BOOKROOM

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本と本屋が大好きな私の、おすすめする本です。

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「他人を攻撃せずにはいられない人」

                  (片田珠美   PHP新書)

 

私は、精神的に弱るような出来事

(理不尽とか不条理、突発的なことにとても弱い)にぶつかると

粘膜系にトラブルが起こります。

口内炎、ものもらい、胃痛等々は

気弱になって免疫系が下がったしるしです。

 

先週は、妙なトラブルに巻き込まれて

びっくりするくらいの攻撃や罵倒を

一方的にされ続ける、という嫌な経験をしました。

 

その衝撃、混乱、気分の悪さ。不安。気持ち悪さ。

それがきっかけに粘膜系は弱りまくり、

変な微熱も出ました。

そういうしんどい時間に

私が信頼し、私を信頼してくれる人の

「あなたに悪いところはない」

「たまたまその人の、地雷を踏んでしまったという災難」

という言葉といたわりは、本当に身に染みました。

 

ゆるゆる立ち直ってから本屋で出会ったこの本。

数年前に気になりつつも買わなかった本は

今こそ読むべきタイミング、と確信して

いっきに読みました。

 

この本で指摘されている

「他人を攻撃せずにはいられない人」の特徴は

今まで出会った、攻撃欲が異常に高い上司や同僚、

今回のトラブルの相手にぴたりと合致します。

 

彼らの、巧妙な攻撃パターン。

その攻撃欲の理由。深層心理。目標。

彼らが上司になったときの組織の腐り方。

そして、気づくためのチェックポイント。

こちらが備えるべき観察力。

 

こういう相手は、まず変わらないので

話し合えるかも、とか和解、という期待は捨てること。

うまく逃げる。避ける。会わないようにする。

礼儀正しくしつつ、できるだけ話さない。

・・・・・というアドバイスは

今まさに困っている人にも、

今はまだ困っていない人にも

有効です。

「カルテット」(坂元裕二 河出書房新社)

 

この数年、小説とかドラマなどから遠ざかり

フィクションはマンガで十分、

という生活だったのですが

人から勧められた連続ドラマ「カルテット」に

いきなり!はまりました。

ただ、見始めたときにはすでに後半に入っていて

見逃した分が見たくて頭が煮えていたときに

書店で見つけたのが

この、全2巻のシナリオブック。

 

読みこみました。そして、この

 

大事なことは口に出さない、

緊張と安定のぎりぎりのバランスの空間

というのは

向田邦子のドラマであり小説の

「あ・うん」の雰囲気に似ている、と気づきました。

 

高校のころいちばん好きだった作家が向田邦子で

その中でも一番好きなのが「あ・うん」でした。

こういう

「複数の男女が、互いを大切にしながら

あやういバランスを保つ空間」が

30年前も今も自分のツボであることに

自分でびっくりです。

 

年齢を重ねる、というのは

螺旋階段を昇る感覚に似ていて

同じ風景でも高度が違う・・・という感覚を

この2つの作品から感じています。

 

自分が18で親元を離れたときの30年前の感覚と

自分の子供が18で今手元を離れた感覚も

螺旋階段のような感じです。

同じ景色のようで見え方が違う。

そして家族構成が変わったら

いきなり飼い犬の態度がでかくなりました。

偉そうな一人っ子状態。

 

 

「下田直子の手芸術」   (下田直子 筑摩書房)

 

 

最近、身近な30代~40代女子と

仕事や結婚、子育てなどについて

話すことや考えることが続き

ふと、みんな生育歴的に

共通点があることに気づきました。

 

それは

「みな、それぞれの母親たちが持てなかったものを

持つように期待されて育ち、

その期待にがんばってこたえて生きてきた」というもので

その期待はたとえば学歴だったり、経済力だったり、

条件がいいように見える配偶者だったり

女性性だったりするのですが

 

しかし、期待に応えて手に入れたもの

(たとえば母親より高い学歴)を

武器として上手に使う「戦い方」を

母親たちは教えてはくれない。持ってないから。

だから、働き方、人生設計、ひととの関わり方などについて

「手に入れちゃった強そうな武器」を手にしつつ

その武器をうまく使えない生き方をしてしまう。

武器と戦略がずれているし

武器そのものが重すぎて、手に余る。

 

自分自身もそんな感じで育てられてきて、

こういうのはいやだなあと思っていたのに

気づけば自分も同じようなことをしてしまい

自分の持っていない武器を持たせて

戦略は教えないまま

子を世の中に出そうとしているのではないかと

最近気づきました。

そういうたまらない気持ちのとき

いちばん落ち着くのは、手を使って何かを作っているときで

ひたすら編んだり縫ったりしているときは

写経のような気持ちになります。

 

手で何かを作ることにおいての

私のあこがれであり心の師匠である

下田直子さんのこの本。

その作品と作り方を見ていると

波立つものがおさまっていきます。

 

言葉や頭で処理できないものを抱えたときは

とりあえず美しいものを見て、

そして、手を動かす。

そういうときの、大切な一冊。