去年の2月に映画館で観た「ヒプノシス~レコードジャケットの美学」のメディアが発売しました。

これがアマゾンとかなら、買うつもりはさらさらなかったのですが、さすがディスクユニオン。レコードジャケットアート集団ヒプノシスなだけに、予約特典にLPジャケットが付いてくるとは。
タワーレコードでもできない芸当だから、これは貴重でしかない。
昭和世代には、70から80年までは、名作のロック音楽が溢れる時代で、さらにそのレコードジャケットアートも音楽と対等できて、このジャケットのデザインは誰だろうって、クレジットを見ることが多かった。そして謎のヒプノシスがクレジットに登場するのだ。
レコードを聴き漁るうちに、このジャケットはもしかして、ヒプノシス?ってぐらいデザインの傾向が見えてきたりもした。
しかし当時は、今と違って情報が一切なく、謎のアート集団でしかなかった。
80年に入りポップカルチャーが流行り出し、MTVの時代に突入し、ヒプノシスは解散した。
その立役者は、ストーム・トーガソンと相棒の写真家オーブリー・“ポー”・パウエル(ジャケットの人)。
当時の松任谷由実が、ヒプノシスを起用したのが「昨晩お会いしましょう」。

その後、松任谷由実のミュージックビデオ「コンパートメント」は、ヒプノシス解散後にストーム・トーガソンに依頼したもので、オーブリー・“ポー”・パウエルのクレジットもある。
映像のダンスシーンは秀逸で、「ハートブレイク」の雨の中のダンスシーン、「DESTINY」のダンスレッスンシーンは、映像なのに写真に切り抜いても良い構図ばかり。室内の光の入り具合は、良い演出で素晴らしい。
このビデオの特典映像には、ストーム・トーガソンのインタビュー映像があって貴重でしかない。
今回の映画は、ストーム・トーガソンはすでに亡くなり、残ったオーブリー・“ポー”・パウエルが振り返ったヒプノシスの話である。
クレイジーな天才ストーム・トーガソンは、過去の人でしかないので、松任谷由実の映像の方で、ストーム・トーガソンって人柄が見えてくる。
彼らの学生時代からの仲間だったピンク・フロイドから、ヒプノシスはスタートし、ツェッペリン、ポール・マッカートニーetcと仕事が舞い込んで来る。ストーム・トーガソンは予算度外視のアートだけを考える人で、最後は破産して行く。
「バンド・オン・ザ・ラン」のジャケットは、ポール・マッカートニーのラフ案からストーム・トーガソンが具現化した。最初に目にした時は、映画のワンシーンだと勘違いしたぐらいで秀逸なデザインだ。

エベレストの山の上に30kgの像を置くというポール・マッカートニーのアイデアで、オーブリー・“ポー”・パウエルが撮影したもの。当時、このレコードジャケットを目にして、良く分からなかったので、今回初めて理解できました。
ポールのアイデアとストーム・トーガソンとはぶつかり合い、時にはストーム・トーガソンが抜けて、オーブリー・“ポー”・パウエルに任せてしまうことも。

10ccの「アイム・ノット・イン・ラヴ」の入った「The Original Soundtrack」のジャケットデザインは、意外でした。デッサン力のあるメンバーがいるんだなと思ってました。
Wikiでは、イギリスの画家ハンフリー・オーシャンの鉛筆画とあります。映像の方では本人が登場しながら、名前が表記されてなく、誰だか分かりません。
「The Original Soundtrack」という題名らしく、映画に関係したジャケットデザインを作りたく、面白そうな映画機材を色々と撮影して、実在しない編集室を描いたのが、ハンフリー・オーシャン。
20代の当時の彼が、機材に掛けてあった手袋の描き方に満足が行かず、そのまま出来上がりを見せたら、素晴らしいと絶賛されたのに、途中から現れたストーム・トーガソンから一言、「手袋が残念だな」って、一瞬で見抜かれた。
彼がここまで語るだけに、名前をあえて伏せたのも映像監督の粋な計らいなのでしょう。
オアシスのノエル・ギャラガーが、インタビューで時々登場します。
なんか世代が違うようにも感じたのですが、現代の視点でヒプノシスへの憧れを語っている。
「なぜヒプノシスを起用しなかったのですか?」(自分の作品に)
「そんな金は無かったよ」
10ccの「Art for Art's Sake(芸術こそ我が命)」が流れ出すところのオチが何とも良い。
昨今のレコードブームなら、この映像でヒプノシスを知ることもあって良いと思いますね。
当時から、HIPGNOSISのクレジットを目にしてた私でも、謎のヒプノシスをやっと初めてこの映像で知りました。
昭和世代の私には、レコードのアナログ音とかの憧れも興味はなく、LPサイズのジャケットが、CDに比べたら印象強い点が、レコードってアートだなって再確認しました。