下田直子の手芸術 | BOOKROOM

BOOKROOM

本と本屋が大好きな私の、おすすめする本です。

「下田直子の手芸術」   (下田直子 筑摩書房)

 

 

最近、身近な30代~40代女子と

仕事や結婚、子育てなどについて

話すことや考えることが続き

ふと、みんな生育歴的に

共通点があることに気づきました。

 

それは

「みな、それぞれの母親たちが持てなかったものを

持つように期待されて育ち、

その期待にがんばってこたえて生きてきた」というもので

その期待はたとえば学歴だったり、経済力だったり、

条件がいいように見える配偶者だったり

女性性だったりするのですが

 

しかし、期待に応えて手に入れたもの

(たとえば母親より高い学歴)を

武器として上手に使う「戦い方」を

母親たちは教えてはくれない。持ってないから。

だから、働き方、人生設計、ひととの関わり方などについて

「手に入れちゃった強そうな武器」を手にしつつ

その武器をうまく使えない生き方をしてしまう。

武器と戦略がずれているし

武器そのものが重すぎて、手に余る。

 

自分自身もそんな感じで育てられてきて、

こういうのはいやだなあと思っていたのに

気づけば自分も同じようなことをしてしまい

自分の持っていない武器を持たせて

戦略は教えないまま

子を世の中に出そうとしているのではないかと

最近気づきました。

そういうたまらない気持ちのとき

いちばん落ち着くのは、手を使って何かを作っているときで

ひたすら編んだり縫ったりしているときは

写経のような気持ちになります。

 

手で何かを作ることにおいての

私のあこがれであり心の師匠である

下田直子さんのこの本。

その作品と作り方を見ていると

波立つものがおさまっていきます。

 

言葉や頭で処理できないものを抱えたときは

とりあえず美しいものを見て、

そして、手を動かす。

そういうときの、大切な一冊。