齋藤ジンというワシントンのコンサルティング会社の共同経営者が「世界秩序が変わるとき」(文春新書)という本を出している。副題は「新自由主義からのゲームチェンジ」、帯には「ソロスを大儲けさせた伝説のコンサル」、更には「中国の衰退、日本の復活」とまで書かれていたから、買わずにはいられない気分にさせられた。



読み始めたら止まらなくなってしまったが、私が生きてきた時代のことが論理的に分析され、それが平易な言葉で語られているから、なるほど、そういうことか、と納得できることが出てきた。特に、米国を覇権国家と定義し、その地位を脅かす存在が出てきた場合には迷わず叩くという説明には説得力があった。


日本は第2次世界大戦で米国に完膚なきまでに叩かれるが、戦後は米国と対峙するソ連を叩くには強い日本が必要との判断から、米国は日本の復興を後押しし、奇跡と言われた経済成長を実現させる。しかし、ソ連が崩壊して日本を特別扱いする必要がなくなり、1990年代中頃に日本のGDPが米国の7割まで達すると、今度はさまざまな規制や日米構造協議の名の下に日本叩きを始める。

日本はその後の失政もあり「失われた30年」を経験するが、その間に急成長を遂げた中国が米国にとって新たな脅威となる。そこで、米国は中国を叩くために強い日本を必要とし、再び日本の経済復活に手を貸すだろうという筋書きだった。そこまで読んだ直後に、石破さんが訪米され、トランプ大統領とのにこやかな会談が報道されたから、「さもありなん」という感想を得た。何が正しいのかは分からないが、先ずは何が起こるかをちゃんと見ようと思う。

毎日新聞の朝刊に仲畑貴志さん選出の川柳コーナーがある。ときどき覗いては、世の中にはこんなにも鋭い観察眼と巧みな表現力をお持ちの方がおられるのかと感心する。



一昨日、「秀逸」に選ばれていたのはラグビーを詠んだものだった。


「ラグビーをよくぞ呼んだぞ闘球と」


ラグビー経験者なら選手時代に味わった痛みを懐かしく思い出すのでは。この作品以外にも「上手いこと言うなぁ」と感心した川柳があった。


「同期会やっていないと思ってた」

私にも案内の来ない同期会があるかも(汗)


「賢人会照れてる人は誰も居ず」

私が呼ばれることはないだろうが、万一呼ばれても末席に座ろう(笑)


そして、私が選んだ「秀逸」は次の作品。


「あちこちを傷付け丸くなった石」


最近、「ボルさん、表情が柔らかくなりましたね」と言われる。多分、回りの人たちにきつく当たって傷付け、それを後になって気付いて反省し、少しずつ相手のことを思いやれる大人になってきたのだと思う。


まだまだ尖っていると思うので、今後は私の尖りレベルでは傷付きそうにない、タフな人を探そうと思う(笑)

毎日新聞夕刊の第1面に母校の名前とチャペルの写真が出ていたので、何事かと思って読み始めたら、戦時下の同志社で学ばれた韓国の国民的詩人、尹 東柱(ユン ドンジュ)さんに関する記事だった。



尹さんは熱心なキリスト教徒で、1942年10月に同志社大に入学されるが、抗日独立運動への関与を疑われ、43年7月に逮捕されてしまう。その後、京都地裁で懲役2年の判決を受けた尹さんは福岡の刑務所に移送され、45年2月16日に獄死されている。


大学キャンパスには没後50年を記念して建てられた詩碑があるが、没後80年に当たる今年、学長の小原先生が「戦争の時代の同志社には明るい部分だけではなく誤りや失敗もある。その時代を象徴する人物に光を当てることで、当時の課題が今の私たちに投げかけていることを確認しよう」と学内で呼び掛け、検討を重ねた末、尹 東柱さんに名誉博士号を授与することが決まったらしい。素晴らしい決定だと思う。


記事は結びに、尹 東柱さんの詩碑に刻まれた詩を紹介している。韓国が日本の植民地下にあった1941年の作で、悲しみや憤りと共に、それを乗り越えようという強い意志や希望も感じるから、尹さんは特別な思いを抱いて同志社に来られた筈だ。今年は同志社開学150年の年でもあり、同志社のあり方を考えるに相応しい課題だと思う。


死ぬ日まで空を仰ぎ

一点の恥辱(はじ)なきことを、

葉あいにそよぐ風にも

わたしは心痛んだ。

星をうたう心で

生きとし生けるものをいとおしまねば

そしてわたしに与えられた道を

歩みゆかねば。

今宵も星が風に吹き晒らされる。