そこで、「ハンマーしか持っていなければ、全てが釘に見える」とは誰の言葉だろうと調べたら、アメリカの心理学者、マズローの言葉だと分かった。マズローは「欲求5段階説」を唱えたことで有名らしい。

欲求5段階説とは、人間には5段階の欲求があるという考え方で、先ずは生きるために最低限必要な生理的欲求、これが満たされると、安心して暮らせる環境を求める安全欲求が出てくるとされる。これも満たされると、今度は自分を受け入れてくれる家庭や組織を求める社会的欲求、そして更には、所属する家庭や組織、社会の中で高く評価されたい、自分の能力を認められたいという承認欲求が出てくるらしい。

私は平和な日本で生まれ育ったから、生理的欲求や安全欲求を強く意識したことはないが、社会的欲求や承認欲求は良く分かる。そういう欲求があったし、それが努力のエネルギー源にもなったと思う。幸いにも、これらの欲求は満たされたように思うが、問題は5番目に出てくる自己実現欲求だ。

ここで明確に「こうありたい」「こうなりたい」「こうしたい」と言える人はどれくらいいるのだろう。4番目の承認欲求が満たされていると居心地が良いし、能力のある人ほどそれを頼る人たちに囲まれ、ついついその場から離れられなくなってしまうこともありそうだ。

(続く)
ある方からメールを頂いた。私の近況を報告し、もうすぐ66才になるけれども、まだまだ変化がありそうだ、とお伝えしたことに対する返事だ。

「If all you have is  a hammer, everything looks like a nail. という言葉があります。ハンマーしか持っていなければ、全てが釘に見え、ハンマーで解決しようとしてしまう、という意味でしょうか。もしそうだとすると、ハンマーを捨てれば新しい価値観や考え方に出逢い、これまでとは違う世界に入って行けるとも言えそうです。」

短いメールだったが、環境が変わるなら、これまで使ってきたハンマー、すなわち、考え方や生き方、価値観を捨ててみてはどうか、という提案だろう。なるほど、いつもながら、そのときの私に適切な助言をくださる方だと感心した。

学生時代のハンマーは体力と素直な性格、社会人になってからは知識と経験、その次は回りの方々と協力し合えるネットワーク作りか。ただ、新型コロナが世の中を大きく揺さぶり、各々のハンマーを持った皆さんと一緒に、緩かに降るエスカレーターに乗ってしまったような感覚がある。多分、そういう状況下で、本能的にこれまでのハンマーでは何か足りないと感じていたからこそ、この言葉が胸に響いたのだろう。

(続く)
五重の塔という多肉植物がある。仏塔のように、葉が積み重なるように育っていくところから命名されたものと思うが、我が家の五重の塔が今年も可憐な花を咲かせた。


中央から茎が真っ直ぐに伸び、


途中で枝分かれして、左側にいくつかの蕾と今まさに咲こうとする花。


右に伸びた茎にもいくつかの蕾と、開いたばかりの花が。

「ここは陽が当たりすぎて暑い」とか「この間は水が足りなくて辛かった」とか「下手なバイオリンは週に2回までにしてくれる?」とか、文句一つ言わないで、毎年花を咲かせてくれる五重の塔を見ると、本物の五重の塔にお詣りするより和やかな気持ちになる。