フォークリフトバッテリーの修理とはいったいどんなことをするのか興味ありませんか。
今日は少し長めにフォークリフトバッテリー修理のプロが行う作業をご説明しようと思います。
 

まずここで、押さえておかなければならないことは、フォークリフトバッテリーの仕組みです。
フォークリフトバッテリーは、2Vの単セルとよばれるバッテリーを連結して大きな電力パワーを出しています。
その一例として、48Vのバッテリーを例にとって説明します。
48Vのバッテリーの場合は、2Vの単セルバッテリーを24本連結して48Vのバッテリーに仕上げています。
フォークリフトのバッテリーをよく知る人には当たり前のことですが、いちおう確認しておきます。

さてお話をするための項目は、次のようにしましょう。  

①フォークリフトバッテリーを前にして行う基本的な点検業務。
②フォークリフトバッテリーの放電レベルをテストしてみる。
③単セル交換をして、部分的改善を行う。
④メンテナンスを行う。



ではこの講座を始めることにします。
①フォークリフトバッテリーを前にして行う基本的な点検業務。

フォークリフトバッテリーを点検する時に必ず確認するのが、電圧測定、比重測定です。
電圧測定とは、48Vバッテリー全体の電圧を測ります。
テスターとよばれる電圧測定機で現状の電圧を測ります。
この時の測定した電圧の数値で、このバッテリーがどの程度パワーダウンしているかが大まかにわかります。
さらには2Vの単セルバッテリー1本づつの電圧も測ります。
なぜ1本づつの単セルバッテリーの電圧を測るかといいますと、24本の単セルバッテリーの中で極端に出力が落ちているものはないかを探すためです。
フォークリフトバッテリーの中に1本でも駄目な単セルがあれば、全体に大きく影響をおよぼすからです。
この電圧測定で簡単にフォークリフトバッテリー全体に悪影響を与えている単セルバッテリーをみつけだすことができます。
でもそれだけではまだ不十分です。
その次は、単セルバッテリーそれぞれ24本のバッテリー液の比重測定を測定するのです。

ここで知っておいて欲しい原理があります。
それは鉛蓄電池の原理です。

フォークリフトバッテリーの電池は鉛蓄電池です。
放電して電池がなくなれば、充電すれば、再び電池は回復される。
放電と蓄電を何度も繰り返すことができるバッテリーであることです。
であるならば、このフォークリフトの単セルバッテリーは永遠に使用できるということになりますが、それは違います。
なぜならば、この鉛蓄電池、つまりフォークリフトの単セルバッテリーもまた劣化していくからです。

鉛蓄電池について、その原理をものすごく簡単にご説明します。
鉛蓄電池は鉛で作られた電極板と希硫酸という液体の化学反応で電気を放電したり充電することができるのです。

もともと鉛の電極板のマイナス極には電子が付着しています。
放電とはこのマイナス極に付着している電子がプラス極に流れることを放電といい、その流れによって動力パワーが生まれるのです。
このプラスとマイナスの電極板はバッテリー液に浸かっています。
このバッテリー液こそが希硫酸なのです。

マイナス極の電極板からプラス極の電極板に電子が流れるとどうなるでしょう。
マイナス極の電極板の電子は少なくなっていきます。
その電子の少なくなっていくマイナスの電極板にバッテリー液である希硫酸の中の硫酸がくっつきはじめるのです。
では、バッテリー液である希硫酸の中の硫酸がマイナスの電極板にくっつきはじめると、その希硫酸の濃度は下がっていきます。
つまりだんだんと水に近くなっていくのです。
なぜならば、希硫酸は硫酸と水の混合液だからです。

つまり放電すれば、バッテリー液である希硫酸は水に近づいていくことになります。
だからその希硫酸の比重は下がっていくことになるのです。


今度は逆に充電という作業についてはどうでしょう。
充電とは放電の逆をやることです。
プラス極の電極板にやってきた電子をマイナス極の電極板に流してやることです。
マイナスの電極板に電子をため込んでやることです。
つまりこれが充電です。
充電されるとマイナス極の電極板に電子が溜まり、今までマイナスの電極板にくっついていた硫酸はバッテリー液である濃度が低くなった希硫酸の中に戻っていきます。
それによってバッテリー液である希硫酸は濃度が高くなっていくわけです。

ここまでお話しすれば、わかってもらえるとおもいますが単純に言いますと、

放電すればバッテリー液である希硫酸の濃度は下がってしまう。
逆に充電すればその濃度は上がる、つまり標準の濃度に戻るということなのです。


ここで話を比重測定にもどしましょう。

つまりバッテリー液である希硫酸の比重を測定することでわかることは、今現状の単セルバッテリーにはどのくらい電力が残っているか、ないしは放電してしまっているかを推定できるということなのです。

整理しますと、
電圧測定することで、バッテリーパワーの衰えのレベルを確認し、極端に衰えているであろう単セルバッテリーを見極めることができます。

さらに各単セルのバッテリー液の比重測定することで、蓄電状況を確認することができるということです。
その中でも極端に比重が低い単セルバッテリーは、おそらくバッテリー庫内の化学反応が鈍くなってきている証拠であると思われます。


比重測定をするうえにおいて気をつけなければならないのは、バッテリー液の量です。
フォークリフトのバッテリーのメンテナンスとして補水という作業、点検があります。
バッテリー庫内のバッテリー液は、わずかではありますが、減っていきます。
なぜかと言いますと、放電と充電の化学反応を繰り返すなかで、わずかながらに化学反応のなかで、発生する元素が出てくるからです。
それは水素と酸素です。
フォークリフトバッテリーを稼働させたり、充電したりするなかで、わずかながら水素と酸素が気体として発生するからです。
だから定期的な補水の必要性があるのです。
水素と酸素が発生するということは、簡単に言えば水が減るということです。
これを放置するとバッテリー液が減り続け、バッテリー液にしっかりと浸かっているはずの電極板がバッテリー液から表れてきて電極板の劣化が進むからです。

知っておいてほしい知識があります。
単セルバッテリーのことです。
新品だからといって、どの単セルバッテリーも同じかといったら、そうではありません。
それぞれに個体差というものがあります。
これは加工製品である限り、どの単セルバッテリーもコピーしたがごとく完璧に同じレベルである製品ではないということです。

つまりここで言いたいことは、フォークリフトバッテリーを構成する単セルバッテリーは、どれも個体差があるので、同じように衰えていかないということです。

つまりフォークリフトの単セルバッテリーは、それぞれに経年劣化してくる時期が早いものもあれば、長持ちするものもあるということなのです。

だから電圧測定や比重測定をして、弱ってきている単セルバッテリーを見つけ出すことが必要となってくるのです。
その弱っている単セルバッテリーこそが、フォークリフトバッテリー全体に悪影響を与え、パワーダウンさせているのです。

電圧測定と比重測定で、パワーダウンの原因になっている各単セルバッテリーが判明しました。
しかしながらどれくらいのレベルで経年劣化してきているのかをこれだけでは具体的に知るために次の作業に入ります。

②フォークリフトバッテリーの放電レベルをテストしてみる。

今、電圧測定、比重測定の点検を終え、各単セルバッテリーの状態を確認しましたが、次に本来フォークリフトを稼動させた時、どれくらいのパワーがあるのかを数値で確認してみる必要があります。
まずはこのフォークリフトバッテリーを従来の方法で満充電してみます。
その状態から放電テストをしてみるのです。
フォークリフトからバッテリーコードを取り外して、放電器につなげます。
そして放電。

フォークリフトバッテリーは、5時間稼働できるということを基本に作られています。
これを5時間率といいます。
5時間率とは、満充電のバッテリーを放電させて、5時間後にバッテリー電圧が特定のレベルに降下した時までの総放電電流をバッテリー容量とする表し方です。

よって新品のバッテリーは5時間放電が可能です。
しかし経年劣化しているバッテリーは、そこまで電圧がもたないのです。
その電圧が降下した時間を計測するのが、放電テストなのです。

この放電テストによって、このバッテリーの放電力がわかります。
新品バッテリーを100レベルとすると、80%とか、70%とかというふうにレベルを把握できます。

つまりフォークリフトバッテリーの修理の基準として、この放電力をお客様が快適に稼働できるある一定の基準までアップしてあげることなのです。

次に修理作業にはいります。
①のフォークリフトバッテリーを前にして行う基本的な点検業務でおこなった電圧測定と比重測定で判明した極端な劣化が見られる単セルバッテリーは、放電テストをしてみてもおそらく電圧が降下するのが早いはずです。

電圧測定、比重測定、放電テストの3つの測定をすれば、パワーダウンの原因となっている単セルバッテリーを見つけ出すことは容易です。
では、その劣化のひどい単セルバッテリーを優良な単セルバッテリーと交換しましょう。

③単セル交換をして、部分的改善を行う。

単セル交換を行うにあたって、肝心なことは、単セルバッテリーを連結している鉛のセルコネクターを外すことです。
鉛のセルコネクターは、溶接で連結されています。
それを外す方法は、ホルソーとよばれる特殊な部品を使ってバッテリーの電極がきれいな形で残るようにして外します。
この作業だけでも完璧にこなせる業者は少ないです。

さらに次は、鉛のセルコネクターを外した劣化単セルバッテリーを鉄缶から引き抜く作業です。
単セルバッテリー1本といっても自動車の起動用バッテリーと違って、かなり大きなサイズであり、重量もあります。
この作業にも特殊な器具または、道具が必要になってきます。

次に劣化した単セルバッテリーと交換で優良な交換可能な単セルバッテリーを用意する必要があります。

ではこの優良な単セルバッテリーとは、どういうものなのでしょうか。
新品の単セルバッテリーでもかまいませんが、それでは適切ではありません。

なぜかと言いますと、
フォークリフトバッテリー全体を構成している各単セルバッテリーは、どれも同じレベルのものであることがベストです。
それによってバランスのとれた良好なバッテリーの連結が可能になってくるからです。

だから同じレベルに近いものを交換すべきなのです。
この同じレベルの中古単セルバッテリーを用意することが、修理をよりレベルの高いものにしていくポイントなのです。
つまり中古の単セルバッテリーの在庫が豊富に持っているかがフォークリフトバッテリー修理業者としての信頼性とレベルの高さにつながっていくのです。

では適切な中古単セルバッテリーがなかった場合、どうするのか。

それは新品の単セルバッテリーを使うしかありません。
新品ですからもちろん価格は高額になってきます。
修理するということは、技術の高さも必要ですが、よりリーズナブルな価格で作業をすることをも期待されます。
だから中古であるけれど、優良なものを用意すべきなのです。

話を続けましょう。
とにかく交換に最適な単セルバッテリーに交換したとします。
次にやることは、鉛のセルコネクターで、単セルバッテリー同士を連結させることです。
つまり鉛溶接です。
単セルバッテリーの庫内には希硫酸というバッテリー液が入っているので、火を使う溶接は慎重にならざるおえません。
もちろん火の飛び散りを防ぐための準備も怠りなく施す必要があります。
この溶接で修理の差がでます。
下手な溶接は、仕上がりがいびつです。
ひと目見ただけで、単セル交換したなということがわかります。
上手な溶接は、まったく新品同様な仕上がりです。
これは僕にとっては、当たり前のことなのですが。

そして単セル交換が、終わります。
これがフォークリフトバッテリーの修理なのです。
しかしながらこれだけでは終わらないところが、僕のプロフェッショナルとしてのこだわりなのです。

④メンテナンスを行なう。

せっかく修理をしたのですから、すべてにおいて、よりバッテリーを快適にしてあげたいと思うのです。

バッテリーを快適な状態にするとは、単セル交換した以外の単セルバッテリー、つまり修理を施していない単セルバッテリーもメンテナンスしてあげることです。

これは納期に余裕がある場合に限るのですが、メンテナンス充電をかけてあげることです。
そうすることで、そのバッテリーはさらに放電力を高めることができます。
そのやり方を解説します。

まず充電は微充電で行います。
本当にわずかな量の電流で時間をかけて充電するのです。

ある程度年数使用している単セルバッテリーの電極板は、柔軟性がなくなってきています。
つまり充電のための化学反応が鈍くなっているのです。
よって十分な充電を試みるのであれば、わずかな電流で時間と日にちをかけて充電することです。
これは数年使用している電極板は電子を受取り、硫酸をバッテリー液の中に手放すという化学反応をスムーズに行わせるためです。
なぜならば、電極板に電子が流れ込んできたら、その鉛の電極板にしっかりと電子を付着させなければならないからです。
その時、一度に大量の電流を流したのでは、多くの電子を取りこぼしてしまうからです。
辛抱強く時間と日にちをかけて充電しましょう。

さらに効果的な方法として、パルス電流も同時に流すことです。
パルス電流は、単セルバッテリーの庫内の電極板に付着した硫酸の結晶をふるい落とすことができるからです。
この電極板に付着した硫酸の結晶をサルフェーションといいます。
フォークリフトバッテリーを1日稼動し、かなりの電力を使った場合、そのまま放置しておくと、長い年月の間に電極板に付着した硫酸が結晶化して、その電極板の周りを覆ってしまい通電を阻害してしまうことがあります。
そのサルフェーションをパルス電流が電極板を振動させて、ふるい落とすのです。
このようにして充電すると、電極板に十分な電子が充電できます。
そしてもう一度放電テストをしてみるのです。
以前にもまして放電力が上がっていることでしょう。
この微充電とパルス電流を同時に流し完璧に満充電し、また放電テストを行なう。
この作業を2〜3回繰り返すと、かなり各単セルバッテリーの充電と放電の能力が上がっていくことでしょう。
ここまで修理作業とメンテナンスをすれば、フォークリフトバッテリーは驚くほどよみがえることでしょう。

しかしながらここで認識しておいてもらいたいことがあります。
これだけ高度な修理作業とメンテナンスをおこなったから、もうバッテリーは新品同様になったと思ってもらっては困ります。
そうではなくてバッテリーの延命ができたという認識にしておいてもらいたいのです。
なぜならば、修理をしたバッテリーの電極板は、新品同様に戻っているわけではないからです。

新品のフォークリフトバッテリーの寿命は使い方や環境によって違いますが、標準的な使い方であれば、4〜6年といったところです。
それぐらいの年数、稼働させると、やはりバッテリーもパワーが落ちてきたり、故障をしたりします。
そこで修理をすることによってバッテリーは再びそのパワーを回復しますが、またさらに5年前後は大丈夫だということではないということです。
これは説明しなくても理解してもらえると思います。
しかしながら次またパワーダウンや故障が起こる時期は予想できません。
僕の修理ならば、お客様に満足していただける稼動力になると思います。
しかし僕の経験から言わせてもらいますと、びっくりするぐらい延命し、稼動しているバッテリーもあります。
また逆に意外と速かったなぁと思うものもあります。
しかし安心してください。
そうなってしまっても、また修理をすればいいのです。

本当に使えなくなるまで、修理させてもらいます。
でももう新品バッテリーに交換してもらったほうがいい時期にきていると判断したら、そのようにアドバイスさせてもらいます。

 

充電してもフォークリフトバッテリーの電池の減りが早い | フォークリフトバッテリー修理の難題解決ブログ (ameblo.jp)

 

フォークリフトが突然止まってしまいました。 | フォークリフトバッテリー修理の難題解決ブログ (ameblo.jp)

 

フォークリフトの使用頻度が少ないためバッテリーあがりをすぐにまねいてしまいます。 | フォークリフトバッテリー修理の難題解決ブログ (ameblo.jp)