ちょうど30枚目のシングル、「素敵な気持ち」のB面に収められた、これまた名曲である。編曲の萩田光雄先生以外は、A面と作家陣が異なる。作詞が「れんげ草の恋」の竜真知子さん、作曲は「瑠璃色の地球」*(松田聖子)、「少年時代」(井上陽水)で後にその名を知られることになる平井夏美(=川原伸司)さんだ。

 

 「♪ あなたを 想い出なんかにしないわ」と、二人暮らした部屋で、(恐らく戻って来ない)あなたの帰りをずっと待ち続ける、という内容の歌詞である。

 

 イントロからガツンと来る厚めの和音、歌い始めのフォービート、歌の合間や間奏・後奏ではポロポロと、この曲のバックはピアノが主役と言っても良いだろう。どこか懐かしさ、温かさを湛えたサウンドで、歌に内容に比して、中高音をフィーチュアした宏美さんのボーカルには湿っぽさがなく、前向きに聞こえる。

 

 「♪ I'm waiting, I'm waiting/どんなに 離れても〜」からのキャッチーなサビは、私は何故か聴くたびに雨上がりの虹がかかった🌈空のようなイメージが浮かぶのだ。

 

 

 この曲は、宏美さんご自身もお気に召していたことは間違いない。リリース直後の1983〜84年こそ私が足を運んだステージでは歌われなかったが、事務所独立後の85年になって、知る限りでも3月のNHK-FMの『歌謡スペシャル』で披露。そしてその年の秋からの『CINEMA SCOPE』ツアーでもセットリストに名を連ねた。

 

 そしてさらに、結婚後の活動緩慢期をはさみ、94年のディナーショーでまた新たなアレンジで歌って下さっているのだ。そのステージで歌われた曲の多くが、翌年『MY GRATITUDE-感謝-』に収録された。この岩崎宏美復活を高らかに宣言したアルバムで聴くと、サビのリフレインは、宏美さんとファンとのお互いのラブコールのように聞こえるのだ。

 

 この時のアレンジは塩谷哲さん。イントロはアコギ(今剛)に差し替えられていた。このバージョンの宏美さんの歌い方で、すごく好きな所がある。ブリッジの最後、サビに入る直前の「♪ 気づかぬ 顔をして」の太字にした、この曲の最高音部だ。オリジナルでは、ここぞと声を張っているが、新たな録音では逆に力を抜き、語るような地声の高音なのだ。皆様、ぜひ聴き比べてみて欲しい。

 

 

 この曲は今世紀に入って2002年のオーチャードホール等でも歌われた。その時は、サビの「♪ I'm waiting, I'm waiting」の部分の「I’m」を省略して、「♪ waiting, waiting」と歌っている。あまりこういう改変をなさらない宏美さんにしては珍しいと思いご紹介した。確かに、「I’m」が低い16分音符に割り当てられており、それをカットすると格段に歌い易くなるのは間違いない。またこの時はサビで、ギターの古川昌義さんらの「♪ waiting」とか「♪ forever」とかの男声バックコーラスも入り、この上なくお洒落だった。もしかするとカットしたのも古川さんあたりのアイディアかも知れない。

 

 

 この曲を聴くといつも思い出すことがある。それは、当時深夜にアルバイトしていたファミレスの仲間たちで、車何台か連ねて「O山ゆうえんち」に遊びに行ったことである。「O山ゆうえんち」は、閉園して久しいが、ある程度以上の年代の方なら「♪ Oやま!あれま!」というCMソングでお馴染みであろう。当時その隣接県で学生生活を送っていたし、まだ東京ディズニーランドは開園していなかった(この年の4月開園!)ので、日帰りできる大きな遊園地と言えばここしかなかったのである。

 

 もちろん私の車も出動、当然車には発売されたばかりの最新シングル「素敵な気持ち/WAITING」のカセットテープが積まれていた。A面曲はいろいろな思い出ができるが、当時レコードでしか聴くことのなかった「WAITING」は、そう言うわけで「O山ゆうえんち」の思い出と、切っても切り離すことができないのだ。🥰

 

(1983.2.21 シングル「素敵な気持ち」B面)

 

*【追記 2024.6.17】

「WAITING」のBメロ「♪ あなたの着慣れた白いシャツ~」のメロディーは、「瑠璃色の地球」のサビ「♪ 朝日が水平線から~」に使用されている、というのをどこかで読んだ気がしていたら、見つかりました!ブロ友の白い秋さんの記事でした。いろいろな参考文献を当たった読み応えのある記事です。是非お読みください!