映画「ひまわりと子犬の7日間」は2013年製作、平松恵美子監督の日本映画である。
<ストーリー>
ある冬の寒い日、母犬と生まれたばかりの子犬が保健所に収容される。
母犬は近寄る人すべてに激しく吠え、懸命に子犬を守ろうとしていた。
一匹でも多くの犬を助けるため、里親探しに奔走する職員の神崎彰司は、母犬の心を開かせようと奮闘する。
彰司の娘は、もう一度太陽の下で生きていけるよう、母犬に「ひまわり」と名付けるが、その願いもむなしく、犬たちの命の期限は刻一刻と近づいていた-。
人間の仕打ちに心を閉ざしてしまった飼い主のいない母子犬と、 彼らを守ると決めた保健所職員が起こした、奇跡の実話。※上記バナーのAmazon商品サイトより引用
主人公の保健所職員を堺雅人が演じており、中谷美紀が獣医役で共演している。
原案となった実話本は下記。
▼山下由美「奇跡の母子犬」PHP研究所2008
平松恵美子監督によってノベライズもされている。
▼平松恵美子「ひまわりと子犬の7日間」集英社文庫2013
主人公と母犬とのコミュニケーションだけでなく、様々な事情で保健所に収容された犬は7日間の保護期間の後に殺処分されるという現実もしっかり描いていた。
犬を飼いたいという子どもに見せたい映画としては、「犬と私の10の約束」が挙げられるが、人の都合で捨てられた犬の末路まで見せるのであればこの作品も挙げたい。
▼映画「犬と私の10の約束」
監督:本木克英
主演:田中麗奈
---以下、ネタばれあり注意---
全体としての話の中心はやはり主人公が母犬の心を開かせて、人とのコミュニケーションを取り戻していくという所にある。
主人公の保健所職員・神崎彰司は、子どもの頃に言葉を喋れない動物の心の友達になろうと思って、動物園の飼育員になったという過去があった。
そして、この気持ちを思い出すことが神崎の行動の支えになっていく。
この気持ちは、多くの人が最初に犬を可愛いと思う気持ちに通じるものがあると思う。
しかし、人の都合で犬は捨てられていく。
この気持ちを思い出してもう一度、犬とのあり方を考えていこうよというメッセージが込められているように思われた。
また主人公の娘が、父親は犬の里親探しに奔走する一方で殺処分もしているという仕事の実態を知ってショックを受けるというエピソードは、今の制度のあり方の是非を問うているとも感じられた。
そして、主人公は7日間の保護期間の後に殺処分されるという規則を破って、母犬と心を通わせて自分が里親になるという結末に感動した……
いや、感動しなかった訳ではないが、それはこの記事を書くことにした理由ではない。
7日間の保護期間の後に殺処分されるという規則の中で奮闘する主人公の描き方が良かったからである。
上司に叱責されながらも保護期間を延ばして里親を探しをするが、殆どの犬は最終的に自分で殺処分しなくてはならないという、社会制度の管理下における個人の無力さをそのまま描いていて潔かったというのがこの作品の一番の感想だったからである。
このことをもっと前面に描いた作品もあるだろうが、恐らく実話ベースであった為だろう、何か特別なことができる訳ではないから、せめて自分にできることを精一杯やろうとする主人公が率直に描かれていた。
制度を作れば誰かがそれを具体的に運用することになるのであり、その人達の働きによって社会は維持されているのである。
人と犬との関係をよく考えることも大切だし、制度の是非を問うことも必要であるが、そもそも作られた制度の限界の中で最善を尽くしている多くの人達のことをもっとよく考えたほうがいい。
誰かがやってくれているからそれでいい、ということにはならんだろう。
そしてことをもっとよく考えることは、そのことについて、その制度についてどういうあり方がいいのかを考えることに繋がっていく。
動物愛護・動物保護というテーマとは別のところが印象に残った作品であった。