すかいうぉーかー -60ページ目

すかいうぉーかー

CRAZY=SPELL−BOUND







「速そうだね」





心臓の音が聴かれているのではないかと思う程に








右足を軽く引き摺るその男は


何の気負いもてらいも無く
トウコのR6に歩み寄り、興味深げに眺める





決して他人を寄せ付けない感じでも無かった





ただ、静かで

あまりにも深い




まだ、何も知らなかったあの時の背中

曖昧な記憶とは 随分違う





何10万km走れば

なにを見て来れば、こんな雰囲気が生まれるのか



彼が、このR1に乗ったら
いったいどうなってしまうのか






自分が絶対の確信を持って飛び込んだ世界 
その、ずっとずっと先の 更に向こう


そんな物が、今 目の前に立っているのだ











「ずっと」









「?」












「ずっと、捜してました」










あの日から

3年の歳月が、流れていた




(続





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「見た見た」


「R6だよな」




「え? ~さんじゃなくて?」


「違うよ、女なんだよ。赤い髪の」











それは、静かな


目に見えない程に細く、しかし関東一円を巡る程の 

黒くて鋭い、ワイヤーのような物で編まれた"網"





ある者は、夜半の松姫で


ある者は、早朝の外環で



火花をあげるステップ
薄ら寒い程の減速の無さ



棲息する"深度"により、印象も評価も様々だが

初めは性別で珍しがられていた黒いデニムの美しい腰つきも、徐々に認知のされ方が変わって行く





目黒線ですら、全開
背中には無限の、はっきりとした"目的意識"





アレは、本気組だ と







"速い"などと簡単に形容するには
各自の話をまとめた物が、強力過ぎるのだ




そして、ある時期から変わった
その排気音は

共生とは無縁
"契約"に近い、使役のごとき回転数を伴い













あまりにも、狂おし過ぎた












三芳の入口に滑り込み、目立たない所にR6を停め
フルフェイスを脱いで、上衣のジップを下げる


「ふう」




トウコは一息つくと、ブラックの缶コーヒーを買いに自販機へ歩き出した


















ポーチから出した財布が、手から落ちる





喉の辺りから肋の中心に、鋼鉄の杭が打ち込まれたような痺れ









黒い5PWでは無かったが



取り立てて特徴の無い
だが、タイヤやアンダーカウルの細かい傷








何よりも

見ただけで分かる、目に見えない









それは間違いなく、あの

























「何か?」
















振り返ると、均整の取れた体に浅黒く日焼けした男が








ブラックの缶コーヒーを持って立っていた






(続




 

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ワタシはワタシです


ワタシはワタシの道を走ります





同じ物を求め
同じ所を探し
同じ記号を作り
同じ時間を過ごそうとする






ワタシはそれが要りません



アナタはアナタです





同じ物は要りません







ワタシはワタシで有りたいのです






だから、ワタシは
ワタシで無いアナタが好きです






容れ物






形も重さも材質も色も
光の反射の仕方すらも













オリジナルで有ろうとする事

それが、何よりもワタシであり



また、アナタでした




























ワタシはワタシの道を走り続けるでしょう





 
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車検?


いや、車検は自分で・・・








足周り全バラ+グリスアップ?

ま、まあ確かにスイングアームとか
激変するらしいし、魅力的だけど





ベアリングもなぁ
ステムもホイールも、確かにそろそろやっときたいな とは







Fフォークは、例のアレで
無料でフルオーバーホール?


だから、どうせなら ついででやらせろ?







そういや、最近 アイドリングが安定しねーんだよな

多分、エアクリーナーとプラグで・・・俺のって、ダイレクトイグニッションだっけ?




















オイル?

イイよ、自分でやるよ








ヨコさん「やっとけよ。工賃サービスしてやるから(笑)」










オイル代が無いの(怒)

300vとか、ぜってー入れ無いからな!



























鼻血も出ねぇ(涙)




 







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驚いて

喜んでいるようだった








「すんげぇ速いから、目ぇ三角にして逃げましたよ(笑)」






旨そうに煙草を吸い込む

いつも、簡単にミラーから消していたのに
消えない


そんな感じなのだろうか

 


居るところには居るのに
案外会えない



そんなもんなのだ





出るのが五分ズレただけで
もう、かち合う事は無い






誰でも彼でも出来る訳じゃないからこそ価値があり


こうやって絡むことも 
ある意味では1つの奇跡なのだ







だから、俺たちは

降りた後 笑顔になり、子供のようにはしゃぐ








程なく、DRZが通り過ぎ

次いで、Sが来た







「悪いな、先行っちゃって。行こうか」




S「イイんですか?」




「ああ」







もうちょっと話してみたかったが、挨拶して出た






もう、クールダウンだ










それに

















大体の会話は


もう済んでいるのだから



(了




 



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いきなり離され
先制の






曲がった先で、直線の彼方
開いた距離


突っ込んで、飛び去る
4輪のコーナーリング











この野郎






一瞬で突き付けられ、眼圧が上がる








目も眩むスピード





蹴り落としたギア
響き渡る10000rpm前後の咆哮





飛び散る砂塵が、渦を巻く気流に飲み込まれ

視界の殆どがブレて消し飛びながら、両肩を掠めてフッ飛んで行く





彼方のコーナー入口に、全神経を突き刺しながら
R1のタイヤでS字のバンクを、左右に蹴り飛ばし



もう、殆どそこにしか無いラインに

何の余裕も無く、無理矢理矯正したGを捩じ伏せながら
引き摺りおろした車体のフロントを叩き込む



勢いのついた砲弾のように
制御の効かない、狂ったスピード








いっぱいから、メットがゴムポールに掠るぐらいのラインを



それでもコーナーリングが間に合わない

より長い直線を無理やり作り上げないと、加速でしか勝負出来ない










何ダ


何ダコイツハ




平仮名に変換する時間も無いと言えば、分かって貰えるだろうか






全身の肌が、アラートに粟立つ



一切の妥協無く加速した車体を、ロック寸前まで追い込んだブレーキで詰めても


引き寄せた白い巨体が、嘘のようなスピードでセンターのゴムポールを綺麗に舐めながら

吸い込まれるように消える



1車線だぞ?

あんな、幅ギリギリを






だが









もっと



もっとだ








「ブチ抜き~」から読んでる人は分かるだろうが
俺は四つ輪と絡んだ記事を上げた事は無い







無いのだ 



たまたま  速い車と絡んだ事が





こんなにも、速いのか


しかも、全く種別の違う
異次元の『敵』






緊張でパンパンに張った心臓は

しかし、感じた事の無い喜びが
奔流のように溢れ出す











(でも、  


コイツ 



相当速く無いか?)






経験が無いので自信は無いが

どう控えめに見ても、あのコーナーリングはヤバい



コッチも、流石にマージンは残しているが
本当に本気で走っている


正直、マシンを600ccに交換したいぐらいだ





寝かしたままで、滑る寸前までアクセルを開け

大外のいっぱいいっぱいまではらんでから、鼻の中に血の匂いがするようなブレーキ


暴れ、外れて飛んで行きそうなタイヤ
は 
抜けた荷重と僅かなギャップで、翼竜の鳴き声のような音をあげる







そこから一気に









「うわっ!?」



爪先が路面に掠った

バンクの感覚が追い付かなくなって来ている



それでも、車体を捻上げながら
アウト側に変わる左膝をタンクに叩き付けて切り返し



可能な限りの"レコードライン"を、撃ち抜く


唯一の救いは、後追いである事だけ




迫っても離れ

突き立てようとしては、消え去る




挙動を観察する暇すら無い









(凄い・・・)




車線の幅ギリギリなのだ




何故、あんな速度で回れて
はらみもしないのか






走り込んでいて

コースも熟知しているのかもしれないけど







逃がしてはいないが


僅かに自分が負けているのが分かっていた




それでも

全然悔しくないのだ









よくも



よくも、抉じ開けて
引き摺り出してくれたな と



いつの間にか
笑っていた












そして、狂ったダンスは

突如終わった




TIPE-Rがウィンカーを出した


小僧区間の駐車場へ入る





この区間だけで遊んでるのか










(・・あっ、そうだ)







Sの事を思い出し

駐車場出口付近に停まり、ウィンカーを炊く






TIPE-Rのドアが開いた



眼鏡のボサボサの黒髪が、満面の笑みで















「速っええええ~(笑)」










知っている
脳内麻薬を出しまくった、"脳が開いた"顔だ

全身から、何かが湯気のように立ち上っているのも分かった



そして























それは、俺も同じだった



(続




 
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ゆっくりと、登り始める






赤い路面


視界の隅で、センターラインのゴムポールが次々に飛び去って行く中を

速度にも回転数にも余裕を持たせながら、じっくりと編み上げて行く





ミラーの中
Sは、何を考えているだろうか


それでも、それなりの速度だ


初めての道できちんと後を着いてくる



 








あの頃







俺は、かなり怖かった



スピードでは無く



速く無い自分が、格好悪かったり 周りの迷惑になっていたりしないだろうかと

出来ない事
出来ない自分に愕然とし

焦ってアクセルを開けてはオーバーランをし


心に全く余裕のない状態で、迫り来るカーブの口腔に心臓を縮めながら






正しい選択も
正しい選択肢すらも、持ち合わせが無いままで







幾度もコケて
バイクも自分も壊しながら









バイクに近道なんて無い





今の俺を見て、Sがあーだこーだ考えても
実際は意味のない話だ





だが、続けるならば 意味がある



きっといつか、何枚かの歯車になって 噛み合う日が来る







「自分も、あんな風に綺麗に走れるようになれるでしょうか」












俺の事を言っているのだと気が付くのに、かなりの時間を要した






だが"そうなんだろうな" と






何年も走り続けて


でも、道は同じまま
そこにあり続けるから




分かるのだ

昔、あんなに怖かったカーブの連なりが
こんなにも沢山の選択肢に溢れ

更に高い次元が存在するのを
今の俺は知っている




あの頃の、あの人のように















そのまま、奥多摩湖の手前まで一気に降り
駐車場でUターン



「とりあえず、戻って
1往復って形で行くから」


S「戻るだけなんですよね? 大丈夫ですから、先に行って貰ってイイですすよ」





「いや、別にそんな事しないよ。速いヤツでもいれば別だけどな(笑)」










登り始める
帰りは、緩やかな中速コーナーを登って行く形になる

より、余裕のある感じで走れる筈だ





出始めた車を、ちょっとずつ抜き出す


ミラーにいるのを確認しながら









「ん?」






車2台

その間に居たDRZ400




一気に抜いて

コーナーを2つ3つ










ミラーの中に
DRZがいた








「ちょっと、遊ばせてもらうか」



奥多摩周遊みたいな道は、モタード車はマジで速い
小僧区間に入ってしまえば、SSよりも走りやすいのは明らかだ


それが分かっているから







空気が一気に流れ出す

一つ低いギア
排気音に緊張感が混ざり始める




コーナーは向こうの方が有利
遠慮なく直線で加速させて貰う






「・・・居るねぇ」


コーナー出口の加速態勢に入った空白で、ミラーをチラ見すれば
すぐ後ろに



基本的には直線で離して、突っ込みで詰められている筈だ

立ち上がりの開け始めと、出足も




Sからあまり離れても


だが、当然チギるつもりで




直線は勿論、段々突っ込みにキナ臭い香りが混じり始め
ラインは狭まり、バンクが深くなって行く


峠で他車と
こうも、イイ感じで絡んだのは何年ぶりだろうか





まだ、居る

つつかれてはいないが、ミラーから消えない






イイね


でも、今日は

















「はぁっ!!??」










ストレートの先
左側の駐車場から



けたたましいスキール音












"4輪?"





"インテグラ?"







慌てて飛び出して来た?






明らかに、俺の姿か音を確認して















「ブンッ!!」




白いボディが、有り得ない速度でコーナーに消える





赤い『TIPE-R』の文字が、網膜に焼き付く

























なんてタイミングで、出て来んだよ!!















お膳立てが、揃い過ぎていた



















俺は数年ぶりに
フルフェイスの中で物凄い笑みを浮かべながら







脳のヒューズを一気に飛ばした




(続





 











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バリ伝は読んだらしいので



「ヒデヨシが死んだとこだよ」なんて話をしながら、駐車場に並ぶバイクを眺める



今回、久々に全く写真を撮っていない

スマホなのもあるが、やっぱ引率だと そんな事やっている余裕が無いもんである




今日はいるだろうなと思っていたが、既に30を楽に越えるバイクが、ごった返し

停める場所が無くなり、縦列駐車が出始める


Sは「何でこんなに」という顔 






バイクブームやバリ伝

箱根 奥多摩 首都高


全国レベルの知名度 

バイク乗りのメッカ








そんな事も、説明されたところで実感は湧かないだろう


6R
FZ400
GPZ750
KTMのDUKEに、K5のイエロー

同じ目的地を目指して来た、様々なバイク達を
のんびり眺めながら、煙草に火を点ける



何度か見掛けた事のある年輩の人が来ていた
CBRは、954からレプソルカラーになっている



ご機嫌だ

皆 最高の笑顔で








Sが台数と空気に飲まれ、緊張した顔になっている




うんうん

だよな、本気で速くなりたいと思っていればいるほど



真摯な気持ちを持っていればいるほど






懐かしい感覚が脳裏をよぎる






「大丈夫だよ。全員が速いわけじゃない。下手したら、1人も会わない日だってあるんだ。走らずに帰る人だっているんだぜ?」











8時を回り
ゲートが開いた




何台かの派手な排気音が、木霊し

すぐに静かになる





S「行かないんですか?」


俺「うん、まだ。 
まあ、のんびり行こう。今日は走ってみるだけでもイイんだぜ?」




まずは経験だ

どんなにおっかなびっくりしたって、走り始めれば直線とカーブの繋がりでしかない


どんなもんか見るだけでも、かなり気持ちは楽になるだろう




俺的にも、別にそんなに飛ばしたい訳でも無かった














俺「




・・・うん 




今だね」









40分ほど経過していただろうか




Sが、不思議そうな顔で「はい」と、装備を身に付けだした











なんとなく






分かるようになっちゃってたんだよ





















いつの頃からか





(続




 
 

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檜原街道は、5月のベストな陽気




一晩で下がり切った山の気温と
暖かい初夏の光


次々に現れるカーブの連なりを舐めるタイヤからの情報に神経を集中させてくれる
1年でも、最も走りやすい時期





奥多摩に行った事がないというSと、八王子第二で待ち合わせ

最近、宅配便のスクーターか何かと接触事故を起こしただとかで
あまり元気が無い


まあ、どっちにしろ引率なのは同じだ
ミラーから消えないように注意しながら

武蔵五日市→十里木と、余裕を持って車をパスしながら 自分のウォームアップもして行く



合わせているとは言え、そこらの馬の骨に比べれば充分なスピードだ

檜原街道は、奥多摩に近付くにつれて タイヤをガッツリ乗せられるようなバンクが増え
どんどんリズムが良くなって行く




直線の加速をそこそこに抑えながら

タップリと余裕を持って、軽くアクセルを戻すだけでカーブに入り


Rに対して、速度とバンクさせる量と どうやって態勢を作っているのかを自己分析



勘と経験で勝手に出来上がった物だが

自分はこんな事やってたんだなぁと





心地よい気温の中、そんな事を思いながら走るのも 
なかなか楽しかった







特にトラブルもなく

半分ボケっとしながら、徐々にペースは上がって行く





ミラーの中




成る程
今日は本当に調子良くなさそうだ




まあ、そういう浮き沈みも通ってこその若さである

バイクなんて、乗ろうが乗るまいが誰も責めやしないのだから
せいぜい悩んで、また乗りたくなったら乗って

降りたくなれば降りて

10年後にどうなっているかは誰にも分からない





「おっ」




見慣れた

白い 塗装の剥がれたゲート跡




あっという間









俺は、軽く伏せるとアクセルに喝を入れ



嘘みたいに綺麗になり始める路面を蹴って

一気に都民の森まで駆け上がった




(続



 













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