同志社混声合唱団(東京)でお世話になったS橋さんから第52回新美展のご案内を頂いた。新美展は全国公募の美術展のようだが、S橋さんの作品3点が入選を果たし、内1点が「奨励賞」を受賞したとのこと。これは見に行かねば、と上野の東京美術館へと急いだ。



パンフレットを見ると、S橋さんの作品は「マチュ・ピチュ」、「京女 実光院庭園にて」、「鞍馬の火祭り」とある。なんとなく、受賞されたのは「鞍馬の火祭り」のような気がしたのだが、この予想が当たった。


燃え盛るたいまつの炎と、その下にうごめくふんどし姿の男たち・・その炎の熱や男たちの息遣いが伝わって来るように感じる勇壮な作品だった。しばらく絵の向かい側にあった椅子に座って眺めていたが、何人かの方が足を止め、この絵に見入っておられた。


「京女 実光院庭園にて」は打って変わり、夏の夕暮れだろうか、団扇で風を送りながら親しく話す二人の女性の後ろ姿を描かれている。深みの異なる緑に真っ赤な敷物が鮮やかだったが、左の女性のピンクの浴衣が絵をとても柔らかで温かな作品にしていたように思う。


「マチュ・ピチュ」は何としても訪れたい場所なので、しばらくじっと眺めていたが、ここに住んでいた人々は既に亡くなって建物だけが残り、その建物もいずれは風化するのだろうが、背景にある山々と雲はこれからもずっと存在することに気付いた。S橋さんもそう思われたのだろうか。今度、聞いてみよう。

東京バーバーズショウのコンサートに出掛けた。いつも感心するのは、全て「暗譜」、しかも「英語」、 更にはリズムに合わせて踊ったりもされる。だから、練習の成果を発表したいというよりは、あくまでもお客様に楽しんで頂きたいという精神がステージから伝わってくるコンサートだ。



今回のコンサートはゲストも素晴らしかった。2003年に大学のメンバーで結成された Vocal Spectrum という4人組のグループで、2004年にはバーバーショップ国際大会のカレッジの部で優勝、2006年には一般の部で優勝という輝かしい実績を有し、2023年にはバーバーショップ・ハーモニー・ソサイエティの殿堂入りを果たしておられる。

パンフレットのそういう紹介から期待に胸を膨らませて演奏を待ったが、最初の曲「Go the Distance 」(ディズニーアニメ「ヘラクレス」の主題歌)を歌い始められた途端、会場がシンと静まり返り、その後、ため息が回りから聞こえて来た。私は思わず隣にいた三女と顔を見合わせたが、歌声が心に染み込んで来るような、美しく透明感のあるコーラスだった。

以後、客席に笑いが起こる演奏もあれば、しみじみと聴き入ってしまう演奏もあり、私にとっては期待を大きく上回るステージだった。又、ベースの声がいつも美しく安定していて、合唱の練習で「ベースが下支えしなくてはいけません」と注意される理由が分かったように思う。

片岡鶴太郎さんの「老いては『好き』にしたがえ!」を読んだ。鶴太郎さんはNHKの朝ドラに何度か出演されているが、「この時代、この場所にはこういう人がいただろうな」と思わせる人物を自然に演じておられ、毎回、感心する。又、鶴太郎さんが描かれた魚の絵を拝見したことがあるが、どこか温かみを感じさせる独特の味がある。鶴太郎さんとは一体どんな人なんだろうと興味が湧いた。



鶴太郎さんは私より一つ年上の午年(1954年)生まれ。お笑い芸人として人気を博しておられたのに役者への転身を決意され、心も身体もリセットが必要とボクシングのプロライセンスを取るほどまで猛練習を開始される。一方では、椿の花を見た時の感動から絵を描き始め、個展を開けるほどまで画家としても成功される。

その他、ヨガマスターとして活躍されたり、三線(沖縄)や落語にチャレンジされたり、とにかく中途半端では終わらない芸達者な方だが、ご本人によれば、心の中にたくさんのシード(種)があり、ふとした瞬間に「発芽したい」というサインを送って来るらしい。そのサインを受けて立ち、凄いのは弛まぬ努力で発芽させ、それらを開花させて来られたことだろう。

私もいろんなことに興味を持ち、チャレンジをしてきたが、継続できたのは合唱とバイオリンだけだし、どちらも「ど素人」レベルだ。鶴太郎さんは何かチャレンジする対象が決まると、その体型同様に不必要と思える時間や用事を全て削ぎ落とされる。私には到底そこまで出来ないが、大変参考になり、又、勇気付けられる内容だった。