前回の続きになります。
IMDは、「世界デジタル競争力ランキング」も作成しています。2023年11月に公表された2023年の結果を見ると、世界の64カ国・地域の中で1位がアメリカ、2位がオランダ、3位がシンガポールとなっています。韓国が6位、台湾が9位、香港が10位で、日本は32位になります。2022年調査から3つ順位を落としており、こちらも過去最低を更新しました。世界競争力ランキングよりはやや順位が上になりますが、決して良い結果ではないですよね。
このランキングは3つのファクターによって評価されています。「知識」(日本は28位)、「技術」(日本は32位)、「将来への準備」(日本は32位)でした。日本の評点がとくに低いのは、「知識」のうちの「人材」(日本は49位)、「技術」のうちの「規制のフレームワーク」(50位)、「将来への準備」の中の「ビジネスの機敏性」(56位)でした。これらの項目のいずれにおいても、日本の順位は時系列的に見て低下しています。
IMDは、「世界人材ランキング」も作成しています。2023年9月に公表された2023年の結果を見ると、世界64カ国・地域の中で、1位がスイス、2位がルクセンブルク、3位がアイスランドなどとなっていました。以下、ヨーロッパの人口が比較的少ない国が続きます。アジアでは、シンガポールが8位でした。そして、香港が16位、台湾が20位、マレーシアが33位、韓国が34位、中国が41位となっています。一方で日本は43位でした。これまで見てきたIMD世界ランキングの中で最低です。2019年には35位だったので、ここでも日本は劣化していることになります。
このランキングの評価は、つぎの3つの項目によってなされています。第1は「人材投資と開発」(日本は36位)。これは、教育に対する公的支出、教師の数、雇用訓練、女性労働者比率、健康のインフラストラクチャーなどです。第2は、「アピール」(魅力)」(日本は23位)。これは、生活費、頭脳流出、生活の質、外国の熟練専門家、個人所得税などにあたります。第3は「準備」(日本は58位)で、これは労働力の成長率、専門家、金融の技術、国際的経験、シニアマネージャーの能力、初・中教育、理系の人材、大学での教育、経営の教育、語学の能力などです。
日本が特に低いのは、「国際的な経験」(64位)、「シニアマネージャーの能力」(62位)、「語学の能力」(60位)だ。「国際的な経験」では、文字どおり世界最低です。国際経験の面で日本人に問題があるとは、これまでもしばしば指摘されてきたことですが、このように「世界最低」という数字を突きつけられると、改めて愕然としてしまいます。
そして、このことがビジネスの機敏性などに影響与えていることは疑いがないでしょう。つまり世界が大きく変化していることを、日本の経営者は肌で感じられず、そのため必要な対応をしていないのです。日本が、IT革命、世界的水平分業の進展、製造業のファブレス化といった大きな変化に対応できなかったのは、そうした変化を身の回りの出来事として直接に感じることができなかったからでしょう。
結果的にここ数十年で日本には国際的な経験を持った、国際的な視点を持って変化に迅速に対応できる経営者が少ない、またそれはそのような人材育成を怠ってきてしまってきたのではないでしょうか。語学やデジタル化に関してもそうです。
日本はバブル経済破綻後、失われた30年を過ごしてきてしまいました。その間にあらゆる成長機会が失われ、既存のビジネスを守ることで経済が停滞してしまったと思います。日本の経済が強かった時代を牽引してきた高齢の経営者が居座ってしまったため、若い経営者がなかなか成長できなかったのかも知れません。
さらに国レベルでの教育も世界標準とはかけ離れガラパゴス化してきてしまったのではないでしょうか。さらに自国の若者に対する教育支援より他国からの留学生に国の予算を使っています。そして最近では円安の影響もあり日本人の留学生が激減してしまっています。韓国と比べても1/4ですが、人口当たりでみるとさらに少ないです。なぜここに国がお金を使わないのでしょう?
今回の結果を見て思ったのは、国の成長も企業の成長にもやはり人材育成が最も重要だと言うことです。しかし日本は、日本の企業は人材育成に時間とお金をかけられなくなってきてしまった。一見すると無駄なことに時間とお金をかけて来なかった。これが今ボディーブローのようにいろいろな側面に影響してきて、その結果がこれらのランキングに如実に表れているのではないでしょうか。
これらの問題を解決することは決して簡単ではありません。時間もかかります。しかし、日本衰退を食い止めるためのカギがここにあることを、国も企業の経営者も認識すべきで、今すぐ何か対応しないといけないと思うのです。もう、待ったなしです。ガンバレ、日本!
