最後に、浜先生は「21世紀に相応しい経済モデル」につき次の通り述べておられる。

「世界の自動車産業の例を見ても、合併したところは総じて失敗している。グローバル時代において、大きくなるということは、単なる画一化を招くだけで創造性の触発にはつながらない。」

一理あるように思う。自動車産業に限らず、銀行や保険会社、鉄鋼業でも大型の合併があったように思うが、重複する機能を削ぎ落としたりスケールメリットを生かしてコストダウンすることで強くなれる面があるものの、競合他社と同じような商品やサービスしか提供できなければ「歯止めなき価格競争」から逃れることは出来ないだろう。

「グローバル化とは、皆が同じスタンダードに付き従うことだと考えられてきたが、これは間違いで、巨大化ではなく、むしろ微小化に通じ、ローカルスタンダード、更に言えばマイ・スタンダードの時代なのでは。」

確かにそうかも。供給が需要を上回る市場では消費者に選択肢というか決定権がある。しかも、インターネットの普及で消費者は様々な情報を入手できるし、一方の供給側も規模の大小に関係なく世界に自分たちの商品なりサービスを発信することができる。そういう意味では、規模も資金力も以前程には力を発揮できなくなっているように思う。

その現象の一つかどうかは判断し兼ねるが、2月12日のNHK「クローズアップ現代」で最近人気が急上昇している「大衆酒場」を取り上げていた。どうやら、チェーン展開している居酒屋が苦戦する中、 下町で庶民を相手に、夜になるとおじちゃんおばちゃんが開いてきた大衆酒場が大ブームらしい。日本も規模の拡大を求めるのではなく、アジアや世界の中で独自のローカルスタンダードを作り上げるべきなのかも。
浜先生がアイスランドの金融危機について書いておられた。

アイスランドは人口30万人の小さな国だ。1990年代、アイルランドの経済特区の成功例を参考に、漁業立国から金融立国への転換を図って金融の自由化を進める。インターネットバンキングの手軽さや年利6%という高金利が受け、ヨーロッパ各国から預金が集まる。特にイギリスからは30万人の個人、100以上の地方自治体が預金を行ない、総額40億ポンド(6000億円)もの大金が移動することになる。預金者にはオクスフォードやケンブリッジという名門大学も名を連ねていたらしい。

更には、低金利のドイツ銀行などから資金を借入れ、ハイリスク・ハイリターンのレバレッジの効いた取引を繰り返す。その結果、2006年には国民一人当たりのGDPで世界第3位(日本は18位)にまでランクを上げるが、2008年9月のリーマンショックでたちまち資金繰りに窮し、金融危機が起こる。アイスランド政府は非常事態を宣言するが、「銀行と共に国家も破産の危機にある」と当時の首相が発表したとある。慌てたイギリスは「反テロ法」まで適用し、イギリス国内にアイスランドの銀行が所有していた資産を差し押さえたというから、大変な騒ぎになった訳だ。

驚くべきことに、そういう危機が起こるまで格付け機関はアイスランドの銀行に「AAA」(トリプルエー)を付けていたらしい。「赤信号みんなで渡れば怖くない」には未だ多少の罪の意識や警戒心が感じられるが、格付け機関の「AAA」は青信号に見えたことと思う。

(続く)
浜 矩子先生が2010年に書かれた本だが、全く5年という歳月を感じさせないのは、浜先生の分析や予想通りのことが今も起こっているからだろう。

浜先生

浜先生の言い方を借りると「グローバル化が強いデフレ力学を内包している」となるが、要は、グローバル化するとデフレになるという因果関係の存在に言及されている。

先日来、伝えられている通り、中国の人件費が上昇すると、さらに安い人件費を求めてバングラデシュやミャンマーに工場が移転を始める。その結果、歯止めのない安売り競争が今も続いている。すなわち、物の値段と人(労働力)の値段を巡って激烈な競争が世界レベルで起こると、これがデフレを助長する訳だ。「ユニクロ型デフレ」とは、このグローバル化が引き起こすデフレのことをおっしゃっている。

一方では、金融の世界もグローバル化され、かつてない程の規模でお金が世界を駆け巡る。投資や投機と呼ばれるこれらのお金は利益を求めて儲かりそうなところに集中するから、結果として「資産インフレ」が起こる。浜先生はこれを「実物デフレと資産インフレの共存」とおっしゃっているが、今まさに日本で起こっている現象ではないかと思う。

(続く)