私が人生の師と仰ぐ TKさんからメールを頂いた。腰を痛めていることをご存じなので、「調子はどう?」で始まるメールだったが、その後、ご自身も調子の悪いところがあることに触れられ、最後は「しかし、一番厄介なのは精神の老化かもね?」で締めくくられていた。

なるほど、と思ったので、しばらく考えた後、「私は大丈夫です、精神の老化などしていません、と力強く答える人ほど危ないかも知れませんね。精神の老化=自信の塊り、だとすると、身体と違って痛みや痒さの自覚症状が無いから不安になることもなく、一気に老化が進むかも知れません。大体、年を重ねると、自信を失いたくないから、新しいことに挑戦しなくなるのが普通ですもんね」と返したら、珍しく褒められた。


親父が「上手に歳を取らなアカン。これが意外に難しい」と言っていたのを思い出す。そのときは歳を取るという実感すら私にはなかったから、ついつい聞き流してしまったが、ちゃんと聞いておけば良かった。多分、見苦しい老人にはなるなということだろうから、紅葉のように美しくはなれないだろうが、簡単に落ち葉にはならないぞ、とひと踏ん張りしてみようかと思う。
第4部は再びコーロ・カステロが登場され、ウクライナ民謡の「オレーグ公」、ソ連時代の「バイカル湖のほとり」、そしてロシア民謡の「ヴォルガの船曳歌」を歌われた。いずれもコーロ・カステロの十八番(おはこ)のように思うが、中でも哀愁漂う「ヴォルガの船曳歌」は辛くとも辛いと言えない男の意地や悲哀を感じさせる歌で、女声合唱団や若手の男声合唱団ではあそこまで深い味わいは出せないと思う。これからもコーロ・カステロにより大事に歌い継がれて欲しいと思う。

その後、舞台はドイツに移り、メンデルスゾーン作曲の「船の旅」、ドイツ民謡の「静かな谷間」、シューベルト作曲の「夜」と「菩提樹」の4曲が歌われたが、そこでクラーククラブが再び舞台に上がってこられ、総勢70名となった男声合唱により歌劇タンホイザーの「巡礼の合唱」が歌われた。それまではコーロ・カステロの歌声を心地よく聴いていたのだが、歌い手が70名に増えると迫力が違う。読んで字の如く、その違いを「体感」することとなったが、私は力強く伸びやかな男声合唱で大変良かったと思う。


これこそ初の試みだったと思うが、合唱曲の中には大人数の方が表現し易くなるものもあるように思うし、私は合唱には素人だからトンチンカンなことを言うかも知れないが、この70人の男声合唱で歌う「ヴォルガの船曳歌」を是非聴いてみたいと思った。

コーロ・カステロには守って来られた世界があるように思うし、それを支えて来られたファンも大勢おられるが、私は毎回のコンサートで必ず何かしらサプライズがあるのがコーロ・カステロの魅力だと思う。これからも伝統に胡座をかくことなく、新しいことにチャレンジして私たちを驚かせたり温かい気持ちにさせるコーロ・カステロであって欲しいと思う。
第2部はコーロ・カステロの弟分と自己紹介される合唱団城の音のステージで、「The Lord bless you and keep you」、「Juanita」、「御霊なる清き神」の3曲を歌われた。成城学園中学校時代から讃美歌を中心に歌っておられる方々で、何度かメンバーだった小澤征爾さんも出演されている。今回も安心して聴ける美しいハーモニーで、特に3曲目の「御霊なる清き神」が素晴らしかったように思う。

第3部は今回初の試みとなった成城学園以外からの参加で、北海道大学男声合唱団OBで首都圏にお住まいの方々が組織されたクラーククラブが男声合唱組曲「終わりのない歌」から3曲、J-POPから「夢の中へ」、「瑠璃色の地球」、「乾杯」の3曲を歌われた。


コーロ・カステロの白のジャケットに対し、クラーククラブは黒のスーツに身を包んで登場され、その違いだけで「おおっ」という声が上がったが、歌声はコーロ・カステロの約2倍の頭数があったせいか大変力強く迫力があった。ただ、「終わりのない歌」は恋の歌という紹介があったから大丈夫かなと心配したのだが、歌詞に出てくる「忘れないように君を見た」とか「最後に君のそばで会おう」という男の純情が見事に表現され、コーロ・カステロとは一味違う男声合唱に新鮮な感動を味わった。

J-POPの中では「乾杯」が一番良かったように思うが、クラーククラブも年配の方が多いように見受けられたから、多分、皆さん長い人生経験から豊かな感情をお持ちで、歌詞やメロディがさまざまな思いや感情を引き出して来るのかなと思った。

(続く)