昨年12月のこと、彼女と六本木の「国立新美術館」のレストラン、『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』で過ごす楽しい夜の続き。
アントレはフランス産フォアグラのポワレ、ソース・フランボワーズ、黒胡椒と胡桃風味のインゲン豆添え。
『ポール・ボキューズ』の料理にはフォアグラは必須アイテム。
コロナの頃は欧州での鳥インフルエンザの蔓延もあり、フォアグラの輸入が止まり食べることが出来なかった。
今はフランス産の上質のフォアグラが入荷するようになり、『ポール・ボキューズ』でもこの料理が復活している。
フォアグラの上にはキルシュのソース、下にはポルトのソース、左右にはフランボワーズのソース。
口の中でとろけるフォアグラが美味い。
フォアグラに合わせるワインは、ロワール、ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ地区のドメーヌ・ド・レキュが造る、オートグナイス、MMXX(2020年)。
オートグナイスの意味は、変成岩。
シトラス系の香り、果実味は甘みを感じさせず、硬質なミネラル、シャープな酸を持ち、塩味も感じる。
エチケットの絵は、ブリュッセルのノートルダム・デュ・サブロン教会のステンドグラス。
発酵には自然酵母を用い、コンクリートタンクで12~15ヶ月間シュール・リーで熟成。
清澄・濾過は行っていない。
ぶどうは、ムロン・ド・ブルゴーニュ(ミュスカデ)。
ぶどう栽培はビオディナミ。
バックラベルには、ユーロリーフ、デメテール、ビオディヴァンのオーガニック認証マークが付いている。
ポワソンは、真鯛のポワレ、オレンジ風味のブールブランソース、トマトのセッシュ。
皮目はパリッと焼かれ、身はジューシー。
真鯛にオレンジ風味のブールブランソースとは面白い組み合わせ。
これが意表を突く美味しさ。
トマトのセッシュはドライトマトのこと。
この酸味が味に良い変化を付けてくれる。
ポワソンに合わせるワインは、ドメーヌ・ルフレーヴ、マコン・ヴェルゼ、2018年。
このエチケットを見て心ときめかないワインラヴァーは居ないはず。
ルフレーヴのワインがあまりに高価となったため、もっと気軽に飲めるワインをとマコン地区のシャルドネを使ったマコン・ヴェルゼを初リリースしたのは2005年。
私も何本も楽しんだが、最近は円安もあって価格は高騰し、気軽に飲めるワインではなくなってしまった。
そんなワインを出してくれた松尾支配人に感謝。
コート・ドールではなくマコンのシャルドネだが、流石ルフレーヴと思わせる上質のシャルドネ。
豊かな果実味と酸のバランスが秀逸で、活き活きとしたミネラルがボディを引き締める。
「美味しい」と彼女。
「二年余り前にポール・ボキューズ銀座でボトルで頼んで飲んだよね」と私。
「そうなの、覚えていない」と彼女。
少し悲しい気分。
その時の記事はこちら。
ヴィアンドは、鴨胸肉のロースト、栗ときのこのフリカッセと根セロリのフラン、赤ワインソース。
鴨にはオレンジなどのフルーツを入れた赤ワインソースが定番だが、今回はシンプルに赤ワインソース。
オレンジのソースはポワソンに使われていた。
フリカッセは白い煮込み料理のことだが、これは茶色。
でも生クリームが使われているのだと思う。
根セロリのフランがふわふわで美味しい。
ヴィアンドに合わせるのはボルドーの赤。
シャンパーニュ、アルザスの白、ブルゴーニュの白をグラスで飲んだあとの赤は、彼女がフルボトルは無理と言うのでハーフボトルを抜栓。
ボルドー、サン・テステフのシャトー・トロンコワ・ラランド、2018年。
これはまた、松尾支配人が素晴らしいワインを選んでくれた。
濃いガーネット。
ブラックチェリーやカシスなど、黒果実の香り。
果実の凝縮感、強いタンニン、綺麗な酸はまだまだ熟成のポテンシャルを感じさせる。
シガー、黒い土、錆びた鉄などの複雑なニュアンスを持ち、余韻はとても長い。
ぶどうは、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルド。
鴨肉にトロンコワ・ラランドは強すぎるかと思ったが、しっかりとした赤ワインソースが使われ、肉自体も旨味が凝縮されているので、ワインに負けず上手く調和してくれる。
彼女と過ごす、「国立新美術館」での素敵な夜は続きます。