「見た見た」
「R6だよな」
「え? ~さんじゃなくて?」
「違うよ、女なんだよ。赤い髪の」
それは、静かな
目に見えない程に細く、しかし関東一円を巡る程の
黒くて鋭い、ワイヤーのような物で編まれた"網"
ある者は、夜半の松姫で
ある者は、早朝の外環で
火花をあげるステップ
薄ら寒い程の減速の無さ
棲息する"深度"により、印象も評価も様々だが
初めは性別で珍しがられていた黒いデニムの美しい腰つきも、徐々に認知のされ方が変わって行く
目黒線ですら、全開
背中には無限の、はっきりとした"目的意識"
アレは、本気組だ と
"速い"などと簡単に形容するには
各自の話をまとめた物が、強力過ぎるのだ
そして、ある時期から変わった
その排気音は
共生とは無縁
"契約"に近い、使役のごとき回転数を伴い
あまりにも、狂おし過ぎた
三芳の入口に滑り込み、目立たない所にR6を停め
フルフェイスを脱いで、上衣のジップを下げる
「ふう」
トウコは一息つくと、ブラックの缶コーヒーを買いに自販機へ歩き出した
ポーチから出した財布が、手から落ちる
喉の辺りから肋の中心に、鋼鉄の杭が打ち込まれたような痺れ
黒い5PWでは無かったが
取り立てて特徴の無い
だが、タイヤやアンダーカウルの細かい傷
何よりも
見ただけで分かる、目に見えない
それは間違いなく、あの
「何か?」
振り返ると、均整の取れた体に浅黒く日焼けした男が
ブラックの缶コーヒーを持って立っていた
(続
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