第三部は再びコーロ・カステロがステージに上がられ、ロシアとドイツの歌を披露された。

最初に歌われたのはロシア民謡の「黒い瞳」で、司会の方が予告された通り、歌の最後に、あぁ、という溜め息が出て来たので、観客席から笑いが漏れた。これはジプシーの女性に心を奪われた男の歌とのことだから、男なら理解できる溜め息だろう。女性にあの溜め息は出せない(笑)

逆に、次に歌われた「赤いサラファン」は嫁入りを控えた娘と母親の会話とのことだが、少しもの悲しく響くアコーディオンの音色と淡々と歌う男声合唱が、嬉しくもあり淋しくもある母娘の会話を上手く表現されていたように思う。

「ヴォルガの船曳歌」は男声合唱が最も映える歌のように思う。歌の解説にイリヤ・レーピンという画家が船を曳く男達を描いているとあったので、早速、調べてみた。この絵がそうだと思うが、こういう男達の苦しさや哀しさ、意地のようなものをコーロ・カステロが生々しく表現されていた。


ドイツの歌は二曲歌われたが、その内の一曲が歌劇「タンホイザー」の「巡礼の合唱」だった。歌劇タンホイザーは官能の世界と現実の世界を往き来してしまう騎士タンホイザーを描いたもので、最後に彼は悲劇的で皮肉な末路を迎えることになるが、その場面で歌われるのが「巡礼の合唱」とのこと。こういう魅力的だか、誘惑に負けてしまう男の歌は、やはり男にしか歌えないだろう。コーロ・カステロがこの歌を上手く歌えるのは、どこかにタンホイザーに共鳴できる気持ちがあるからか。

今回もコーロ・カステロのコンサートを楽しませて頂き、これで心置きなく冬を迎えることができる。ただ、正直言うと、満足度という点では少し物足りなさを感じてしまった。ステージに立たれた人数が例年より少なかったのか、はたまた、会場が大きすぎたのか、と考えたが、多分、私の期待値が年々上がっているからそう感じたのだろう。歴史も実力もある合唱団は期待値も高くなって大変だと思うが、これからも多くの人を魅了する合唱団であって欲しいと思う。

「帰れ、ソレントへ」というカンツォーネで独唱された方にも大きな拍手が送られた。司会のSさんが上手いことおっしゃっていたが、「フェルマータがたくさん出てきて大変だったと思います」という曲だったので、歌に込められた感情や思いを表現するには相当の肺活量と体力が必要だったと思う。お見事!

 

第一部の途中で、ピアニストのMさんと、Mさんの専属フメクリストであるご主人が紹介された。このお二人はコーロ・カステロにとって欠くことのできない方々なのだろうが、私もお二人を見るとホッとする。コーロ・カステロの長所も短所も知り尽くしたお二人の使命感のようなものを感じるからか。私が言うのも変ですが、これからもコーロ・カステロを宜しくお願いします(笑)

 

第2部は、66年前に当時成城中学の生徒だった小澤征爾さんが中心になって作られた合唱団「城の音」のステージだった。メンバーの4割の方が80代になられたとのことで、「生きた化石合唱団です」と自ら紹介され、笑いを取っておられたが、皆さん大変お元気で、きれいな四部合唱で4曲を歌われた。

 

「The Lord bless you and keep you」は「主があなたを祝福し守られますように」という歌のようだが、最後のアーメンコーラスがとても美しかった。その次に歌われた「赤とんぼ」も美しい合唱で、秋の澄んだ空気に相応しい歌声だったように思う。今年も小澤征爾さんがひょっこり顔を出され、皆さんと一緒に歌われるのかなと期待していたが、ハワイにおられるとのことで、お電話だけあったらしい。小澤征爾さんが歌われるところなど先ず見られないから、ちょっと残念。

 

(続く)

今年もコーロ・カステロのコンサートに出掛けた。このコンサートを聴くことなく冬は迎えられない・・というところまで、私の一年には欠くことのできないイベントになった。

 

第一部は滝廉太郎作曲の「箱根八里」に始まり、タンザニア、インドネシア、スコットランド、アイルランド、イタリア、アメリカ、そしてメキシコの歌が披露された。

 

コーロ・カステロらしいと感心したのはインドネシア民謡の「リソイ」だ。乾杯を意味する曲名の通り、ステージから瓶と瓶が当たる音がしてきたかと思うと、袋の中からビール瓶が出てきて指揮者のT先生やメンバーの回し飲みが始まった。その動きが如何にも楽しそうだったのだが、歌声以外に笑い声が聞こえてきて、周りの人たちまで、皆さん、つられて笑い出した。サービス精神旺盛なコーロ・カステロらしいステージだったと思う。

 

 

逆に、観客席がしーんとなり、ステージの演奏に聴き入ったのはアイルランド古謡の「ロンドンデリーの歌」だ。指揮者のT先生が美しく張りのある声で情感たっぷりに独唱され、聴き終わったときには溜め息が出た。隣に居られたご婦人も同じように思われたのか、「素晴らしい歌声でしたね」と話し掛けて来られた。

 

この「ロンドンデリーの歌」からUさんがフルートで参加されていたが、そのあとソロで演奏された「シチリアーノ」は少し物悲しく哀愁の漂うメロディーに柔らかな音色のフルートがピッタリ合っていて感動した。次に演奏されたのは「結んで開いて」の変奏曲で、最初は「えっ?」という驚きの声が上がったように思うが、その後、転調したりリズムを変えて様々な「結んで開いて」が出てきたので、最後には感心しましたという大きな拍手が湧いたように思う。誰もが知っている曲で感動を与えるというのは凄いことだと思う。

 

(続く)