Shionの日々詩音

表現者、Shionのブログ
日々心に描く事
時に散文を…そして時に物語を綴る

the Crime of Roses…



人は皆、生まれながらに罪を背負っている

心に天使と悪魔を共存させながら

醜くも美しい世界で彷徨い続ける



ex-Clef Doll Shion


自らの生まれて来た意味を求め

ありとあらゆる表現の軌跡をここに綴ろう…



生きている限り、君の傍で




≪物語創作音楽集団 Clef Dollへ愛を込めて≫
閉じられた物語たちをもう一度。ここに綴る。

短篇小説
1, たった一つの記憶

2, 月の抱擁【ヴァンパイア・ストーリー】

3, 月下の太陽に接吻て【ヴァンパイア・ストーリー】

長篇小説 『片翼の羽根』
第一部プロローグ

第1部第一章①

第1部第一章②

第1部第一章③

第1部第一章④

第1部第一章⑤

第1部第一章⑥

第1部第一章-interlude01-

第1部第二章①NEW

第1部第二章②NEW


テーマ:

ジェスターの話は、とても簡潔なものだった。


「要するに、ですよ。この国には打倒ラメク政権を目論むひっじょおに不届きな国民たちが今も一定数いるわけですよ」


奇妙に加工された声でジェスターはそう語る。


「あれだけ死神に睨まれているっていうのに、まだまだ水面下でこの国を諦めていない人たちは存在するわけです。まぁまぁそりゃあ、そうでしょうよ。先の天変地異でだいぶ人口は減ったとは言え、一国の国民全部を取り締まるなんて、あの少ない兵隊の数じゃあまずムリムリ。まぁ、それでもほとんどの国民が総統陛下にバッチリ惚れ込んでる今では隠れ潜むしかないんですけどね」


誰も何も言わず、何も言えないままに3Dで照射されたジェスターの姿を見つめていた。一人一人の目を覗き込むように動き回りながら、ジェスターは続ける。


「そーんな不届きなロックンローラーたちにワタシはこうして声を掛けて回って、武器を調達したりしてあげてるわけです。ねぇ?まさにメシアでしょう。この荒れ果てた国に舞い降りた救世主というわけですよ、ワタシは」


そうして、アルノルトの横へと寄り、手を肩に回すように伸ばす。


「とと、ちゃんと良い感じに映ってるかな?ねぇ、アルノルトくん?」


アルノルトも何も言わない。ただ、苦虫を噛み潰したような顔でじっと押し黙っていた。少なくとも、ここにいる者たちには、あまり見せることのない表情だ。


「んん、怖いねぇ。まぁ、そんなわけで、アルノルトくんからもう聞いていると思うけど、君たちにもこの革命に参加してもらおうと思ってるわけです。そのために練習用の銃も持たせた。ちゃんと練習してますー?当たらない銃なんて、オモチャと変わらないからね、ちゃんと練習してください」


皆それぞれに思うところがある。

戸惑い、疑い、恐れ…それぞれがそれぞれのその感情をその顔にありありと浮かべていた。


「ふーむ、何だか納得してないコたちもいるみたいだなぁ。もしかして疑われてますー?まぁ、誤解を受けやすい性格なんでねぇ、知っております、知っております」


ジェスターは悪びれる様子もなく、手を叩いてみせた。その音もまた加工され、グニャリグニャリと歪んだ音を響かせる。


「でもさ、可愛い可愛い12人のゲスト様、君たちもまさかたったそれだけの数であの親衛隊に勝てるなんて思っちゃいなかったでしょ?当たり前だよねー、キミタチちょっと自分を買い被りすぎじゃないです?銃もまともに撃てないお子さま12人でお国に勝てるとでも?すぐに死んじゃいますよ、君たちなんて。平和ぼけはやめてくださいね」


挑発するような口調。馬鹿にしているというわけでもなく、何を当たり前のことを、とでも言うようにそう言った。

熱に浮かされた少年たちにも、それがわかっていなかったわけではない。しかし、いざ正面切ってそう言われると、かすかな苛立ちを感じてしまうのもまた抑え難かった。彼らは本当にジェスターの言う通り、本来ならば平和ぼけしたままで生きていけたはずの子どもたちでしかないのだ。


「まぁ、反乱だとか革命なんてそんなもんです。実際、この国でくすぶってる皆々様集めたとこでそりゃ変わらないですよ。ま、親衛隊だって数は充分じゃない。だからこれ、正直戦争ですらないんです。そこに勝機があるのかどうなのか、てね。そーいうわけでぇ、徐々に作戦を進めてもらいますよ、キミタチにも。ワタシはそのサポート。ちなみにワタシはあくまでサポートです。実際には動かないし、本番も当然参加しませんよ。必要なモンは用意してあげますけどね」


そうして、ジェスターは訝しげな表情を浮かべたカイザーへと向きなおる。


「んん、さすが冷静なカイザーくん、不服そうだねぇ。しかし考えてみてよ。ワタシは全然この国の在り方に不満を持っちゃいないんだ。ラメク総統陛下にも不満もないし、親衛隊に関してもご勝手にどーぞ、という感じ。それなのにキミタチに武器を用意してあげちゃってる親切な親切なメシア様なわけだよ。だから革命に関してはやりたいコたちで勝手にやってください、て話なわけさ」


ジェスターは大袈裟な身振り手振りを交え、頭を大きく振りながらアルノルトへと近づく。


「ちなみに、この国の革命派の方々はこのアルノルトくんに随分期待してるんだよ。国に見捨てられながら強く生きる少年少女のまとめ役。隠れ潜むしかないヒトたちからすると凄い存在なんだろうねぇ。だからある意味、この革命のリーダーはアルノルトくんとも言えるわけさ。ね、その他大勢の少年少女たち」


その他大勢の、とわざとらしく声を大きく出しながらジェスターはクラウスとロルフの間を通り抜ける。


「所詮君らは添え物ってことさ、そこを忘れないようにしてくれ給え」

「俺を担ぎ上げるな」


アルノルトは一歩踏み出し、ジェスターの行く手を遮るように立ちふさがった。


「俺だってみんなと同じだ。銃だって決してうまく扱えるわけじゃない。勝手に担ぎ上げられたって困る。みんな一緒だ。そうやって今までやってきたんだ。ふざけたことを言って俺の仲間たちを馬鹿にするな」


アルノルトはじっとジェスターを睨みつける。歪んだ口笛らしき音が響いた。


「ふふん、ま、ま、良いでしょう。そういうことで。とにかく、革命の準備は着々と進んでおりますよ。表が出るか裏が出るか。決行は政権樹立パレードの日。これはもう決まりです。記念すべき国家の大切な日に、革命の炎は燃えるか消されるか…」

「ちょ、ちょっと待ってよ」


ジェスターが言葉を切った時、エイヒムが声を出した。いつものように大きな声ではなく、その声には些かの焦りが感じられた。


「その日に決行、て、その日は一番警備が厳重になる日じゃないか。参加してる人がどれだけいるか知らないけど、そんな日に攻撃を仕掛けるなんてわざわざ死にに行くようなもんでしょう」


珍しく早口になり、口元を覆ったもじゃもじゃの髭に飛んだ唾を拭いながらエイヒムは言う。

しかしその意見はその焦った口調とは裏腹に至極まっとうなものだ。政権樹立パレードは国を挙げて行われる最大規模のイベントになる。当然ラメク周りの警備は厳重で、親衛隊は何者も寄せ付けない鉄壁を築いている。そんなところに彼らが突撃したところで、1分と保たずに蜂の巣にされるか、捕らえられて翌日の公開処刑を彩るだけだろう。


「ふーむ…。なるほど。確かに確かに。しかしね、キミタチ、まずもって前提条件が違ってますよ。そもそも少年少女の皆さん、キミタチこの革命の目的わかってます?」


ジェスターは呆れたように、しかし心底面白そうに肩を揺らしながら全体を見回す。手元の操作盤をくるくると回し、声色を高くしたり低くしたりしながら、こちらを嘲笑うかのように声を出した。


「あのラメク総統陛下をぶっ殺すってことで良いんだろうがよ」


エイヒムの隣でしかめっ面をしていたマインラートが吐きつけるかのように言い放った。その物騒な物言いに、アンケやエレナはやや顔をしかめる。


「ふーっ」


ジェスターのため息は、加工された音声のせいでやけに長く反響した。エフェクトをかけ過ぎたギターの音のようだ、とエイヒムは場違いな感想を持った。


「あのねぇキミタチ、総統陛下殺してどーすんですか?ご家族の復讐ですか?名も知らぬ国民たちへの手向けですか?意味ない意味ない。全然意味ないですよ、それ。それしたところで国がただただ混乱してまたあの災害後のひどい状態に戻るだけよ。参ったなぁ、アルノルトくん、ちゃんと説明してないの?リーダーでしょ、キミ。こんな短気な子たちなんだからちゃんと説明しないとダメよ、いやホント。そっから説明しなきゃいけないならちゃんと言っておいてくださいよ」


ジェスターは一呼吸起き、それから語調をややゆっくりとしながら喋り出す。


「まず、キミタチの目的はラメク総統陛下暗殺とかじゃあないです。ま、革命が終われば自然とそういう雰囲気にもなるでしょうが、そんなのは後で良いですよ。キミタチの狙いは総統陛下じゃあない。だーから、パレードの日に決行するんです。良いですかぁ、キミタチが狙うのは」

「第三の塔だ」


目を閉じたアルノルトが、ジェスターに被せるように声を出す。奇妙な道化に見入っていた一同の視線が、一斉にアルノルトに注目する。


「俺たちは全員で、第三の塔に攻め込む」

「そうそう、それ、先やっといて欲しかったなぁ」


話の腰を折られたジェスターが、やれやれと言った具合に両手を上に上げて続きを話す。


「そう、狙うのはラメク政権の総本山、第三の塔ですよ。パレードに大多数の警備を取られて、当日のあそこは警備が手薄です。勿論、0であるはずはないですし、向こうもプロですからね。ただ、数で勝負するならこの日だけは勝機がある。キミタチと夢見る革命家の皆さんには、そこを攻めてもらいます。政府関係者もほとんど出払ってるはずです、攻め放題です」


「囚われてる子供たちも、助けられる…」


エレナは、自分でも思いもかけずに呟いてしまったという風に、はっと口を抑える。ジェスターはエレナを一瞥し、小馬鹿にするように鼻を鳴らした。


「ま、それに関してはご自由に。当日そこまでの時間があれば、でーすけどね。どのみち、その日首尾よくいけばこの国、ラメク政権は終わりです」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」


今度は終始無言を貫いていたイェンチがジェスターの言葉を遮る。いささか震えた声で、その手はしっかりとテルマの手を握りしめてはいたが、その声だけはやけに大きく響いた。


「仮に第三の塔を攻め落としたとして、それでどうなるって言うんです。親衛隊やラメクが戻ってきたらそれで結局終わりじゃないですか。そりゃあそこを占拠すれば守りは固められるでしょうけど、その程度で何が変わるんですか」


イェンチは言い終えてから、助けを求めるかのようにきょろきょろと落ち着かなげに周囲の顔を窺う。一巡した視線はテルマへと戻り、テルマも意を決したように口を開いた。


「そうだよ。あそこを新しい家にしろっていうの?そんなお引越しってある?」


視線は再びジェスターに集まった。しかしジェスターはそんなことは意にも介さず、待ってましたと言わんばかりに両手を広げてみせる。


「いーえ。大丈夫です。第三の塔を落とせれば、確実に、絶対に、完膚なきまでに、この国は、ラメク政権は転覆します」


両手を広げたまま胸を張り、ジェスターはその芝居掛かったポーズのまま止まった。

そうして、通信が不調になったのかと訝しむほどの間をもって、ジェスターは次の言葉を紡いだ。


「あそこには、秘密があるんですよ。ラメク総統陛下の最大の秘密。あの憎っくき災害の裏側を記録したラメク総統陛下の機密文書がね」



ジェスターとの通信が終わると、場の空気は真っ二つに分かれてしまっていた。


「俺は…絶対に反対だぞ」


電源の切れたタブレットとアルノルトを深く睨みつけるように、クラウスはそう言った。


「あんな男を信用できるか、どう考えたって危険すぎる」


クラウスの隣にいるロルフもまた、同じように苦い表情を浮かべていた。


「で、でもでも、武器を用意してくれたのは事実ですし…」


アンケが慌てた風に、しかし控えめな調子で言うが、その言葉にすぐにクラウスは言葉をかぶせてくる。


「だからそれも罠かもしれないだろう、バカ。革命を煽って、国に仇なそうとする俺たちをまとめて殺す気かも知れない。大体、仲間がいるってのも信用できない話だ。この国で俺たちを助けてくれた奴らなんていたことがあるか?」

「それはいるだろーよ、わりぃけどさ」


マインラートが憮然とした調子で声をあげた。クラウス以下、皆がマインラートの方へと向きなおる。


「俺たちは自分らだけじゃ生きていけねーよ。結局、食い物も服も、本も、何もかも大人たちから貰ってる。気づいてねーわけないだろ、みんな。あんなもん施し以外の何もんでもねーよ。俺たちは自給自足で生きているわけじゃない。認めたくはねーけどよ。あいつらは俺らを無視して、見ないふりしながら、生きるのに最低限のものは与えてくれてる。俺たちは、憐れまれてんだよ、この国の、何もできない、何もしない大人たちにな」


それは皆、気づいていたことだ。彼らは結局まだまだ子供で、何の力も持っていない。国の中心部から離れて暮らしていると言っても、それすらママゴトに見えるほどに、結局は誰かの、何かの力に依存して生きている。

荒れ果てた国の中の、わずかに残った人の良心に縋り付いて生きている。だからこそ、まだ生きていられるのだ。


「それが革命にどう繋がるのかはわかんねーよ。もしかしたら、そんな俺らを見て火がついちまった奴らもいるのかもな。知らねーけどさ」


誰も、何も言えなくなる。わかっていたことだ。しかし、それを普段は頭を使うより先に体が動くタイプのマインラートが言ったことがまた、心の内側でクラウスに賛同し、反対派に回ろうとしていた者の口も閉ざさせていた。ややあって、エレナが口を開いた。


「アルノルトとジギスムントは、どこまで知ってたの?どこまで知ってて、今日みんなを集めたの?」


アルノルトは、しっかりと自分の目を覗き込むエレナから、無意識に視線を逸らした。それだけで、エレナには充分だった。


「全部知ってて、これまでやってきたんだね」


ジギスムントが慌てて口を挟む。


「2ヶ月くらい前に、俺とアルノルトが街に出た時、持って帰った食料の中にここへのマップが入ってたんだ。俺たちもしばらく電子機器に触れてなかったから、そんなものが紛れてるなんて思わなくて。俺と、アルノルトが指名されてたんだ。それで、なんか、怪しいとは思ったんだけど、今の、今の生活が少しでも楽になるならと思って…」

「もういいって。大丈夫だ、ジギスムント」


アルノルトが声を掛ける。逸らしていた瞳をエレナと、そして一同へと向け、改めてあの銃を皆に見せた時のような、少し硬い声色で話し出す。


「そこで今の話と、銃が渡された。いや、その時は俺らが持って帰れる量だった。そしてその翌日には、あの地下室に銃が運び込まれてた。怪しいとは思った。お前らを巻き込んで良いのか、散々悩んだよ。でも、あの災害の話をされた。あの災害に秘密がある。俺たちから、家族も、友達も、夢も未来も、全部全部奪っていったあの災害に秘密があって、それをラメクが握ってる。そんな話を聞いたら、乗らないわけにいかなかった。俺は、そうだ、俺だ、ただただ俺が知りたかったんだ。あの災害の秘密を俺がただ知りたかったんだ。それに、みんなを巻き込んで、銃の訓練までさせた。不安にさせて、心配もかけた」


肩を震わせ、拳を握り締めながら。アルノルトは苦しそうに、呻くように声を絞り出した。それはまさに絞り出す、という表現しか当てはまらないような声だった。やがて言葉を途切らせ、アルノルトは肩を落とした。


「俺だってあんな奴を100%は信用できない。危険だっていうクラウスの言葉はもっともだよ。抜けたい奴は、抜けて良い。俺には、強制する権利はない」


いつになく弱々しく見えるアルノルトに、誰も何も言えなかった。心に思うことはそれぞれあるだろう。それでも、声を出すことができなかった。それほどまでに、アルノルトは弱って見えた。

エレナが、アルノルトに一歩近づく。アルノルトは目を伏せたままほんの少し肩を震わせた。その肩ごと、エレナはアルノルトを強く抱きしめた。あの災害の日、出会った日とは逆の形だった。


「大丈夫、大丈夫だから」


エレナの声は、力強い。それはとても優しく、力強かった。


「一人で悩まないで。一人で苦しまないで。アルノルトのことは、みんなちゃんとわかってる。私が、ちゃんとわかってる。みんなで、生きていこうって。生きていく約束をしたよね。忘れてない。忘れたりしないから。みんな、仲間だから。大丈夫だから。アルノルトがやろうとすることを、私もやるから。だからそんな風に言わないで。絶対に、きっと、うまくいくから」


エレナのその言葉で、アルノルトの震えは止まっていた。

そう、いつだってそうだった。エレナ本人は気づいていないかも知れない。けれど、アルノルトも他の者も皆、エレナに救われていた。エレナの存在が、荒んでいく生活の中で間違いなく彼らにとって光になっていた。だからこそ、彼女はこの生活の中で、母であり、姉のような存在になっていたのだ。

アルノルトはもう一度拳を握りしめ、エレナから離れて皆の目を見据えた。もう、その瞳には一片の迷いもない。


「みんな、もう一度頼む。さっきのあいつじゃない、俺を信じてほしい。そして、ついてきて欲しい。この国を、俺たちの未来を取り戻すために。みんなで、闘おう」


それはなし崩しのような解決法だったのかも知れない。それぞれの心には、未だ先ほどの謎の通信相手への疑惑はあった。しかしそれでも、カードは開かれ、アルノルトとジギスムントの持っていた手札は明かされた。目的もハッキリとわかった。仲間内での疑惑はなくなったのだと言えた。こうして、革命の準備は、すべて整った。


to be continued...

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持病の関係で一年に二、三回死にかける時がある。

でも、それは必ずしも悪いことじゃなく、それを経ると必ず何かを持って帰ってこられる。


昨日がまさにそうだった。


その死にかけた後に夢を見た。

10年前に死んだ祖父の夢だった。


祖父は台湾の人で、15の時に学校の悪徳教師を仲間たちとボコボコにしたことで国を追われて日本にやってきた笑

戦前の話だ。

第二次大戦中は外国人ということで辛い目にも遭ったと聞いている。

それでも日本と、日本の僕ら家族が大好きな素晴らしい祖父だった。

そして、父方ではなく母方なのだけど、父と同じく傾奇者。

僕の人生に、生き方に深い影響を与えてくれた人だ。


北海道にも僕の従兄弟、祖父の孫はいたが、多分近かったこともあり、僕は自分で言うのもなんだけど一番愛された孫だったと思う。

こんなことを言うと従兄弟たちには怒られるかも知れないが笑


単純に、性格というか気質が合ってたのもあるかも知れない。

娘である母が似た性格の父と結婚したことからもわかるように、母にもファザコンの気があった。

だから、僕は祖父と近い位置にいつもいられたということもある。


話が飛び飛びになるのを許して欲しいのだが、祖母は今北海道にいる。3年前に僕の父が亡くなり、北海道の叔父も続けて亡くなった。

その時に叔母が祖母を北海道に連れていったのだ。


その経緯や詳細は省くが、ここまでを前提条件として読んでもらいたい。

そう、僕は死にかけて、そして祖父の夢を見た。


夢の中の時間軸は現在。

祖母は北海道で、僕の父は亡くなっている。

その上で、祖父は生きて東京にいた。

そして、祖母とは別居になりながらも、家を守っている、という状況だった。


場面は祖母が東京に久しぶりに戻ってきて、みんなで食事をしている場面だった。

祖母も祖父も楽しそうにしていた。


祖父はお酒が好きな人だった。

決して強くはなく、すぐに酔っ払ってしまうけど、明るく楽しいお酒を飲む人だった。

祖父は食事中にもお酒を飲みながら「実は今日来る前もちょっとお酒飲んできたのだ」と僕に耳打ちしてきた。

「久しぶりに祖母ちゃんに会えるのが嬉しかったんだね」と僕は笑った。


生前の祖父はさすがに死の一年前は体も弱ってしまい、大好きだったお酒も飲めなくなってしまっていた。夢の中では、祖父は逆に1人になってから元気になった、という設定になっていた。

ある意味、お互いに夫婦という枠から離れて自由に好き勝手する今を楽しんでいる老年夫婦、といった感じだ。


目覚めてからもしばらく、この夢の余韻が続いていた。

祖父の死、に思い至るまで30分近く掛かった。

そのくらい、現実味のある夢だった。そして出てきた祖父の仕草やちょっとした動作が、あまりにも祖父だった。僕の知る祖父の、知らない動作。でも間違いなく祖父。

夢が自身のイメージから生まれるとするなら、ここまで僕の創造力は強かったのだろうか?


僕は、死にかけた僕に何かを伝えるために、本物の祖父が久しぶりにきたんじゃないかと思っている。


目覚めて祖父の死を思った時に、先日仲間内で「不老不死」の話題が出たのを思い出した。


「人は何故死んでしまうのだろう」

「人は一体どこへ行くのだろう」

「短い一生で別ればかり繰り返すなら、そこに意味なんてあるのだろうか」


そんな風に、亡くなった祖父や父、叔父や、僕の周囲から消えていった人達を思い返す度に思う。

誰も死なない世界があれば、その方が幸福なのではないか?

誰とも別れなければ、それは永続な幸福と言えるのではないか?


苦痛を生み出す別れを経験する度にそう思わないでもない。


でも、それはきっと、大きな、とても大きな間違いなのだ。


人は老いてゆく。

老いてゆき、そして、置いてゆく。

大切な人を、ものを、置いて、遺して、やがて消えてゆく。


でもそれこそが何より大切なのだ。


少年はやがて青年になり、壮年を経て、老人になる。

「父」になり「母」になり

「祖父」になり「祖母」になる。

誰かの「弟子」はやがて誰かの「師」になる。


そうやって、成長し、老いて、立場を変えながら、人は沢山のものを遺してゆく。

沢山のものを、伝えてゆく。


僕が生まれた時すでに、祖父は母の父ではなく、僕の祖父だった。

祖母の恋人ではなく、祖母の夫だった。

父は母の恋人ではなく夫で、僕の父だった。


その前の姿を、僕は伝聞でしか知らない。

それで良いのだ。それが、人が生きるということだ。


老いることのない人間は、精神の成長も止まってしまうと思う。

できることが増えたり、減ったり。

その過程で魂は成長し磨かれてゆく。

その過程で、より若い者に伝えるべきことができて来る。


だから、不老不死なんて、ただの檻でしかないのだ。


別れがある。

終わりがある。

その前提条件のもとで人生は輝くのではないだろうか。

もっと長く一緒にいたかった。

もっと伝えたい言葉があった。

その後悔もまた、人生において必要なことなのではないだろうか。


それがあるから、伝えていけることがきっとある。

伝えきれない想いや魂を遺すために人は生きている。


人生は長い。

果てしなく長いけれど、意外なほどに短い。

楽しみきるにはあまりにも短すぎる。


でもそんな短い人生を必死に生きて生きて、生き切った、そんな人が輝いて見えるのだろう。

そんな人生を送って初めて、輝いていると誰かに思ってもらえるのだろう。


祖父も、父も輝いていた。

僕にとって誰よりも輝き、誰よりも憧れた人達だった。


その血は濃く、僕に流れている。

深く、濃く、その血は僕に流れている。

その何と心強いことか。

それだけで、何人の味方を得るよりも僕は自信を持って人生を歩んでいける。


それを、再確認した夜だった。


ねぇ、本当にさ。


大好きだよ、祖父ちゃん、親父。



Shion

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この数週間、少年たちの食事の席は会話が少なくなっていた。各々はいつも通りに振舞ってはいるつもりなのだが、その場にはどこかぎこちない空気が漂っている。
アルノルトやジギスムントを始めとして、普段はお喋りなエイヒムやマインラート、アンケに至っても口数が少なかった。

先日街での調達作業から帰ってからというもの、ガイも平時に増して黙りこくっていることが多くなった。幼い子供たちは何も気にせずに騒々しく食事の席に会話の花を咲かせているが、年長組のぎこちなさは隠しきれておらず、それはどことなく集落全体に伝わっているようでもあった。

「いやぁ、今日の豆の煮込みはおいしいねぇ」

テルマがわざとらしくスプーンを鳴らしながら声を出す。しかし、その皿の料理は、先ほどから少しもその量を減らしてはいなかった。

「今日の料理係は誰だっけー?ん、ロルフと…あったしだ。あはっ」

エレナは口元だけでくすりと笑い、イェンチも困ったような曖昧な微笑みを浮かべていた。

「やっぱりテルマさんはシェフですね、スペシャリストです」

アンケは普段通りのとぼけた返答をしたが、他の者は黙ったままだった。普段なら、食事中に大きな音を出すな、と嗜めるクラウスも、何も言わなかった。食事の場の空気は、どうにも固い。

明らかな不協和音に、誰もが気づいていた。誰もが気づいていながら、ハッキリしたことを口に出せないままでいる。
この中で何かを知って、わかった上で動いているのはアルノルトとジギスムントだけなのだ。その二人が黙ったままでいる以上、他の者が状況を把握できるはずもなかった。
皆、思うところはある。恐らく、口には出せない不安や、疑念がそれぞれにあった。その場の誰もが、アルノルトの様子を横目で窺っている。彼らの関係性にヒビが入りつつあるのは、見る者が見れば明らかなことだった。

アルノルトはその皿の料理にほとんど手をつけないままで食事を終えると、意を決したように、コップに注がれた水を一息に飲み干した。

「みんな、今夜、話がある」

空になったグラスを静かにテーブルに置き、一呼吸置いてからアルノルトは口を開いた。年長組のその場の全員が、アルノルトを見る。
この場合の「みんな」が年長組を指すことは明らかだ。アルノルトは、視線をほんの一瞬、僅かに泳がせながら、それでも全員のその視線をしっかりと受け止めて言葉を続ける。

「今日は、練習は中止だ。みんなが寝たら、全員で出掛ける。集まってくれ」

アルノルトの言葉に、何も知らない幼い子供たちはわーわーと騒がしくなる。その中で一番年長の、ユーリがアルノルトに不満げな顔を向けた。

「なんだよアルノルトー。いっつもいっつも仲間はずれにすんなよ。俺たちだってみんなの仲間なんだぞ」

今年9つになったユーリは、年少組の中では最年長にあたる。小さな子供たちのまとめ役であるという自覚もあって、最近では生意気盛りだ。アルノルトは微笑みを返し、ユーリの手の上に拳を置きながら応えた。

「わかってるよ、ユーリも、みんなも、俺たちの仲間で、大切な家族だ。だからこそ、兄ちゃんたちは兄ちゃんたちでやらなきゃいけないことがある。ユーリは、みんなのことをしっかり守ってやらなきゃいけない。そしてそのために、しっかり寝て、デッカくなることも大切なんだぞ。いっぱいご飯食べて、寝る時間にはちゃーんと寝るんだ。良いな?」

不満げな顔のままだが、ユーリはそんなアルノルトの言葉にきちんと頷いて返す。アルノルトはそんなユーリの頭をしっかりと撫でてやった。
この子は夜、年長組が集まって何事か話しているのを、知っている。エレナが自分たちが眠った後部屋を出て、どこかに出かけていくのを知っている。知っていて、それでも、できる限り知らないふりをしようとしてくれているのを、アルノルトを含む年長組は、みんな、知っている。

-本当に素直に、真っ直ぐ育ってくれている。

親を亡くし、こんなどうしようもない状況下で、子供が子供を育てているような環境だ。そんな中でも、彼らはしっかりと未来を見据え、素直に、着実に成長している。

-こいつらの未来は、誰にも奪わせちゃいけないんだ。

アルノルトは再び決意を固める。今夜、一つ、勝負どころだった。今夜でまた、事は、動き出すだろう。


その夜、彼らは初めて年長組の全員でその森までやって来た。ユーリを含む子供たちが確かに眠りに就くのを見届け、それでも常に後ろを気にし、誰もついて来ていないことを確認しながらの行脚のせいで、銃の訓練をしている廃屋に着いた頃には既に空は白み出していた。
そしてそんな道中、アルノルトとジギスムントは必要最小限の言葉しか口に出していない。

「全員でここに来るのは危険だ、て話じゃなかったのか」

最早弾痕でボロボロになってしまったかつてのカフェの壁を眺めながら、クラウスはそう言う。

「俺たち、12人もいますからね、さすがに、目立ってたかもしれません」

カイザーもまた、辺りを注意深く見回しながら言う。

一応、全員小さなハンドガンを集落を出る際に一挺ずつ携帯はさせられていたが、いざ親衛隊が現れれば、実戦経験などない今の彼らでは太刀打ちできるはずもない。こんな水に囲まれた森の中では、逃げ切ることも出来ないだろう。

「…近いうちに、そうも言ってられなくなるんだろうけどね」

ガイが静かに、誰を相手取るでもなくそう言った。ここしばらく、ガイが声を出しているのすら見ていなかったので、他の者は少なからず驚いていた。
そしてまるでそれが打ち水になってしまったかのように、ガイが再び口を閉じるのと同時に、その場にはまた沈黙が広がった。

「今日は、大丈夫なんだ。今日は、心配いらないんだって、話だ」

アルノルトが、喉元から絞り出したような、硬い声で言った。その隣を見ればジギスムントが、それに呼応するかのように眼鏡の奥の目を伏せた。意味ありげな物言いに、場に緊張感が広がる。
喉を小さく鳴らす音が聞こえ、エレナが一歩前に出かけた。それを制するかのように、テルマが声を出す。

「アル、どういうこと?ここで今日何があんの?」

テルマには珍しい、低く、ゆっくりとした語り口だった。言葉を出しかけていたエレナは口を噤み、アルノルトの返事を待った。

アルノルトは目を凝らし、何かを探しているように視線を泳がせている。テルマの声が聞こえていたのかいないのか、その視線は落ち着かず、所在なさげだった。マインラートが苛立ちを隠せないかのように声を上げる。

「おいおいアルノルト、いい加減にし-」
「あった…」

マインラートの声に被せるように、ジギスムントが声を出した。その声には、安堵と、そして微かな驚きが滲んでいるようであった。アルノルトが、弾かれたようにジギスムントへと寄る。

「本当に、あったな…」

二人の手には、小さなタブレットが置かれている。どうやら、それはこの廃屋に彼らが来る前から置かれていた物のようだった。彼らの生活にもう長いこと登場することのなかった電子機器に、その場にいた誰もが驚きを隠せなかった。
アルノルトが、恐る恐るそのタブレットを起動すると、暗闇の中にじわりと光が滲み出した。何かを反芻するかのように、ゆっくりと数字を打ち込んでいく。開かれたアプリケーションが、3D映像で誰も座っていない椅子をその場に照射した。その場の誰もが、一言も発せなかった。ただ、その映像をぼんやりと眺めていた。
ややあって、その映像から、正確にはタブレット内のスピーカーから、機械的に歪められ元の声がわからない何者かの声が響いてきた。

「あー、は、は、もしもしもしもし。聞こえてるー?いやぁ、遅い、遅いよ。随分待ったよ。今日はもう来ないのかと思ったよ」

アルノルトが音声ボタンを押してその音量を調整する傍らで、照射された映像内の椅子に、そいつは深く腰掛けた。男女の別は加工された音声からはわからない。その顔にも、映像加工が施され、原型がわからない妙な容貌をしている。しかし、そいつはそんなことは意にも介さないように、その場の全員へと向けて言葉を発した。

「どうもどうも、お初にお目にかかりますよ。絶望的青春の真っ只中のんー、と、1、2、はいはいはい、10,11,12?12人います?13人?全員見えるように固まってー、ああ、12人ね、多分、12人のゲスト様」

加工された音声と映像からではあったが、そいつのその声からは明らかにこちらを見下した、馬鹿にしたような響きが感じられた。しかしそれすらも、そう響くように意図的に造られたような作り物感もある。感情がまったく読み取れない声色だった。

「ま、ま、アルノルト大先生とジギスムント御大以外は一応初対面、知らない子たちだぁから、自己紹介くらいはしてくれると嬉しいねぇ。ま、一回じゃ覚えられないかも知れませんけど、一応そのくらいの体裁は必要だよね」

誰も、何も言わない。言えないというのもあるが、言わない。それに苛立ったということもなく、そいつはただただ言葉を続けている。

「あれれ、一応こっちには音も絵もちゃんと届いてるんだけど。もしかしてそっちには届いてません?今まさにこの手が伸びた先に、うーん、クラウスくん、いるよねー?反応してねー?」

映像の中の手が指差した先-、名前を呼ばれたクラウスの背中に伸びた尾のような髪が、ぴくりと上がる。

-自己紹介が、必要?

「でー、お隣にいるマインラートくんとエイヒムくん、そんなに警戒しないでー、いつもみたいに明るく盛り上げてくれよ。で、クラウスくんのお兄さんのロルフくんと、隣でだんまりのガイくんも、むっつりしてないでお喋り聞かせてくださいな。ロルフくんとクラウスくんの兄弟漫才が見られると思って楽しみにしてたんだから」

自己紹介など、必要であるはずがない。こいつは、間違いなくこちらのことを知っている。こちらに誰がいて、そいつがどんな人間だかまで、おそらく把握しきっている。

「テルマちゃんとイェンチくんは相変わらず仲がよろしいようで。そんなに怯えた風に寄り添っちゃって、見せつけてくれますねぇ。あー、アンケちゃんアンケちゃん、そんなに大口開けて見つめないでよ。顔可愛いのにアホの子みたいだよ。カイザーくんは今日もクールだね、そんなに睨まないでよ。そしてー」

それまで感情のまったく乗らない声を発していたはずのそいつは、今度こそ、その機械越しの歪んだ音声でもハッキリとわかるほど、感情の確かに乗った声を放った。
そいつは、とても愉快そうに、その笑いを隠すこともなく、エレナへ向けて言葉を投げかけた。

「エレナさん、本当にようこそ。ワタシが、君たちのメシアだ」

椅子から立ち上がり、そいつは仰々しく頭を下げてみせる。エレナが口を開くより前に、アルノルトが言葉を発する。

「悪ふざけはいい加減にして、本題に入ってくれないか。遅くなったのは悪かったけど、あまり長くもここにはいられない」

アルノルトは落ち着きのある、それでいてその内心の苛立ちがハッキリと出た声色でそう言い放った。そいつはエレナに向き合っていた体をくるりとアルノルトとジギスムントへと捻る。

「散々待たされたんだから、もうちょっと喋らせてよ。文明の利器を楽しみたまえよ、原始に帰りし子らよ。ま、良いでしょう。確かに時間がない。ご説明致しましょう」

3Dで照射される範囲内を大きく超え、肘から先が見えなくなるほど手を広げながらそいつは再び全員の顔を見渡す。

「ワタシのことは、“ジェスター”とお呼びください。君たちに武器をプレゼントし、これからの君たちをサポート致す者でございます」

ジェスターと、そう名乗った存在はそうして、舞台の開幕を告げるかのように高らかに言った。


to be contined...
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