【下山進=2050年のメディア第88回】出版界『今そこにある危機』 元経産大臣齋藤健は文化安全保障を主張する | AERA DIGITAL(アエラデジタル)

 

出版界の「今そこにある危機」という言葉に、改めて考えさせられた。特に印象に残ったのは、再販制度が「どんな流通の不便な地方に住んでいようとも、平等に多様な情報にアクセスできることが民主主義を支えている」という考えのもとで維持されてきた、という点だ。恥ずかしながら、私はこれまで再販制度を、出版社や書店を守るための仕組みという側面から捉えることが多く、このような「情報への平等なアクセス」という民主主義の観点が根底にあることを知り、少し驚いた。

 

考えてみれば、情報は教育とよく似ている。生まれた場所や住んでいる地域、経済的な環境によって、触れられる情報に大きな差が生じてはいけない。教育が誰に対しても公平に提供されるべきものであるように、多様な本や情報にアクセスできる環境もまた、社会の基盤として維持される必要がある。

だからこそ、出版流通の危機は、単に「本が届きにくくなる」という業界の問題ではない。地方の書店が減り、物流網が細り、結果として読者が多様な情報に触れる機会まで失われるとすれば、それは文化だけでなく民主主義そのものにも関わる問題なのだと思う。再販制度の是非を考えるときも、単なる経済論だけではなく、「情報を公平に届ける」という役割を改めて考える必要がある。