The Children's Investment Fundが、Jパワーの株式を20%まで買いますことについて、政府は安全保障上の理由から、外為法による中止勧告を行った。TCI側が買い増し分について信託方式で、原発と送電線については議決権の行使を制限するという提案を行ったにも拘わらずの決定である。


そもそもTCIが買い増す20%という議決権の力は、商法上では現在の9.9%とあまり大きな差がない。現状でも株主提案権や帳簿閲覧権は保有しているため、強いて言えば、大株主としての発言力確保の意味合いしか持ち得ない。重要な決定についての拒否権を持とうとするのであれば、特別決議を否決することのできる1/3の議決権がどうしても必要である。


仮に他の外資や機関投資家と組んで株主としての権利を行使するというのであれば20%は非常に大きな意味を持つが、今回は政府が拒否理由とする議案については議決権がない。したがって、TCIの提案は、政府が理由とする事項に関しては、明確な回答をしたのではないかと私は考えている。


確かに大株主であれば、「増配しろ」、「息のかかった人間を取締役に選任しろ」などと、経営陣にとってはうるさいことを言うだろう。しかしながら、株主はTCIだけではない。取締役会が経営資源を適切かつ効率的に配分し、優れた業績を上げるのであれば、TCIの無理な増配要求などを総会で退けることは十分可能だと思われる。然るに今回政府はTCIの買い増しは認めなかった。特に、外為法を管轄する財務省ではなく、経産省が強行に反対した。これは明らかに天下り先確保を最優先に考えたと疑われても仕方がないであろう。


政府はJパワーに対し、「株主還元について説明責任を果たすべき」とのコメントも出したが、政府こそがまず安保上の理由という抽象的な説明でなく、TCIの提案に対してどこが問題なのか、また、なぜ拒否の理由となったかを具体的に説明すべきであろう。残念ながら現状の回答では理由にすらなっていないといわざるを得ない。


折りしもTCIは9.9%の議決権を最大限に行使しようとすでに行動を開始している。4/17に発表された株主提案では、①株式持合いの制限、②社外取締役の選任、③2種類の増配提案、④自己株式の取得の4項目を提案する予定である。この提案自体は長期・短期ともにどちらの株主にとっても有用な提案であると思われる。Jパワーも特殊法人ではなく、民間企業になった以上は、誰が株主となるかは、経営陣が選択できない。TCIでなくとも、いずれこうした提案はされることとなるであろう。仲間内での甘い経営は過去のものとなったことを、きちんと認識すべきであろう。特に持合は経営者の保身にのみ有用であって、株主にとっては何らのメリットもない。パフォーマンスもマイナスであれば、それこそ全てを処分して、その資金を設備投資に当てるべきであろう。


経営陣がTCIの提案に対して論理的な反論ができなければ、TCI以外の株主もTCIに賛同する可能性もあろう。取締役会は真摯に対応すべきである。