は、投票行動への致命傷にもなりかねない。何とも間の悪いときに狙ったようにクラッシュが発生するものである。

MSは$10近くまで売り込まれた株価を、先週末に何とか$27まで戻したが、当然ながらマーケットも買取機構の問題点はわかっているはずである。空売り規制をかけたとしても、現物株を持つ株主が逃げ出す事態になれば、暴落は止めようがない。また、いつ資金繰りの道が閉ざされるとも限らないため、最後の出し手の庇護に入ったというところであろう。

これで、両社とも資金繰りの目処は当面ついたものと思われるが、今後は大甘のSECの監督下から、厳格なFEDへの監督下へ移行することとなる。傘下に商業銀行を持つ持株会社とて、容赦なく厳格な検査が行われるであろう。また、リスクを大きくとっての自由な投資銀行業務は大幅に制限されることが予想される。リスクに見合った自己資本を厳格な査定に基づき引き当てなければ、FEDがそうしたディールを認めることはありえない。当面の資金繰りの代償は、長期的な高収益モデルの放棄と引き換えになるものと思われる。

MSがこの手段を取ることはいたし方がないとして、GSまで投資銀行を捨てる必要があったのかは、疑問である。株価は下がったものの、まだ$100台はキープしており、それほど問題を抱えているようには見えなかったからである。

しかし、GSもFEDに駆け込まざるを得ないような毀損した資産を大量に抱え込んでいる可能性は捨てきれない。何しろポールソン財務長官は元GSのトップである。潰れる可能性のある古巣を何とか説得してFEDの管理下に送り込んだと考えるのが自然なのではなかろうか。

いずれにしても、歴史ある投資銀行が消えてしまうことは残念で悲しいことである。大手の再編はひとまずこれである程度収束することが予想されるが、今後は中小の金融機関の破綻が数多く続くことであろう。再編の第2幕はワシントン・ミューチュアルであろうか・・・

まだまだ目が離せない。

TCIが政府からのJパワーの株買い増しの中止勧告を拒否すると発表した。安全保障上の問題を理由とした中止勧告は、理由としては不透明であるとの主張である。私も個人的にはもっともだと思う。


Jパワーは仮にも民間企業である。マーケットから資金調達という果実を得るものは、基本的に誰が株主になるのかを選ぶ権利はない。なぜなら、株式の譲渡は原則自由だからである。したがって、外資のTCIであっても株主になることは可能であり、TCIでなくとも外資が大株主となる可能性は十分ありうる。


今回の中止の理由としてあげられたのは、TCIが原発や送電線への投資を阻止し、設備投資に回すべき資金を配当として分配させ、その結果、長期的な電力の安定供給が損なわれる恐れがあるというものであった。しかしながら、TCIは信託方式により原発・送電線についての議決権は、追加分については行使できないようにする提案をしていた。この提案により、政府の中止理由はほぼ解消されたと考えられる。しかし、政府はその提案を一顧だにすることもなく、門前払いを行った。中止とするならば、少なくとも、TCIの提案のどこが不備であるのかを、きちんと説明する必要がある。


TCIの買い増し分は、今回20%までである。20%では重要案件を決議する特別決議の拒否権は持ち得ない。ただし、理論上は他社と組むことによって1/3超の議決権を支配することは可能で、その場合は拒否権をもたれる可能性はある。しかし、それは民間企業であれば、どこもそのリスクを負った経営をしている。ひとりJパワーのみ無縁というのは、やはり解せないのである。経営者が株主のほうを向いた経営を行っているのであれば、株主から大きな圧力がかかることはないはずである。今回の中止は、「モノ言う株主はお断り」という経営陣の甘え維持と、METIの天下り先を確保したいとの本音が見え隠れしている。


TCIは確かに、海外でも増配要求などで悪名を轟かせているが、長期的な電力安定供給を損なうような行動や要求は、法律でも十分規制可能である。ROE、ROAなどの目標を高く持つとか、増配などは、TCIでなくとも、株主であれば誰でも望むものである。仲間同士で規律なく、なあなあで経営する可能性が見られるのなら、TCIなどのいわゆる「物言う株主」が大株主となったほうが、効率的、かつ経営にも規律が浸透するようになるのではなかろうか? いわんや、損失だけを出している非効率な株式の持合など、できないはずである。それこそ、持合分の750億を原発や送電線に投資するのが本分であろう。


いずれにしても、TCIが拒否をすれば、政府は中止命令を出さざるを得ない。中止命令の理由は、世界中の投資家が注目している。すでに、日本に投資をすべきか否かの試金石となっているため、いい加減な理由であれば、さらに日本売りが加速する恐れがある。政府は誰もが納得するだけの具体的かつ明確な理由を提示すべきである。

西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載による損害に関して、個人株主290人から総額13億円を賠償するよう求めていた裁判で、今日東京地裁で判決があった。


西武鉄道側は原告に対し2億3000万円の支払いを命ずる判決となった。個人の株取引に関するマーケットでの損害に賠償責任が認められたのは、おそらく初めてのことであろう。この判決は、マーケットに対して、将来的に大きなインパクトを与える可能性のある判決である。


そもそも株式の売買は自己責任であり、虚偽記載であろうが、粉飾であろうが、基本的には購入者の責任という受け止め方が、今までは一般的であった。しかし、今回の判決は、「会社が投資家を騙したら、その会社が投資家の損害を賠償しなければならない」と言っているようなものである。まだ今回は地裁判決なので、控訴審以後でどのような判決になるのかは不明であるが、仮にこの判決がスタンダードになるならば、日興、IHI、三洋、ライブドアなどの損失を被った株主にも賠償が受けられる可能性が出てくる。逆に言うと、企業にとっては、非常に重い判決となる。


ただ、今回の判決については、被告が誰なのかに関しては問題があるように思われる。支払い命令は法人である西武鉄道に向けられたものであるが、会社の負担はイコール既存株主の負担とも考えられなくはない。一時的な資金流出も、よく考えてみれば最終的には株主のお金なので、原告以外の株主から原告株主への資金の移転となり、どうも不公平なような気がする。


実際に虚偽記載を主導したのは、当時のオーナーの堤義明氏であり、当時の取締役会メンバーである。したがって、本来であれば、今回の判決の被告席に座るべき人間は彼らなのではなかろうか。被告は再生中の会社でもなく、ましてや株主(堤義明氏はもちろん除く)ではあるべきではない。原告の弁護団も裁判官も、誰が被害者で誰が加害者なのかを、もう少し慎重に吟味してほしいものである。


とはいえ、こうした判決が出ることによって、今後投資家を騙すとペナルティが大きいという認識が広がる可能性があるため、粉飾などの抑止力にはなるものと思われる。良い情報も悪い情報も、適時開示に従って、すぐに投資家に開示され、それに基づいて投資されるという健全な状態が維持されることを望むものである。

野村證券の中国人社員がインサイダー取引の疑いで、3名もの逮捕者を出してしまった。プロから見れば、何ともみっともない話である。企業情報部なので、M&Aの情報が間違いなく飛び交っている部署。当然のことながらコンプライアンスには厳しい野村のことなので、社員に徹底的にインサイダー取引の回避の教育はされているはずである。にも拘わらず、起こってしまった言い訳は、残念ながらできないであろう。


コンプライアンスに違反した企業とは取引しない、というのは最近の流れである。したがって、今後野村との取引は大幅に減少するであろう。長期的にボディーブローのように業績に対して影響を与えるはずである。


それにしても、外部への情報漏えいは証券会社にとっては致命傷である。合併・買収などのセンシティブな案件は、情報管理こそが最も重要である。その成否は誰もが知らないところで、一気呵成に成し遂げなければならない。情報が外部に漏れた瞬間、ライバル社の横槍・妨害、もしくは政治・官僚の干渉が入らないとも限らず、成功率は大幅に低下してしまう。機密に対して甘いという認識が広がってしまえば、一体誰が好き好んで相談に行くのであろう。これから暫くはアドバイザーとして選任されることはない可能性が高い。


M&Aだけでなく、増資、起債においても厳しい状況に陥ることが考えられる。特に外資はこうした問題は嫌うため、海外での影響も大であろう。


また、これはひとえに野村だけでの問題ではない。仮にも世界の野村がインサイダーとなれば、当然日本の金融機関全てが疑われてもおかしくはない。「あの野村でさえそうだ。いわんや・・・をや!」 したがって、海外の日本に対する見方自体が厳しくなることが予想される。


日本経済にとっては、何とも残念な事件である。