フランス軍は遂にエジプトの砂を踏む、物語は拡張するーーーさながらゾハルの地下迷宮のごとく!
◇アラビアの夜の種族 Ⅱ◇ -The Arabian Nightbeeds-
古川日出男
侵掠したフランス軍壊滅の奇策、「読む者を狂気へ導く玄妙驚異の書物」は今まさにカイロの片隅で、作られんとしている。三夜をかけて譚られた「ゾハルの地下宮殿の物語」が幕を閉じ、二人めの主人公がようよう登場する頃、ナポレオンは既にナイルを遡上し始めていた。一刻も早く『災厄の書』を完成させ、敵将に献上せねばならない。一夜、また一夜と、年代記が譚られる。「ひとりの少年が森を去る―」。圧巻の物語、第二部。
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
アダームの物語は終わった。次の夜からは新しい物語が紡がれる。
次の主人公は2人。1人はアルビノであるが故に捨てられ、異なる種族「左利き族」に育てられた少年ファラー。「黒い種族」に殺されそうになりながらも、自分は実は「そちら側」である、という自らの出自を知った彼は最強の魔術師になることを誓う。
もう1人は正統な王の嫡子でありながら、その王を妬んだ弟によって両親を殺され、詐欺、ペテン、嘘で食べていく盗賊一家に育てられた少年サフィアーン。高潔な血と崇高な性格から両親を義賊にした彼は実は従姉妹であるドゥドゥ姫を恋慕する。
『災厄の書』が語り継がれる中、ナポレオン・ボナパルト率いるフランス軍は遂にエジプトに上陸する。圧倒的な強さとエジプト人には考えも及ばない戦争機械にベイたちは恐怖する。
サフィアーンの住む都市ザハルから地下迷宮が発掘される。その地下迷宮は魔王討伐から始まり、あらゆる人間が入り潜り住み、さながら地下都市として拡張する。ーーー生贄は自らやってくる。
「主人公たちは、瞬間、遭遇をとげたのです。ーーー」
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
「アラビアの夜の種族 Ⅱ」です(・∀・)
妖術師アダームの圧巻な物語は幕を閉じ、新しい夜、つまり第二章。境遇は同じで非なる2人の主人公を中心に、先の夜か甦る!
圧倒されるほどの疾走感! 個性的な登場人物、余すところなく策略、欺瞞に人間の情も絡め、物語は波瀾万丈。
特筆すべきは物語の要、地下迷宮。都市という概念を超えて1つの国家になってる。その描写力が緻密で語り手ズームルッドの口調とピッタリで物語は損なわれない。
これが面白くなくて何であろう?
しかしその間にもナポレオン1世のエジプト侵略は無視できません。どんどん夜は細かくなっていきます。果たしてアイユーブはこの物語をナポレオンに献上出来るのか、というか隠された目的は? そしてアイユーブとは何者か?
全ての夜は朝になる、全ての物語はいつか終わりが来る、全ての謎はいつの日か明かされる。必ずや! いざ、3巻へ! (・∀・)/