「エリザベス女王は15カ国の元首」は何を意味するか
アリの一言 2022年09月10日 | 天皇制と人権・民主主義
英国エリザベス女王の死去(8日)にかんする報道は、女王や英王室の賛美であふれています。しかし、その負の実体を無過ごすことはできません。
注目されたのは、「15カ国で元首だった英女王 旧植民地にBLM運動がもたらした変化」と題した記事です(9日付朝日新聞デジタル)。
「エリザベス女王は英国のほか、世界14カ国の元首でもあった。多くは英国がかつて植民地として支配した国だ。独立後も王室との関係を保ってきたが、奴隷制度などの歴史を踏まえ、カリブ海諸国を中心に王室から離脱する動きがある。女王の死去で加速する可能性もある」(同)
イギリスはかつて世界各地を植民地支配した大帝国でした。その頂点に文字通り君臨したのが英王室です。エリザベス女王が15カ国の元首であったことは、イギリスと植民地支配の歴史が今も清算されていないことを示しています。
植民地を支配する宗主国意識は、エリザベス女王自身にもありました。
2014年9月、スコットランドでイギリスからの独立をめぐる住民投票が行われました。その過程で、エリザベス女王は、「(独立は)慎重に考えてほしい」と公言し、「独立派」にクギを刺したのです(2014年9月18日のNHKニュース=写真中、14年9月20日のブログ参照)。
住民投票の結果は「NO」が過半数を占め、独立派は敗れました。イギリスの世論調査では、女王の発言に対し56%の市民が「言うべきではなかった」と答えていました(「言ってもよい」は36%)。
冒頭の朝日新聞デジタルの記事によれば、カリブ海の島国・バルバトスが2021年11月に、女王を元首とすることをやめて共和国に移行しました。その契機となったのは、「2020年に世界中で「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」の運動が盛り上がったこと」です。
ジャマイカの首相も今年3月、ウィリアム英王子らが訪問した際、「独立、発展、繫栄した国家として真の目標を果たしたい」と述べ、共和国に移行する方針を表明しました。
「同じように、奴隷制度などの歴史を踏まえ、英王室から離れようとする国は増えている」(同記事)
「15カ国」の1つ、カナダも例外ではありません。エリザベス女王の死去にあたってトルドー首相は「哀悼の意」を表明しましたが(写真右)、市民の英王室離れは進んでいます。 4月に行われた世論調査では、王室から離脱する国の動きを支持する人が58%、「カナダも離れるべきだ」とした人が51%にのぼりました(同記事)
BLMはじめ、人権・平等を求める運動の広がりとともに、英王室から離脱して共和国へ移行する旧植民地国が増えていることは、きわめて重要な世界の趨勢です。
日本の皇室は英王室ととりわけ深い関係にあります(6月13、14日のブログ参照)。英王室が植民地支配の歴史と切っても切れない関係にあるように、明治以降の天皇制も侵略戦争・植民地支配と不可分の関係です。
エリザベス女王の死去によって、英国内とともに他の「14カ国」でも王室離れが加速するとみられています。それは君主制が人権・平等の対極にあるからです。
これら「15カ国」の動きを拱手傍観するのではなく、日本でも人権・平等の視点から天皇制の是非を抜本的に問い直すことが、私たち日本人の責務です。