できれば本に埋もれて眠りたい -28ページ目

最後の泥縄本

セルジオ越後, 金子 達仁
警鐘

辛口サッカー評論家、金子達仁、セルジオ越後の対談集。

2002年のジーコ就任からアジア予選までの対談と評論です。


しかし、辛い。そして痛い。


当初は日本-オーストラリア戦前に読んでいたので、「辛口で文句ばかりいって、建設的じゃないなぁ」と思っていましたが、今は痛切にその指摘を感じます。


ジーコについては、試合中の采配については昔から言われていますが、
たとえば「GKからの攻撃を煮詰めろ」とか、具体的な指摘は耳が痛いですね。

ジーコの目指すサッカーが見えないとか。


他にも協会と監督の在り方(協会と監督が一蓮托生でどうする)やJリーグももっと流動性を高めないと野球と同じじゃないかとか、日本サッカーの在り方として補欠をなくせ、とか。

「沈黙は金」で、お互い文句もいわないでやってるからいつまでも「同好会サッカー」だとか。


面白かったのは、「沖縄の選手が攻めて、東北の選手で守る」という発言。

そういうサッカーができたら、たしかに楽しそう。


ともあれ、サッカーを愛しているかの発言なので、今はつらいですが、一応耳を傾けるのもいいかも。

ああ、こんな本、本当は「杞憂だったね」で終わらして欲しいものです。


明日クロアチア戦楽しみにしています。

またまたW杯泥縄本

山本 昌邦
山本昌邦備忘録

しかし、トルシエはそんなに問題のある人物だったんでしょうか。

350ページと結構長い本なのですが、半分はトルシエという人物の理解に費やしています。


内容はトルシエ就任からW杯のトルコ敗戦まで。

近代的なプレッシングサッカーとフラットスリーという戦術とその練習方法を携えて日本にやってきたトルシエですが、その技術は認められても、「人間」という部分では疑問符がつくことも多かったようですね。


そのエキセントリックな性格は、練習メニューや試合スターティングイレブンのメンバーなども当日変更などもごく当たり前だったようです。

そういった部分が、「当意即妙」とも受け取れるし、「自分勝手」ともとれ、山本コーチや選手は慣れるまで時間がかかったようです。


なんにせよ、自分が、自分が、という人間なので、これもいいところも悪いところもありますが、中田と小野がFKを使用として口じゃんけんで蹴る人を決めている様子をみながら

「なんですぐに蹴らないんだ。TVに長く写りたがっているんじゃないか」

と本気で嫉妬するような、行き過ぎ感も多々あったようです。


トルシエ以外の話題としては、山本コーチが試合に望むコンディションを非常に重視していること。

水の取り方から(試合前から徐々にとる必要がある)、時差の時間計算(1時間直すのに1日)、ピッチ状態(フランス戦の大敗はピッチも一因)、アフリカ遠征時の予防注射の準備(そのために3週間前にはメンバーを決める必要がある)など、そういったものに非常に気を使っていて、そういう部分も試合に大きく影響してくるのだな、というのが分かりました。


で、やっぱり山場は2002年W杯日本対トルコ戦。

柳沢、森岡、中田の負傷、西澤、小野の虫垂炎などの条件が重なり、決勝トーナメントに上がって、最後先発メンバーをトルシエ本人だけで決めてしまったみたいです。

山本コーチは、相談してもらえれば、意見も言ったし、選手にもハッパをかけることもできたが、そういったこともできなかった、といっています。

そのことについて山本コーチは、最後の最後、火事場のバカ力的なものを出させる、「あの監督のために」という部分、そこがトルシエにはなかったのでは、と分析していました。


そんな内容を読みながら、山本コーチいい監督になりそうではないですか、と思っていたらジュビロ不振のため監督辞任のニュース。

ああやっぱり監督は大変だ。


昨日の個人的には今大会一番注目していたアルゼンチン×コートジボアール戦の解説もコンディションやプレッシングなど山本さんらしいことをいっていましたが、少し物悲しかったです。


でも、面白い本でした。

W杯攻略本

W杯用のガイドブックに、まずは全体的に網羅したものが欲しく

色々迷った末に買ったのが


『ドイツW杯完全予想』

テレビステーション別冊

ダイアモンド社

590円


です。

基本チームデータと192カードの予想。

決勝だけで28パターン予測しています。


解説陣はメインは粕谷秀樹(テレビコメントで有名。大胆予想が多い)と後藤健生(サッカージャーナリストの重鎮。堅実な予想)。

日本戦については、原博実(元日本代表、予想は普通)、北澤豪(元運動量豊富なMF、予想は日本びいき)も予想しています。


各チームデータはフォーメーションと6人ほどの選手の特徴を紹介。

チーム評価と監督力なども数字化しています。

データとしてはちょうどいいぐらい。


写真の色ももっとよくして、身長があればなおよし、といったところでした。

しかし「テレビ誌が作った究極のW杯予測テレビ観戦ガイド」というのは売り文句になるのでしょうかね。


カード予測量が多いですが、まあそれは愛嬌として、値段も手ごろですし、まずは購入。

さらにいいガイドブックがあれば購入しようとも思っています。


なにかいいガイドブックがあればお教えください。


W杯泥縄本

まだサッカーW杯泥縄本が続いています。

金子 達仁
金子達仁ベストセレクション〈1〉「激白」―INTERVIEWS & OPINIONS

94年、97年のW杯前のインタビューなどを掲載。

今、サッカーライターで一番有名な金子達仁の、出世作とも言える川口のチーム批判のインタビューやオフト監督加茂監督批判がでています。今見ると稚拙のような気もしますが当時、サッカーバブルに浮かれていたときこれだけのことが書けたのはさすが。

スペインに武者修行にいったのがやっぱりよかったのでしょうか。


アトランタオリンピックの記事も、セルジオ越後が強引に呼び寄せた結果書けたことなど、ライター側にもドラマがあることを実感。

自分の記事へのコメントも、スポーツライター同士(×青島健太、×海老沢泰久)も、ちょっと自意識過剰ですが、なかなか興味深いです。




小松 成美
青の肖像

W杯日本大会前の2002年4月までに書かれたインタビュー集。

川口能活 中村俊輔 森岡隆三 柳沢敦 中田英寿


柳沢はこのころも「FWとしてのベストチョイス」をいっています。

ようはゴール前でパスもするよ、ということです。

いいたいことはよく分かるのですが、シュートの正確なFWがもう一人いればいいのですが、いないと点は入らないですよね。チーム内では評判がいいようですが、決定力不足の解にはならないので、困ってしまいます。

でも最近は自分のシュートも巧くなったので、彼の理想形も説得力がでてきたのではないでしょうか。


中田は「理解されないヒーロー」として書かれています。

これがちょっと優等生すぎますね。

中田のクールさを「若くて優秀だがシャイでコミュニケーションをとりづらい人」と理解してあげず、こうやって祭り上げると、変にソフティケイトされてしまう危険があります。

スポーツ紙の文脈で「自分勝手な」という決め付けも問題ありますし、かといってこういうなんでもよしとするのもどうかと思います。

もう少し掘り下げられないかな。


この記事もそんな感じです。

http://wc2006.yahoo.co.jp/voice/nonfic/komatsu/at00009209.html


森岡

元気にしているようで安心しました。http://www.r-morioka.com/index2.html

本のなかでは会社とか起こして大人な感じでした。



村上 龍
熱狂、幻滅、そして希望2002FIFA World Cupレポート―フィジカル・インテンシティV

2002年のW杯観戦レポートです。

この本を読んで感じたことは3つ。


1、村上龍は職人

ミーハ-で、おもいつくがまま本を書いている印象が最近はありました(F1、テニス、ゴルフ・・・)。

それでも、その一つ一つに正直に感じて、それを上手く伝える技はさすが。

テーマはなんにせよ、狙った形で文章を書ける技は、さえています。

最近ひどい小説があったりするので、ちょっと離れていましたが、あらためて感心しました。


2、そんなに中田がすきか

もう、中田がでていない試合には興味がもてない、と言い切っています。

個人的に友達のようなので、仕方がないといえばそうですが、一歩間違えればたんなる追っかけではないですか。

でも、その本気の熱さは面白かったです。トルコに負けたときは完全にやる気を無くしていましたね。

やっぱりW杯はこう見ないと面白くありません。

沢木耕太郎が、無理やり仕事をやっているように思えましたね。


3、やっぱりW杯は面白い

うーん思い出しましたよ日本対トルコ。

今思えば、サントスがトップ下なんか、やっぱり人材いなかったのかな、と考え込んでしまいます。

個人的には、今回のメンバーが、この10-20年で最強メンバーになってしまうのでは、と危惧しています。

なので、期待して今回の予想は3位としておきます(クロアチアやトルコだってなれたんだから)。

と、色々妄想が始まってしまいました。



村上 龍, 中田 英寿
文体とパスの精度

で、中田との対談とメールについて。

村上龍は、サッカーの話以外では「日本はだめだ」と終始いっています。

日本の和のメンタリティが合わず海外の生活も長い中田も、話があっているようです。

才能がある人は、日本では暮らしにくそうなのはなんとなく分かります。

しかしペルージャは第2の故郷といっているあたり、やっぱり中田もそう思ったりするんだ、と安心しますね。

既得権益層に対抗するために、中田はサッカーを、村上龍は小説の腕を磨いた、というはなしは、ひさしぶりに村上龍節といった感じで、納得させられてしまいました。


しかし、中田の最近の言動をみていると、彼なりにオトナになったのだな、と思ってしまいます。

クールにしていても得られるものは限られてくるので、もっと多くの責任をもって貪欲に熱くいって欲しいものです。期待しています。


しかし、このタイトル。

文体もパスも正確に伝えなければならない、ということらしいですが、ちょっとあからさまかなと思います。



佐藤 俊, ガンバ大阪
主将戦記 宮本恒靖

2002年W杯ベルギー戦から2005年ガンバ大阪優勝までの、試合を語っています。

ほとんど試合の話ばかりですが、周りの人にもしっかりと聞いているのが、幅がでてなかなか面白かったです。

これを読んで驚くのが、本当にジーコが戦術の細かい部分は選手に任せていること。

6月のバーレーン戦前の選手のみのミーティングは有名な話で、書いてあること読むと感動的ではありますが、そんなことも話し合ってなかったの?というのも正直なところです。

DFとMFの連携もそうですが、それについてどう思っているかも選手同士の話し合いはそれまでなかったようです。

うーん、プロとしてのプライドもあるかと思いますが、集団作業の常識としてそのあたりはきっちりクリアしてほしいですね。そういう意味で、中田は異分子で、それ以外は積極的に意見をいう選手はいなく、宮本が代弁してまとめ上げていく役割を担っているようで、宮本がいないといったいどうなっていたのだろうと思ってしまいます。

中田のことを書かれている本をよく読んだので、中田のことはなんとなく分かったのですが、日本代表のなかでどう見られているか分かってなかなか面白い部分もありました。海外で普通の自己主張が、キャラとかぶりうっとうしがられているようでした。宮本はその橋渡しに心配っているようです。

これはきっと現在進行中の話でもありますね。


比較的新しい本でもあり、今回の泥縄本のなかでは、一番面白かったです。


さてさて、そろそろどうやってこのW杯月間を乗り切るか決めなくてはいけませんね。

巨匠の優れたスケッチのような

よしもと ばなな
海のふた

よしもとばなな

版画:名嘉睦稔


海のふた


主人公の女性が、自分の転職がカキ氷屋に違いないと沖縄で気付き、地元の伊豆に帰ってお店を開いているところに、ある感じやすい女の子と一緒に一夏を過ごすことになる、というお話です。


よしもとばなないわく田舎・故郷のよさと、無欲であることの大切さを教わった人のことを書き込んだということです。


女の子2人の一夏というと、名作TUGUMI(つぐみ) の雰囲気にも少しにていますが、今は大分小説の腕が上がっているので、書きたいテーマが1つ2つあれば、がっ、と書けてしまう、という感じの作品です。


メインテーマの1つが「お金を稼ぐこと」ということかと思いますが、書きたい雰囲気はなんとなく分かるのですが、もう少しこなれてからの方がいいかな、感じる作品でもありました。


でもばななの書くこのテーマは面白そうなので、今後に期待したいと思います。

生と死の薄皮一枚とそれについて考えたこと

佐野 三治
たった一人の生還―「たか号」漂流二十七日間の闘い

以前、戦争関連の本を読んでいたときに

「南方の戦線をさまよい、食料もなく消耗してくると感情の激しい人は亡くなっていき、感情の起伏の少ない人が生き残っていたような気がする」

という内容に、アツイ生き方をよしとする思想とは、まったく違う価値観に衝撃を受けたのを思い出しました。


この本は、ご存知の方も多いと思いますが、ヨットレースに参加し、嵐の過ぎ去った後突然ビル3Fほどの大波に襲われヨットが沈没し、その後避難用の筏に乗り込み6人で乾パン9枚500mlの水で漂流をはじめ、27日後たった一人で生還したというノンフィクションです。


その内容から心理的葛藤が多く書かれているのかと思っていました。しかし、起こった事を日を追って書かれていて、嵐・沈没・船の発見・自衛隊機の発見と無視・仲間の死・海鳥の捕獲・幻視幻聴・自暴自棄・救助・マスコミ報道など、かなり激しい内容ですが、体験からくらべると最初は思ったよりも平板な書き方でした。


しかししだいに、平板だからこそ生き残れたのではないかと思うようになり、さらに心を平板にすることができたからこそ、生き残れていたのではないかと思うようになりました。


目の前で仲間が死んでいくことに、心が乱されない人はいません。しかし、閉鎖的空間での唯一の消耗である心理的消耗をどれだけ抑えられるかが、生死を分けたともいえるのではないでしょうか。


しかし、いくら守っても心には深い傷があり、助けられた後も、「自分だけ生き残ってしまって」という思いは、生とは反対方向の心理状態に傾いていったのだと思います。


そこに、医師や看護婦の献身的な心身へのケア、養護施設の子供達からの「苦しい思いをされて生還されたことに勇気付けられた」との手紙、遺族からの励まし、同じよう体験をした人からのアドバイス、など様々な人々の思いにより、心理的にも少しずつ立ち直っていったようでした。本文中に引用している「食料は体の糧であり、愛は心の糧である」という言葉も、体の生理として理解できました。


直接・間接と色々考えてしまう本でした。


また、その他にも気になったことは、佐野氏は最初乗る予定のヨットを見たとき「安定が悪そうだな」と感じていました。しかしそこでレースを止めることはしませんでした。もし同じような船に乗ることになったらきっとそう感じた船には乗らないと思います。その違いは体験でしか埋められないものかと、ついつい考えてしまいました。


部分的に考えたことを色々書きましたが、あまりの大きな出来事にうまくまとめられていませんし、適切な言葉で書けていないような気もします。

考えたことの断片としてお読みいただければと思います。

感じたことを言葉にまとめるのはなかなか難しいです。

昭和のエッセイ

 
團 伊玖磨
舌の上の散歩道

團伊玖磨


作曲家・團伊玖磨の食べ物についてのエッセイで、1968-75年「お料理」という直販雑誌に連載したものをまとめたものです。

作曲家として世界中を飛び回っているため、中国・アメリカ・イギリス・アフリカ・オーストラリア・アラブ諸国などの話から、くさややとんぶりなどローカルな日本の話題もあり、今読んでも十分楽しめます。


また、食べ物の話とは別に“名も知れぬ”というエッセイのなかで「『名も知れぬ草花が咲き』という文章が目に触れることがあるが、そんなことを書く人はよほどの怠け者だ。文章という書いた人が死んでも永遠に残る作業に携わる人として、そんなことを調べる努力をするのは当然だ」ということを書いています。このころの文筆業に関わる人の気概が感じられました。


もちろん当人も知らないことは多くあるようですが「雲の名前を知れば、空を見上げることが楽しくなる」とあるように知識欲旺盛な方で、野草についてはある博物館の館長に数人で月一野外講習を受けたとも書いてあります。このころの人はそんなことするのが普通だったのでしょうか。羨ましい。


古いエッセイなのでその時代を意識しながらそのギャップを楽しんでいたのですが(おこし、が個別包装になっていくのを嫌がっていた)そのなかで気になったのがパダン料理。

なんでもインドネシアの料理の1つのようですが、随分と誉めていました。煮込み料理とか。

気になります。機会があれば食べてみようと思います。どんな料理なんだろう。


それはそうと、この人の人気エッセイ

「パイプのけむり」ですが

「続パイプのけむり」

「続々パイプのけむり」

「又パイプのけむり」

「又々パイプのけむり」

「まだパイプのけむり」

「まだまだパイプのけむり」

「も一つパイプのけむり」

「なおパイプのけむり」

「なおなおパイプのけむり」


と、まだまだ続きます。

なかなかしつこく続けて面白いですが、ここまで続けられる人気がすごいですね。

と思っているとこんなページ が。パイプの辞書だそうです。

うーん、やっぱりこのころの人は偉い。


  パイプのけむり 新装 (1)

 
團 伊玖磨
 

ストーリーメイカー古川日出男

総評 古川日出男

なんといっても、1冊の本に惜しげもなく何本ものストーリを輻輳させることのできる、ありあまる「物語力」は、近年まれにみる圧倒的パワーがあります。

さらに、修飾過多で粘着質で、現実感が少しずつゆがんでくるような、ゴシック建築のような文体。

百年の孤独」「族長の秋」で有名なガルシア・マルケスに代表される「マジック・リアリズム」と評されるのも肯けます。

最近の日本の小説にはない、何層にも重なる物語と表現に表現を重ねていくような文体は、小説初心者には不向きな作品ですが、こういったのめり込み小説が好きな読者には、たまらんでしょう。

また、本によって文体を変えていることや、それぞれの本の装丁や本自体の作り方にも趣向をこらしている様子は、想像力がたんなる小説のなかにだけでおさまっていない様で、好感が持てます。


各評


古川 日出男
13


13』 1998/02


個人的には一番面白く読めました。

あらすじは、主人公の日本の少年が、色覚異常のため人と違うものを見ていることに気付き、では何か他人と違うものが見えるのではないか、と考え、日本の学校生活を何とかやり過ごし、卒業後親戚のいるアフリカへ。そこでアフリカの3つの物語と絡み合い、さらに舞台はアメリカ・ハリウッドへ。

小説的なテーマも、着地地点として現代の現実に選んでいる部分も面白く、古川日出男の本領も味わえ、お薦めの作品です。

また処女作に近い作品でもありテンションも高く感じられます。

古川 日出男
沈黙

沈黙』 1999/07

日本で10代の女性が主人公。あるきっかけから、自分の一族に大東亜戦争の特務員をやっていた人物の存在を知る。

その子供が残した膨大な録音レコードとノート11冊。それを読み起こすうちに、彼の対峙していた「闇」に気付き、さらにそれが今、自分も対峙していることを知る。その「闇」とは・・・

これも現代に舞台をおきながら、大東亜戦争やアフリカ・アメリカなど物語は広がり、謎を解き明かしながらストーリーが進んでいきます」。「対決」「謎解き」など読みやすい要素を入れながらもアイディアが随所にちりばめられており、これもまた面白く読めました。



古川 日出男
アラビアの夜の種族


アラビアの夜の種族』 2001/12
エジプトを襲うナポレオンの進行を止めるため、聴き出したら誰も止められない口伝の「災厄の書」の口述筆記したものを贈る計画が持ち上がる。その精霊と魔術と人間の入り乱れる3人の英雄の物語は、はたしてナポレオンの元に無事届けられるのか。

小説中小説という有り余る想像力の使いどころに困っている古川日出男の得意そうな分野の作品です。

小説中小説は、まさにファンタジーという作品で、魔術や精霊などなんでもありの舞台で、魔法などの小道具よりもそれ使うそれぞれの英雄の背景やその動機に想像力を爆発させており、1本で十分な物語になるものを3本も絡ませています。

日本ファンタジーノベル大賞受賞作品です。



古川 日出男
ベルカ、吠えないのか?


ベルカ、吠えないのか?』 2005/04

日本軍にキスカ島に置き去りにされた軍用犬4島。

この4頭の血族から、犬の現代史が流れ出していきます。

ロシアでは、宇宙に飛び、軍用犬となり、マフィアと行動するようになります。

メキシコでは麻薬犬として、もちろんベトナムにも軍用犬として現れます。

ねずみ算的に横に加速していく物語は、まさに古川日出男の真骨頂です。

しかし、テーマ性という意味では深化はあまりなく、横展開の物語絵巻を楽しむ本です。



古川 日出男
ロックンロール七部作


ロックンロール七部作』 2005/11

こちらも、ロックンロールを100年7大陸に渡り描く横展開の物語。

変幻自在の文体が、ロックとシンクロして楽しく読めます。

その連鎖と想像力を楽しみましょう。


古川 日出男
LOVE
 
 

LOVE』 2005/09

これは都会を舞台にした都市物語です。

荒野のガンマンのような猫の数当て対決。

都バス好きの少女。路上料理人。

カラオケ屋で打ち合わせをするマフィアくずれ。

装丁・アイディア・文体すべて古川日出男のセンスが浸透しています。

ごくありふれた都会に、古川日出男の想像力を爆発させるとこういう作品ができるようです。


古川 日出男
アビシニアン

アビシニアン』 2000/06

前半部分が秀逸。古川日出男に現代を描かせるとこういう物語になるかと感心しました。

沈黙』と重なる部分はありますが、むしろ現代青春モノとして、繊細で真摯に歪んだ個性の物語を楽しむことができます。



収束しない闇

舞城王太郎
暗闇の中で子供
The Childish Darkness


舞城 王太郎
暗闇の中で子供―The Childish Darkness

講談社ノベルスから発売されているのですが、これはいったいどんな位置付けの本なのでしょうか。
ミステリーとしたら余りにも滑稽無糖、重いライトノベル、とでもいうのでしょうか。


前作、煙か土か食い物 Smoke, Soil or Sacrificesに引き続き、奈津川家の物語で主役は三男の三郎。
暴力が支配する奈津川家で成長を遂げる4人兄弟は、それぞれに深い傷をおっています。その傷を抱えながら、


訳の分からない殺人鬼/意識のない母/精神病を発病しつつある少女/何ごとも先回りする頭のいい四郎/もう書けない小説/家に出る幽霊/再発する殺人事件/


という状況のなかで、他人のことも自分のことも少しだけ状況把握できるものの、現実を解く鍵を持っていないことに気付き、三郎は、なんだか色々といやになってしまいます。


それでも物語は流れていくのです。
あり得ない設定と重い心理描写。


今までの類型から外れたこの作家は、とりあえずミステリーという分野から出発して、読者とともに居場所を作り、「阿修羅ガール」やら「好き好き大好き超愛してる」などのこれまたやっかいな佳作をつくりだしていった訳ですが、その暴走気味の初期作品として、楽しむことができました。


くれぐれも、ミステリーとしては読まないほうがいいと思います。

中村俊輔のオフィシャルドキュメントブック

藤沼 正明
『プライド』 中村俊輔 オフィシャルドキュメントブック


いいたいことは色々あります。


タイトルがイマイチとか、表紙写真と口絵写真に同じ写真を使うなとか、いくつかの章に重なっている内容があるとか、一番聞きたい2002年のW杯の選考漏れについて聞けていないとか、とにかく細かいところは色々あります。


でも無口そうな俊輔の信頼を得て、レッジーナで過ごす日々の笑顔を見れただけでも、この本の価値はあるかなと思います。


マリノス時代は名物だった居残り練習が、レッジーナに行くとまずハードな練習についていくだけで精一杯でいつもの居残りができなかったエピソード、チャンピオンリーグ開催日にレストランで俊輔の解説付きで感染する(「あれだよ、インザーギ。逆サイドのタッチライン際でフラフラ動いているでしょ。ああやっていつも、攻撃になったときの準備をしている」)エピソードなどはなかなか。


まぁ、「オフィシャル」とある分突っ込んだ話はできないのかもしれませんが、藤沼氏には一層の努力を期待したいと思います。


もちろん攻撃の要になり、(中田も「俊輔に自由に攻撃参加させるために自分は引き気味になる」ような発言をしていた)今一番いいコンディションの選手の、俊輔にも活躍を期待しています。


蛇足となりますが、もし考えるとしたら、タイトルは

「背番号10」

「レッジョから」

「ドイツへのFK」

「いつもボールがそばにあった」

「2002年を超えて」


まあ、どれもイマイチですね。

章のサブタイトルにあった

「情熱の起源」

なんかはいいですね