ドナ・サマーのアルバムからアイディアもタイトルもそのまま拝借した『ライブ&モア』に収録されたスタジオ録音音源。このアルバムのスタジオ録音の曲は5曲、うち3曲は既発表シングル両面(「泣きながら目覚めて」はバージョン違い)。未発表オリジナルは「砂の伝説」とこの「時の女神」だけだ。

 

 作家陣は、オリジナルの岩崎作品としては極めて異色のメンバーである。作詞:呉田軽穂、作曲:吉田拓郎、編曲:加藤和彦・瀬尾一三。呉田軽穂は言うまでもなく松任谷由実さんの別名。私には、作曲のみを担当した「赤いスイートピー」「渚のバルコニー」等の松田聖子作品が馴染み深い。吉田拓郎さんは説明無用。加藤さん瀬尾さんも業界の有名人だが、お二人とも宏美さんとの絡みはこの1曲だけだ。

 

 

 で、この曲なのだが、正直に言うと初めて聴いた当時からあまり心に響かないと言うか、面白みに欠ける楽曲という印象を拭えない。

 

 あくまで私の感想だが、音楽が自然に流れていかないのだ。Aメロ(♪ 知ってたの/あなたの心を支配する〜)もBメロ(♪ 迷惑ですか 迷惑と云って〜)も、何となく音楽にムダがあるような感じで、停滞感がある。Cメロ(♪ こんなときには まごころだけに〜)も魅力に乏しいフレーズのように私には感じられる。音楽に惹きつけられるものが少ないせいか、ユーミンの歌詞の世界も伝わって来ない。

 

 この曲は、80年代前半のオリジナル・アルバムに先んじてCD化された。『呉田軽穂作品集〜秘密の花園』(1997)に収録されたのである(この辺りの詳しい経緯は「宏美さんアナログ音源 長かったCD化の道のり」をご参照ください)。あまり好きな曲でなかったとは言え、そこはやっぱり宏美ファンとして、キッチリ購入している。✌️

 

 Amazonの商品ページに、まだ私の投稿したレビューが残っていたので、そのまま転載しよう。

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★★★☆☆ 玉石混淆。レア盤ではあるが…

「呉田軽穂の作品」というだけでくくられたアルバム。曲の知名度にもバラつきがあるが、作品自体も出来不出来の差が激しい。特に「時の女神」などは、作曲に吉田拓郎、歌唱に岩崎宏美を配しながら、ボツ作品の域を出ない。マニアックなレア盤ではあるが…。

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 われながら随分と酷評している。他の方のレビューには「ユーミンと拓郎の無駄遣い」という手厳しいものもあった。どんな才能のある作家でも、全ての作品が傑作という訳にはいかないのは分かる。だが、せっかくのユーミン&拓郎コンビを起用した機会だっただけに、ひじょうに惜しい気がしてならない。

 

 YouTubeでこの曲を検索したら、面白い動画がヒットした。『よしだたくろう☆気ままな世界(提供曲集)⑨』。この動画の音声で、拓郎さんご本人と思しき方の、「デモテープの段階で自信を持って『これはイケる!』と思った曲。ところがそうでもなかった」という言葉に引き続いて「時の女神」が流れるのだ。これは本当に拓郎さんが「時の女神」について仰ったことなのだろうか?ご存知の方がいらしたら、フォローをお願いします。🙏

 

 

 ちなみにこの「時の女神」、現在でも復刻された『10カラット・ダイヤモンド+7』『ライブ&モア』に収録されており、容易に入手できる。

 

(1979.12.1 『ライブ&モア』収録)