映画「ファイナル・プラン」 | 日々是本日

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 映画「ファイナル・プラン」(原題:Honest Thief)は2020年製作、マーク・ウィリアムズ監督のアメリカ映画である。

 

 主演はリーアム・ニーソン、共演女優はケイト・ウォルシュである。

 

▼映画「ファイナル・プラン」公式サイト

<STORY>

カーターは全米のあらゆる金庫を爆破するスゴ腕の銀行強盗だったが、偶然に出会った女性アニーと恋に落ち、過去を捨て新たな一歩を踏み出したいと願う。
彼はすべての罪を告白するべくFBIに出頭するが、2人の捜査官はカーターの盗んできた金を横領し、彼もアニーも危険に晒される。
「あとは俺の方法でやらせてもらう」カーターは愛のため、すべてにケリをつけるため、持てるすべての火薬に火を放つ最後の復讐計画=ファイナル・プランに挑む!

公式サイトより引用

 

 リーアム・ニーソン主演のアクション物としては、以前に取り上げた「96時間」シリーズがある。

 

 

 この系統の作品は特にリベンジ・アクションと呼ばれており、本作品がリーアム・ニーソン主演のリベンジ・アクション最新作ということになる。

 

▼予告編はこちら

 

 原題は「Honest Thief」なので、「正直な泥棒」あるいは「正直者の泥棒」ということで、敵は正義の側のFBI捜査官である。

 

 リーアム・ニーソン演じる主人公・カーターは爆発物のプロという設定なので、従来のリベンジ・アクション物よりもリーアム・ニーソンのアクションシーンは控えめであったが、その分、脚本が良く出来ていた。

 

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---以下、ネタばれあり注意---

 

 

 この作品を紹介することにしたのは、アクション作品としての脚本の出来具合にグッときたからである。

 

 まず、善は正直者の泥棒の方であり、悪は正義の側のFBI捜査官であるという設定が面白い。

 

 泥棒は人生をやり直そうとして善の心から自首しようとし、盗まれた金を返されたFBI捜査官は金に目がくらんで悪に走るのである。

 

 まるで、個人の心の中の善と悪の争いを具現化しているように見えた。

 

 そして、この泥棒の善なる心は徹底的に貫かれる。

 

 盗んだ金と一緒に自首しようとした泥棒・カーターは、担当したFBI捜査官・ニーブンズに殺されそうになる。

 

 更に、ニーブンズは事の発覚を恐れて上司の捜査官を殺し、カーターに濡れ衣を着せようとする。

 

 これに恋人のアニーが巻き込まれて、カーターはアニーに全ての真実を告白する。

 

 この場面で強調されるのが、過去の海兵隊時代でも地雷処理を担当していて人は殺していないし、銀行強盗でも休日に爆弾を使って金庫から金を盗んでいたので人は殺していないという点である。

 

 盗んだ金額は大きいが人は殺していないという泥棒に対して、FBI捜査官は大金に目がくらんで上司を殺しカーターも殺そうとしている。

 

 ニーブンズの相棒の捜査官・ホールは、最初は金のために共犯となるが、上司を殺しアニーまで殺そうとするニーブンズについていけなくなり葛藤する。

 

 善悪の間で揺れる心の葛藤を上手く盛り込んでいた。

 

 ここで、ニーブンズが殺した上司の殺害事件を調査することになった別のFBI捜査官・マイヤーズは事件の真相に気づいて、カーターに今からでも自首をするように言うがカーターは、

 

「あとは俺の方法でやらせてもらう」

 

と言い放って最後の復讐計画に着手する。

 

 これが邦題の「ファイナル・プラン」である。

 

 ここからがまた、なかなか面白かった。

 

 アニーの安全を確保した数日後の朝、仕込みを終えたカーターはニーブンズの自宅の前に張り込んで、ニーブンス本人に電話をした。

 

 そして、自宅に爆弾を仕掛けたことを告げたのだった。

 

 爆破された自宅から間一髪で逃げ出したニーブンズは、金の隠してあるFBIのアジトに逃げた。

 

 そこに呼び出されたホールが来たところへ、カーターが乗り込んで乱闘になる。

 

 ニーブンズはホールを撃って、またもや逃げ出す。

 

 車で逃げるニーブンズにカーターはまたもや電話をかけて、座席の下には圧力式の爆弾が仕掛けてあり立てば爆発すると告げる。

 

 そして、爆弾処理班を呼んで自首するように伝える。

 

 ここから最後の逃走劇があるのか、あるいは悪が滅ぶ爆発劇があるのかと思ったらそうではなかった。

 

 座席の下に爆弾があるのを確認したニーブンズは、車の座席に座ったまま爆弾処理班を呼んだ。


 爆弾処理班の男はニーブンズを座らせたまま爆弾の解体を行い、爆薬はあったが起爆装置はなかったと報告した。

 

 してやられたニーブンズは、駆けつけたマイヤーズに逮捕された。

 

 カーターは誰も殺さなかった。

 

 いい意味で期待を裏切られたし、観ている方もしてやられた感じがした。

 

 上手いねぇ。

 

 結局のところ死んだのは、仲間によって報いを受けた共犯のホールと、とばっちりで殺されたニーブンズの上司であった。

 

 ホールは死ぬ設定ではなくてもよかったように思ったが、最後に改心したので救いはあったということだろう。

 

 とばっちりで殺された上司は浮かばれないと言えば浮かばないのであるが、これが上司の責任でもあるということならば、上司の職責はなかなかに厳しいと言わざるを得ない。

 

 予告編はあからさまにリーアム・ニーソン主演のリベンジ・アクションを謳った作りになっているが、脚本は善悪を逆転させて、善と悪と揺れ動く人間心理そのものをカーターと二人のFBI捜査官の三人に振り分けて描いているように思われた。

 

 「96時間」シリーズのような派手さはなかったが、アクション物でありながら個人の心理そのものを描く主旨で練られた脚本にグッときた作品であった。

 

 脚本の担当を確認したところ、マーク・ウィリアムズ監督とスティーブ・オルリッチということだったが、スティーブ・オルリッチについては目ぼしい情報がなかった。

 

 これからのクライム・アクション作品は、犯罪組織のような巨悪に立ち向かう派手な作品よりも、個人の心理を中心に描いた良作が増えてくるのかもしれない。

 

 

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