二転三転する捜査結果、1942年と2003年の殺人事件、まさにその時、何が起こったーーー?
◇最後の巡礼者・下◇ -Den Siste Pilegrimem-
ガード・スヴェン 田口俊樹 訳
1939年9月1日、第二次世界大戦開戦ーーー。凶報から数日後、オスロに到着したアグネスはノルウェーで活動するレジスタンスのカイ・ホルト、彼の部下である巡礼者(ピルグラム)と合流、ファシズム政党「国民連合」に接触し、ナチスの情報を得るという任務を課せられる。
3年の時が過ぎ、アグネスは親ナチ弁護士の愛人となって情報収集をしていたところを、ノルウェー・ナチの大物グスタフ・ランデに見初められる。グスタフと急接近した彼女は、彼の娘セシリアとも絆を深め、婚約までこぎつけた。ようやくナチス高官と接する好機を得たのも束の間、このアグネスは自らの妊娠に気づく。父親はピルグラムだ。日々重圧が増す中、アグネスと彼は愛し合うようになっていたのだ。だが、その事実を知らないピルグラムは彼女に次の指令を伝える。新たな任務、それはグスタフの懐刀の暗殺だった。
2003年と過去の事件のつながりを追うバーグマンは、3人の白骨死体が発見された直後にクローグが旧知のレジスタンスのもとを訪れていたこと、彼らの同志カイ・ホルトが不審な死を遂げていた事実を掴む。新たな謎を解くため、バーグマンは元歴史研究家のフィン・ニーストロムの協力を得るが、彼はクローグが3人を殺した犯人と断言する。だとすれば、クローグは誰に殺されたのか? その答えを探し、バーグマンはベルリンへ飛ぶ。かつてアグネスを愛したもうひとりの男、ペーター・ヴァルトホルストと会うためにーーー。
日本初登場作家が紡ぐ至高の倒叙ミステリ。
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森で見つかった3人を殺したのはクローグその人だったかもしれないーーーつまりクローグはレジスタンスでありながらドイツのスパイでもある二重スパイだったのだ。しかしそうなるとクローグは誰が殺したのか? 更に3人の白骨死体のうち、1人は女ではなく男の遺体だったことが分かる。ではメイドのヨハンネは生きている?
バーグマンは自殺と見せかけてクローグに殺されたと思しきカイ・ホルトの遺族を調べる。果たしてヴェラという精神疾患を患った娘がいることが分かったが、指紋が一致しなかった。またも道が途絶えてしまった。残りの綱はグスタフもアグネスもよく知っていたペーター・ヴァルトホルストだけだ……
1942年。ノルウェー・ナチの大物グスタフと婚約したアグネスは妊娠に気がつく。ピルグラムの子だ。何も知らずに慕うセシリアに後ろめたく思いながらもアグネスはスパイとしての役目を果たす。つまり暗殺だ。そして遂に……"その時"はやって来た!
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「最後の巡礼者・下」です(・∀・)
最初に……これ、倒叙ものだったのか!! なんの知識もなく読んでいたわ……でもお陰で読むの楽しかった← ……ってことはじゃあ犯人ってまさか……いやでも……そうか、これまさに"その時"、つまりクリスティーが名付けた"ゼロ時間へ"至るまでの話なんだ……すっかり騙された……辛い運命……セシリアも可哀想だけどあなたも可哀想だよ……信じていたのに……
1942年の沢山の死、2003年の1つの死。それに関わった沢山の人たち……それぞれの過去や思惑が複雑に絡み合って、まるで読者の私たちまで雁字搦めにしてしまいます。つまり面白い。書いたのほんとに新人か? でも国防省勤めだもんな……北欧ミステリー十八番の「人間を描き出す」はクリアできるよね。
バーグマンの活躍もさることながらハジャとの恋愛も気になります。続刊があるということなのでまた1つノルウェー・ミステリを読む楽しみが増えました。こんなご時世なので楽しみが増えるということは大変気分が良いことです。
「最後の巡礼者・下」でした(・∀・)/
次は久しぶりのシムノン! ですが、主人公はメグレではなく……?(*^o^*)/