今日は、傑作揃いの17thアルバム『WAGAMAMA』から、他の楽曲に埋もれてしまいがちな、この作品を取り上げてみたい。何しろ全9曲のうち、まずシングルが2曲、カップリング曲が1曲。他の6曲のうち5曲までは、当時のライブで歌唱されている。中でも、「姫ごころ」(夜ヒットでも歌われ、翌年「最初の恋人達」のB面にも収録)、「カサノバL」はエジプトのコンサートでも披露され、現在でもライブ映像を楽しむことができるし、「もういちど…」は岩崎宏美復活(1995)に際して、再度吹き込まれた楽曲である。この「SEE YOU AGAIN」にスポットが当たらなかったのも頷ける。

 

 この曲は、作詞:佐藤ありす、作曲:花岡優平、編曲:山川恵津子と、「姫ごころ」と同じ作家陣である。「姫ごころ」ほどのインパクトの強さはないが、全体的に似通った雰囲気は漂っている。「姫ごころ」の「♪ あなたの愛を 試してみたい」と、「SEE YOU AGAIN」の「♪ 寄せた運命 ほどいてしまう」のそれぞれ後半の太字にした部分は、符割が同じで、メロディーラインが類似しているため、余計そう思うのかもしれない。

 

 内容的には別離の歌である。「♪ 出逢った頃の 少年の表情」「♪ たとえ 彼がいくつでも」という歌詞から、私は何となく宏美さんの歌に幾度となく登場する、「弟のような」恋人をイメージするのだ。「♪ 今夜 彼は飛びたつの/もっと広い 大空」にという歌詞にも、大人に成長した彼が、「私」の元から巣立って行く様子が表現されている。

 

 ドラムスは、角松敏生さん・ユーミン・久保田利伸クンをはじめ、多くのメジャーアーティストをサポートしてきた江口信夫さん。「姫ごころ」「夜のてのひら」にもクレジットされている。ミリオンセラーとなった「SAY YES」(チャゲ&飛鳥)、「どんなときも。」(槇原敬之)も彼のドラムスだそうである。キリッと締まるスネアやバスドラの音が好き。今世紀に入ってからも、ずっと宏美さんのバックを固めてくれている心強い江口さんだ。

 

 この曲はAマイナー、ABC×2+BCのツーハーフ。音楽的には、細かくタイトなリズムに乗って、愁いを帯びたメロディーを宏美さんが歌い上げる。サビCパートの「♪ 寄せたさだめー」の「めー」の音は、花岡さん、知ってか知らずか、サブドミナントマイナーのコードに6thのメロディーを乗せるという、京平先生の得意技(「さよならの挽歌」「女優」の相似 参照)である。

 

 最後のハーフのサビ前、「♪ たぶん もう一度 恋をするわ」とBメロが終わると、2拍だけ余計に挿入されているのも効果を発揮している。そして最後のサビでは、低音に宏美さんのセルフコーラスがダビングされている。

 

 あと、不思議なのは歌詞カードによれば「♪ もしも 偶然に逢えた時は」が繰り返されるはずが、1度目は「♪ ぐーうぜーんー」、2度目は「♪ ぐうぜんーにー」と歌い分けられている点だ。歌詞カードは間違っているとして、この微妙な差異の意図は何だったのであろうか。

 

 

 私はこの『WAGAMAMA』が発売された夏、2度目のポーランド一周旅行をしている。3年前に旅した際、ポーランド北西部の湖沼地帯で偶然行き合わせた高校生の一団と、ムロンゴーヴォという所のキャンプ場で1泊2日行動を共にさせてもらったことがあった。そのうちの数人と文通をしていたが、3年間やり取りが続いたのはMという女の子一人だった。

 

 タルノブジェクという町の彼女の家に世話になる約束を取り付け、小さな駅に着いたのは夜の9時過ぎ。タクシーもなく、電話も通じない。やむなく駅のベンチで寝ていると、なんとMが迎えに来てくれたのだ!列車の中で私を偶然見かけた彼女の従姉妹が連絡をくれたのだそうだ。彼女のご両親も起きて待っていてくれて、私の歓迎の夕食会を催して下さった。

 

 その翌日には、3年前共にキャンプした仲間数人と感動の再会。あの時のメンバーが一堂に会したのは3年前以来だという。私の来波に合わせて彼らも連絡を取り合ってくれたのだ。感謝である。Mと2人で、古都クラクフ、オシフィエンチム(アウシュヴィッツ)を訪れたのも忘れられない。

 

 Mともう1人の仲間Aとは、今でもSNSで繋がっている。あと1年で私も定年退職。真っ先に旅行したいのはポーランドである。彼らとの再会が待ち遠しい。“SEE YOU AGAIN !”

 

(1986.7.21 アルバム『WAGAMAMA』収録)

 

P.S.「クイズ❣️宏美さんの楽曲中のシングル・アルバム曲のタイトル」に1曲追加。

SEE YOU AGAIN ➡️ ♪「時の女神」の 気まぐれでも〜😉