先輩が駐在初日に犯した大失敗からの教訓を語る | チエでつながる, ワザでつながる、ココロでつながる、価値を生みだす           ~ 物語思考が世界をかえる

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この世に生まれて間もなく、人は「ものがたり」と出会い、そこで広い世界とのつながりを作ります。このblogでは、「ものがたり」と共にある人の可能性を探求していきます。

 

今回から数回にわたって、

目的に応じた「物語メッセージづくり」の事例をご紹介しようと思います。

 

一回目は、先輩が犯した失敗体験から得た教訓の話です。

 

https://ameblo.jp/c-b-collaboration/entry-12848082621.html

でお伝えした“五段展開”の構成になっています。

 

<Context>

ある先輩が語ってくれた失敗談を紹介しようと思う。この方はまだ20代の入社6年目で、東南アジアのある営業拠点の責任者に任命された。勿論大抜擢。本人もびっくりの人事だったらしい。小規模な拠点とはいえ、10名ばかりのスタッフを抱える一国一城の主。GM(General Manager) の肩書きを得て、気分もまんざらではなかったらしい。

 

<Before>

着任のその日、スタッフ達が立ち働くワーキングルームを通って奥にある自分のオフィスに入ると、そこにはマホガニーのデスクと革張りの椅子。デラックスな応接机とソファー。ふかふかのソファーに腰を下ろした先輩は、しばらくの間、その夢の様な新しい環境に浸っていたらしい。

暫くすると、アンディーという総務担当のスタッフが挨拶にやってきた。彼女は組織の人事関連全般や備品管理などの仕事を担当していたが、GMの秘書も兼務しており、コピーやタイピングなど、必要があればいつでも呼んでほしい、と言ってくれた。 

 

<GONG>

先輩は益々有頂天になり、子供のころから密かに夢見ていた一言を、退室しようとする彼女の背に向けて無造作に発した。「アンディー、では、コーヒーを一杯頼む。」 これを言ったとき、心の中では“ついに、やったぞ”的な気分だったらしい。

 

アンディーは足を止め、えっという顔をした。 そして、再び歩き出しながら「ええ、喜んで」と明るい口調で応じた。 

 

<After>

その1時間後に開かれた、事務所スタッフ達との最初のミーティングで、スタッフらが先輩に向けた軽蔑の眼差しは、一生忘れられないだろう、とこの先輩は語っていた。 その後、この先輩は必死の努力で、何とか信頼を回復できたそうだが、あの一言で払ったコストと自分が受けた精神的ダメージは、並のレベルをはるかに超えていたと語っていた。

 

<Message>

この話の教訓は言うまでもない。先輩は自分のワールドに浸りきって、自分に向けられているスタッフ達の視線を無視して行動してしまった。 人々はちゃんと見ている。リーダーとなれば、なお更、このことを忘れてはいけない。

 

Stp

 

先輩が駐在初日に“やっちまった” 一言をGONG(出来事)として、

そのBefore/After から物語化した事例です。

 

https://ameblo.jp/c-b-collaboration/entry-12848660453.html

でご紹介した四要素は、

 

①   入社6年目での大抜擢、まんざらではない気分

②   マホガニーのデスクと革張りの椅子、…ふかふかの…

スタッフらが向けた軽蔑の眼差しは…

③   アンディーは足を止め、えっという顔を…

再び歩き出しながら「ええ、喜んで」と…

④   しばらくの間、その夢の様な環境に浸って…

 

といった形で工夫してみました。

 

今回の様な成功、失敗に関わる話の“物語づくり”で

留意すべきは、

失敗の原因、成功の要因を体験から引き出し、

その本質部分が明確に伝わるように

メッセージングすることです。

 

当たり前のことに聞こえると思いますが、

 

「配慮が足りなかった」

「準備が不足していた」

の様な現象レベルから一歩踏み込んで、

 

“自分に向けられている視線を無視してしまった”

の様に、

根底にある「認識」レベルを掘り下げて指摘することが

重要です。

 

なお、一般に聞き手の立場としては、

“伝説”となっている様な人の話を除くと、

「失敗談」の方が“聞きたい”気持ちになります。

 

「成功の自慢話」は、

聞き手にとって単に苦痛以外の何物でもないので、

特に注意が必要です。