献食菜集 -153ページ目

完了

空気の流れが 止まる
春の 夕暮れに
 山門の 扉を閉める


真新しい 銅製の

赤い乳頭が 光る


白い御影の 石段や

かやぶきの屋根に
かけた 金網


古い石灯籠 つげの木


職人達が 帰路につく


彼らの なした
平成の大修理 が
この禅寺の歴史 に 残る


未来のひとは この仕事を
した 腕を 想像するであろう


たった50年後 でさえ
私は この世に いないであろう


私が 仲間と設置した 

山門の沓石が
すげかえられるのは
いつのことであろうか



洗われた 石段の
うえに 

白梅の 花びら


































































































未熟な 鉄骨屋の
ガタガタ のアングルに

抵抗されて

半日仕事 が 夜中までかかる


ドリルビット は折れ
ドライバービット まで 折れ
ホームセンター に走ったが すでに閉店


愉快な 新横浜
期待せず 深夜営業安売りショップ に立ち寄れば
全部揃い 思わず 反省する

 

意図通り 運ばぬ方が 面白いと
言った


確かに


たしかに 慌てさせられて
面白かった
壁画の 取り付け


新横浜





























潤雨

静かな 一日
雨降りで 始まる


盲人男性 道路にまよいこみ
歩道まで 共に歩く

短いあいだ に も
クラクション
が なる


静かな 一日
雨降りで 始まる


一年ぶりの 人事部担当と
電話で 話をする
滲み出た気持ちが 受話器から
こぼれ うれしくなる


静かな 一日
雨降りで 始まる


乾いて 痛かった 手の甲や
硬くて ひび割れた 指よ

小休止 だよ


静かな 一日
雨降りで 始まる


なかなか 読み進まぬ
本を 開く


静かな一日




























3月

山門の かやぶき屋根にあがり 
町を見下ろす

 

名前を呼び呼び 

小さな一年生の下校


家々の 細いすきまを

縫うように 飛ぶ
からす


3月の暖かい 日差しに 暖められた
かやの においは


ひばりの さえずり

を遠くに聞きながら
ねころんだ わらのやま のにおい


かくれんぼした 農家 の
ガラス の割れた
暗い 倉庫 のにおい


おそらく 最初で 最後の
かやぶき 屋根での 作業


この禅寺 の 山門に 登ったのだよ



だれに 自慢すれば よいだろうか



























高幡不動で乗り換える

浮いた こころが
沈んで しまうと


同じことでも 違う色に 見えて
同じ相手でも 違うひとに 見えて


周りは 不動で
自分が 変動して



沈んだ こころが
浮いて しまうと


細かい ことに 気が付かず
人には 失礼な 事ばかり 言い


周りは 不動で
自分が 変動して


そうして


周りは 不動で
自分が 変動して
たいへんに 忙しい