古川日出男 No.3◇アラビアの夜の種族 Ⅰ◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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海の向こうの大陸からナポレオン・ボナパルトの艦隊が迫る。それに対抗する秘策はーーー1冊の書物!?






◇アラビアの夜の種族 Ⅰ◇

古川日出男



聖遷(ヒジュラ)暦1213年。偽りの平穏に満ちたエジプト。迫り来るナポレオン艦隊、侵掠の凶兆に、迎え撃つ支配階級奴隷(マムルーク)アイユーブの秘策はただひとつ、極上の献上品。それは読む者を破滅に導き、歴史を覆す書物、『災厄の書』―。アイユーブの術計は周到に準備される。権力者を眩惑し滅ぼす奔放な空想。物語は夜、密かにカイロの片隅で譚り書き綴られる。「妖術師アーダムはほんとうに醜い男でございました…」。驚異の物語、第一部。



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西暦1798年はイスラム教にとっては聖遷暦1213年である。支配階級奴隷(マムルーク)が大きな権力を持つオスマン帝国支配下ーーーだが総督ではなく、23人の知事(ベイ)が実質的な権力を持っているーーーにあるエジプトには海の向こう、つまりヨーロッパから侵略の足跡が近づいていた。かのナポレオン・ボナパルト率いる艦隊だ。



23人のベイの1人、その中では指折りの実力者、大変な読書家のイスマーイール・ベイはその賢さからナポレオン・ボナパルトが500年前の十字軍とは比較にならない、大いなる脅威であることを見抜く。その彼の懸念を拭うように支配階級奴隷のアイユーブは告げる。



「それは書物でございます」

それはとても美しく、物語的な内容は読んだ者を魅了せずにはいられない極上の書物。しかし読んだ者を失踪させる恐ろしい書。翻訳を試みようとするも稀覯本でありたい意志をもってそれを許さない幻惑の書。人はいつしかこう呼ぶようになった。『災厄の書』!



アイユーブはこの書の居場所を突き止め、万全の対策をしてフランス語翻訳に臨むと主張。そしてカイロのある家屋でヌビア人の奴隷と共に語り手の女、ズームルッドによってことは成される。言葉は無から有を、文字は偽から真を作り出し歴史は覆される!



「歴史を食むと、砂の味がします。ーーー」



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「アラビアの夜の種族 Ⅰ」です(・∀・)



「大きな森」を読んで以来、古川日出男が気になっています。最初がああだったので(文庫化になったら再読しよっと思っているので心の底からお待ちしています)ハードル高かったのですが、「犬王」を読んで文体に慣れてきたので、あらすじを読んで気になった本書に行きつきました。



歴史に残るナポレオン1世のエジプト遠征。その裏で行われた前代未聞の対抗策! 醜い醜い王子にして妖術師アダームと蛇の邪神ジンニーアの物語は波瀾万丈、香よろしく暴力と破壊、淫蕩、様々な謀に富み、面白いのですが果たしてアイユーブの目的は? 何故『災厄の書』を形にしよう、と思ったのか? …‥何故無から有を、偽から真を作り上げようと思ったのか? だってものすごく大変なのに……間に合わなかったらどうするんだよ?



そんなこんな疑問を残しながらアダームの物語は「眠り」、新しい物語に移ります…… (・∀・)/