「そういえば、冬休みに入ったので最近部屋の掃除をしたり部屋をリフォームしてみたりしたんですよ...。断捨離でいろんなもの捨てたのになんかもっと汚くなった気がします。」
お疲れ様です、本日は「第7実験室」のレビューをいたします。2002年、cali≠gariがまさかのメジャーデビュー。メジャーデビューするバンドといえば、上から口出されて、自分のカラーを封印してしまうバンドが多くいる中、cali≠gariは自分達らしさを崩すことは無く、メジャーデビューシングルとなった「第7実験室 予告編~マグロ~」では密室系の意地をこれでもかと注ぎ込んだド派手なシングルとなり、続けて出されたメジャー初のアルバムとなる今作は、今作はcali≠gari最後となる「実験室」となります。果たしてどのような世界が広がっているのでしょうか?
アルバム「第7実験室」のポイント
・メジャーデビューしましたが、レコード会社からのメジャーの洗礼に負けずにcali≠gariは自我を貫き通しました。実験室シリーズが継続され、「入口」「出口」「ドラマ」もちゃんと収録。あのメジャーデビューシングルを含めた密室系っぽさを存分に打ち出した楽曲も多く収録されており、密室系というひとつのジャンルを生み出したバンドがメジャーへ殴り込みを掛けます。しかしながら、音楽が否定されることこそ無かったものの、歌詞が規制されたりそれにキレた抗議の1曲などブッ込んだりなど地味にメジャーの洗礼をかすり傷程度で受けてしまっているのも事実です。
・ジャケットはなんと便器!まさに密室系感漂うジャケット写真だと思います。一見するとどの楽曲のことを指しているか分かりませんが、このアルバムを最後まで聴くと分かります。
・そして石井秀仁は今回5曲の作曲を担当。青様の曲も5曲なので、ついに2人の曲数が並びました。瞬く間にメインコンポーサーになった秀仁は前作「カリガリじゃない」でみせたギターロックを中心に新たな嗜好を活かした楽曲も顔を見せ、様々な楽曲を提供しています。このバランスの良さがもしかしたらメジャーの先例をかすり傷でかわせた大きな理由なのかもしれません。
それでは参りましょう!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(青→シングル曲 黒→アルバム曲)
1.「第7実験室『入口』」
この世界に入るために必要な重いドアが開く効果音です。
2.「ハイカラ・殺伐・ハイソ・絶賛」(作詞:石井秀仁 作曲:石井秀仁)
今やcali≠gariの代表曲。勿論ファンから大人気。秀仁もリズムギターを担当して、激しいカッティングを楽しめる正統派のギターロックナンバー。エネルギッシュにスタートダッシュを切り、このアルバムは幕を上げます。「NUMBER GIRL」を意識したサウンドに仕上げたら、同時期の新曲にて本人達も似たような楽曲をアルバムに収録してリリースしてしまうというという珍現象も発生したとのこと(笑)。
また本来ならば、この曲をメジャーデビューシングルにしようとメンバーは動いていたそうですが、レコード会社側が「メジャーデビューはリーダーの曲じゃないと。」とのことで「マグロ」でデビューしたというエピソードも存在します。
ライブでも定番曲となっていて、「ハイカラ!」「殺伐!」「ハイソ!」「絶賛!」とコールアンドレスポンスを楽しむのが特徴ですが、2011年にリメイク版となる「ニュウVer」が発表されて以降はそちらの音源で演奏されています。
3.「まほらば憂愁」(作詞:石井秀仁 作曲:石井秀仁)
ツタツタビートにオルガン系統の音色を打ち込みを織り込んだ疾走系ナンバー。オルガンの使い方がSOPHIAの「ゴキゲン鳥」を思い出させるシーケンスのような使い方をしているのが印象的です。あくまでバンドサウンドを中心として展開していくのですが、中盤以降ではジャジーなゾーンを用意して洒落た雰囲気が飛び出すのが面白いですね。
歌詞は太宰治が川端康成に宛てた手紙を流用したかったらしいのですが、引用許可が降りず差し替え。秀仁が影響を受けた80年代のバンドの名前や引用許可が降りなくて差し替えたことに関するモヤモヤを自虐ネタとして綴ります。
尚、ベストアルバム「グッド、バイ」に「まほらばぶる〜す」として、差し替え前のバージョンが収録されました。
4.「マグロ」(作詞:桜井青 作曲:桜井青)
1stシングル。cali≠gariの衝撃のメジャーデビュー曲。メジャーデビューしてメジャーからの洗礼をスラリとかわして更に自身の電波カラーが濃くしたお祭り騒ぎナンバーを放り込んできました。
鳴り響く太鼓の音と笛の音、一見するとコミックソングとも思えてしまうコミカルさと、メンバー全員の掛け声と青江のソロパートも登場する大盤振る舞いさが特徴ですね。MVも2種類存在しています。
「ストップ!ザ・5月病ソング!キャンペーン応援ソング」とキャッチコピーがつけられたこの曲。収録時間も「4:44」ということで、もう勘づいた方もいるでしょう。そう、タイトルの「マグロ」は業界用語の方だったという衝撃、歌詞も5月病にかかってしまった人間が人身事故を起こしてしまったという攻めた内容となっています。それを知った上で聴くとサビの「アカくなってバラになって」「アレになってゴミになった」の生々しさに震えます。また、印象的な「ぐるぐるぐるぐる」の部分は社会の歯車となって働き回る姿を映していると聞いたことがあります。
「東京ロゼヲモンド倶楽部」を規制するんだったら絶対こっちも規制されたはずなのに意外と規制する基準は曖昧なんですかね。
5.「ドラマ『黒い球体』」
今回は特別番組「スターボーリングすみれ編」をお送り。オナン・スペルマーメイドと桜井青江がボーリング対決をするという内容。優勝賞品は「権田原橋像(19)」をお持ち帰り。フォトメとか時代を感じますよねぇ。しかし彼女達を2人にしたらヤバいことが起こらない筈もなく…、そこからはお馴染みの展開へ(笑)。このカオスっぷりをお楽しみにください。
6.「黒い球体」(作詞:石井秀仁 作曲:村井研次郞)
激しく飛び出したかと思いきや、その後はカッコよく進行する研次郎作曲のロックンロールナンバー、年代的に言えば、横浜銀蝿、嶋大輔、アラジンといった80年代前半のツッパリロックンロールでしょうか、地味に研次郞の昭和曲も年代を重ねているのが面白いです。
基本的にはバンドサウンド中心ですが、バックでは地味にシンセサウンドも彩りを与えています。特筆すべき点は、青様のギターが全体的に装飾に徹している為、本来バッキングギターが担当するべき部分をリズム隊でカバーしている部分です。研次郞の鬼ヤバベースとそれにしっかりと答える誠のドラム、2人の息ピッタリのプレイに注目です。
歌詞はドラマから引き続き「ボーリング」の世界を、韻を踏んだり、言葉遊びを使ったりと、秀仁ワールド全開で表現。随所に現れる感情表現の「ナッハッハ」って完全にタケちゃんマンじゃないですか笑
7.「きりきりまいむ」(作詞:石井秀仁 作曲:武井誠)
マリオをBGMをオマージュしたイントロからサイケな世界観へ突入。今回のまっこは「カリガリじゃない」のソロの経験を活かしてか、打ち込み全開のぶっとびテクノナンバーを持ってきました。歌詞は人気になってキャパが溢れ出したことに興奮してる事を綴ったのでしょうか?、サビのきりきりまいむの連呼がこの曲の核だと思うので、特に深い意味はないのでしょう。それにしても、秀仁の歌い方がキマってますねぇ笑。
この曲を語る上で必ず触れないといけないのが、某イケナイロコローションバンド(自主規制)にパクられ疑惑が出たこと。その為、予期せぬ理由で大きな知名度を得た楽曲でもあるのですが、普通パクるならインパクト絶大だったデビュー曲の「マグロ」や次のシングル「舌先3分サイズ」といった有名曲を狙うところなのに、何故かこの曲なのがツボります。某バンドがご丁寧に「第7実験室」を購入して、正座しながら全曲聴いた上で、「1度耳にしたら離れない!」とこの曲にスポットを当てたってシーンを想像すると本当に勉強熱心で面白いですね。
(この曲もイントロにマリオを持ってきてるし、後に向こうもドクターマリオパクリ疑惑が起きているので、ミュージシャンにとってマリオをBGMはパクりたくなるなるぐらい惹かれるものがあるという研究結果が出たのは何気に深いです。Bダッシュ!)
8.「デジタブルニウニウ」(作詞:石井秀仁 作曲:石井秀仁)
研次郞、まっこ曲と来て、再び秀仁の曲。そして実はここが今作に於けるひとつの重要なポイント。いよいよ秀仁がもう一つの嗜好でもあるニューウェーブのカラーを本格的に出し始めたナンバーです。細部にわたって作り込まれた打ち込みワールドが展開され、ヴォーカルも派手派手に加工されていたりと前作「フラフラスキップ」よりもさらにデジタル要素を追求している感じがします。以降、この手のサウンドはこれからのcali≠gariに於ける一つの大きな音楽性となります。
歌詞は秀仁ワールド全開でわけわかめ状態になっていますが、ワードから分析してみるとネットでの繋がりを示唆するようなワードが多いです。当時「2ちゃんねる」を始めとしたネット掲示板、そしてそこから「X」「インスタ」といった見えない人々と繋がることに対する警告とみています。
9.「体内騒音あやなしアンチ苦笑」(作曲:石井秀仁)
タイトルからして、前作「第6実験室」の秀仁のキレッキレな皮肉が炸裂する曲が来ると思わせておいて現れたのは、前曲同様のニューウェーブ全開で、の浮遊感のあるインストゥルメンタルとしう全てにギャップが生させるこのナンバー。全編打ち込みですで回想するような世界観が拡がりつつも、メインを務める木琴の音色は次に来るジャジーな曲達の世界観の土台を作っている気がします。
このアンビエントな世界を抜けていよいよ、アルバムは夜の世界へ。
10.「わずらい」(作詞:石井秀仁 作曲:石井秀仁)
「イギーポップのパッセンジャーじゃねぇか!」と困惑した人がかなり多いであろうこのナンバー、曰く、コードをいじった結果たまたま似てしまったとのことですが、コレよく規制食らわなかったなレベルですよね笑。イントロの木琴を筆頭にオルガンがイイ味出すシャレオツでジャジーなアレンジに仕上げているのが、ウマいなぁと。この曲聴いて「スーパーマリオDS」の「ルイージのカジノ」を思い出してしまいました。
歌詞は老けてどんどん落ちぶれて言ってしまうかもしれなけど、それでも僕たちを応戦してくれますか?というファンに向けてのメッセージです。前作『第6実験室』では「ギャラクシー」や「フラフラスキップ」でファン及びこの界隈のバンギャギャ男をボロクソに皮肉っていましたが、僅か1年でこの成長っぷりですよ笑。
そして今年、まさにこの時期のアルバムを演奏する「30=6+7+8+9」が開催されていますが(自分も行きます!)、SOLD公演が複数出るほどの大盛り上がりっぷりを見せています。これがこの曲に対する答えなのかも知れません。愛されていますよね...!!
11.「東京ロゼヲモンド倶楽部」(作詞:桜井青 作曲:桜井青)
ここからは、青様のターン。この曲もかなり人気がある楽曲で自分も大好きな曲。イントロの「さくらさくら」のテルミン(なんと青様演奏)で、完全なる密室系らしい雰囲気を作り上げ、そこから超本格ジャズサウンドに突入。研次郞はアップライトベースを演奏し、バンドサウンド以外にもピアノやサックスも華やかに彩ることにより、前曲とはまた異なる洒落た雰囲気を生みだしています。この曲を聴いた妹も言っていましたが、「新宿」という都会の雰囲気をそのまま曲にしたような世界観です。
歌詞は新宿の歌舞伎町或いは2丁目にあると思われる会員制バー「東京ロゼヲモンド倶楽部」のどこか壊れた会員さんを紹介していくというもの。少女から老人まで幅広い年代の会員さんがいるようですよ!
サビ以外ボソボソと言っていて聴き取りにくく、歌詞カードを調べてみたら「ハイボク」の文字が。どうやらレコード会社によって規制されてしまったようです。後のリメイクの音源と比較してみても、やはりこのボソボソ具合は規制故の対応なのでしょう。規制されてしまった歌詞は後にHPで公開、そしてミニアルバム「ABC」でリメイクされた際に晴れて歌詞カードに記載されました。
このバーが、もしも実在するのであれば…、是非とも私も「東京ロゼヲモンド倶楽部」の会員になりたいものですねぇ…。
12.「空も笑ってる」(作詞:桜井青 作曲:桜井青)
青様ボーカル曲。
青様がボーカルを担当し、秀仁はギターを担当するという反則編成でお送りするこのパンクロックナンバー。青様の歌い方はしゃがれ声とシャウトを強調していて、かな~りロックにキメているのがツボです。いつもの青様の声と比べると完全に喉をやってしまうような歌い方ですが、これがパンクロックな楽曲にはまっているのですよね。
歌詞は一見すると当時流行していた青春パンク意識したようなシチュエーションのように思えますが、青様が作詞を手がけると少しどころかかなり独特になってしまうのが不思議です。改めて青様の作詞に於ける言葉の選び方の巧みさを堪能することができます。
13.「東京病」(作詞:桜井青 作曲:桜井青)
そしてアルバムのラストを飾るのは青様の名曲。バンドサウンドのアコースティックな部分をヒューチャーした歌謡ナンバー。やさしさを強調したアコースティックなバンドサウンドに暖かさを強調したエレピが重なりあうことによって生まれる世界観、サビも切ないながらもしっかりと力強く昇ってゆく力強いメロディラインが好きなんですよね。
楽曲から連想されるのは、育った地元の田舎の風景。しかし上京して都会人として生活していくうちに田舎の友達との思い出等も全て捨ててしまったという状況がやはりリアリティありすぎて沁みます。しかしながら段ボールにしまいっぱなしの高校時代の教科書等は捨てられずにいるという心の拠り所、主人公の本当の本音など色々なことが考察できてしまうのが深いんですよね。
14.「第7実験室『出口』」
この世界に出るために必要な重いドアが開く効果音です。
15.「ーー」(作詞:桜井青 作曲:桜井青)
1分以上の無音を挟んで現れたのは「東京ロゼヲモンド倶楽部」の歌詞が載せることが出来なかった恨みを綴り、ビ◯ターをぶっ叩く衝撃の隠しトラック。シャッフルビートに乗せてキメを意識した力強いバンドサウンドが生み出す破壊力。そこに先ほど紹介した強烈な恨み節全開の歌詞を乗っけて大暴走する楽曲です。しかも終わったと思いきやまたイントロが流れ出して中途半端なところでぶった切られるというわけわかめな展開も織り込んでいます。
後の「カリガリの世界」にて「失禁」と命名、アルバム「1」では再録されて、正式にカリガリの数ある電波ソングの内の一曲に仲間入りを果たし、勿論ライブでも盛り上がるこのナンバー。例の規制がなければこの曲が存在しなかったという事実を踏まえると、もしかしたら「東京ロゼヲモンド倶楽部」の規制は私たちとっては感謝すべき規制だったのかもしれませんね。
しかし、このアルバムのトイレのジャケットを見てしまうと、もしかしたらこの曲こそがこのアルバムの核なのかもしれないと思ってしまう今日この頃。研次郎のベースにはエフェクターが掛かっており、ずっしりしつつも少しぐっちゃりとした音に変貌しているのですが、その音でチョッパーをかまされてしまうと、もうお腹下した日の脱◯音にしか聴こえない…笑。
いかがだったでしょうか。メジャーの先例なんてなんのその、密室系らしさ全開のアングラな空間が広がっていましたね。「実験室」最後と言うことで、大まかな路線は継承しつつも第7期としてこれまでとは別ベクトルでのアングラを極めた感じがします。メジャーの先例を受けてしまったものの、あの規制が無ければ「失禁」が生まれなかったということも大きく、規制でさえも自分たちのカラーの一種として染め上げてしまったのはcali≠gariらしいですよね。
そしてメインコンポーザーとなった秀仁の楽曲の世界観も多様で、更には前作から成長したために歌詞のヴァリエーションも多くなっており、楽しめました。次回のアルバムにもなる「8」では秀仁はプロデューサーにもなるあの方の力も借りてさらなる楽曲を生み出していきます。
そんな次回は「第2実験室-改訂版-」のレビューです。再教育では触れられなかった「第2実験室」の楽曲がここで第7期によって蘇ります。今回もありがとうございました、次回もよろしくお願いします。