〇 朝鮮戦争における
米海軍・空軍・海兵隊の活躍
朝鮮戦争においては、米陸軍の
第1騎兵師団、第24歩兵師団、
第25歩兵師団、第2歩兵師団、
第3歩兵師団、第7歩兵師団及び
第1海兵師団などが、
彭徳懐司令官以下の
中国人民志願軍および北朝鮮軍と
壮烈な地上戦を行ったほか、
航空攻撃、艦砲射撃、上陸作戦などで
米海・空軍・海兵隊が陸軍の作戦と
連携して活躍する場面が多かった。
航空攻撃は、
板付、芦屋、築城など、
15箇所の在日米空軍基地
――九州の基地が主体――
から発進した
爆撃機、戦闘機によるものであった。
朝鮮半島への米軍機の出撃回数は、
空軍が72万980回、
海兵隊航空部隊が10万7,303回、
海軍航空部隊が47万6,000回で、
その爆弾投下量は
空軍が47万6,000トン、
海兵隊・海軍で22万トンに達しており、
陸上作戦の支援、制空権の掌握など
朝鮮戦争の帰趨に大きな力を発揮した。
艦砲射撃は、1950年6月28日、
すなわち朝鮮戦争勃発3日後の
海空軍の投入決定に伴い、
在日米海軍部隊の巡洋艦ジュノー
およびイギリス駆逐艦3隻が、
朝鮮半島東岸に進出し、
29日から沿岸を南下する
北朝鮮の補給路に対する
艦砲射撃を開始した。
また、
再就役した米海軍戦艦アイオワは、
1952年4月8日から10月16日まで
朝鮮半島東海岸沖で活動し、
城津、興南、高城への艦砲射撃で
地上部隊を支援した。
当時、
韓国陸軍参謀総長として
この艦砲射撃の様子を
視察した白善燁元大将は、
「50口径40.6cm砲9門による
艦砲射撃の迫力は凄まじかった」
と筆者に語った。
マッカーサーは、1950年9月15日、
米海空軍の支援下に、
米第1海兵師団および第7歩兵師団、
さらに、
韓国軍の一部からなる約7万人を
ソウル近郊の仁川に上陸させる、
仁川上陸作戦に成功した
(これについては次週に詳述する)。
〇 鮮半島は海・空戦力が発揮しやすい地形
(朝鮮半島の地政学・第7則)
以上述べたように、
中ソと陸接する国境正面を除き、
三面を海に囲まれている朝鮮半島は、
海軍・空軍・海兵隊が戦力を
発揮しやすい地形となっている。
世界でも圧倒的に優勢な米海空軍は、
制海・空権確保のもと、
在日米軍基地(飛行場)と空母を含む
艦船をプラットホームとして、
戦闘機・爆撃機・ミサイルなどを用いて、
朝鮮半島内のターゲットを
効果的に打撃できる。
〇「東郷ターン」に似た日本列島と
朝鮮半島の位置関係
日本列島と朝鮮半島の位置関係は、
第1図に示すように、
日本海海戦において、
ロシアのバルチック艦隊
(朝鮮半島に相当)の行く手を遮った。
――「敵前大回頭」
(トーゴー・ターンと呼ばれる)――
日本の連合艦隊(日本列島に相当)の
位置関係に似ている。
日本の連合艦隊が
バルチック艦隊の行く手を遮って、
横隊に展開することにより、
全艦全ての砲門を南方の敵艦に指向して
集中射撃ができる態勢が完成する。
日本列島と朝鮮半島が
このような位置関係にあることから、
日本列島に展開する在日米軍基地は、
南東方向に延びる朝鮮半島を
包囲する形になっている。
このようなわけで、
日本列島に展開する在日米軍基地から
発進した、米軍の戦闘機や爆撃機は、
日本の連合艦隊がバルチック艦隊に
効果的に集中砲撃を加えたように、
朝鮮半島に存在する各種ターゲットを
有効に打撃できる。
〇 米韓連合作戦計画(OPLAN)――
米軍は海空戦力主体、
韓国軍は地上作戦主体
米国と韓国は、
数種類の米韓連合作戦計画を
持っている。
1990年代初めの
「第1次核危機」の際、
精密誘導弾で、
寧辺の核施設などをピンポイント爆撃する
「作戦計画5026」が立案された。
しかし、
限定空爆とはいえ、
北朝鮮の対応によっては
全面戦争にエスカレートする可能性がある。
それゆえ、
本格的な戦争が勃発した場合は、
これを「北朝鮮吸収統一」の機会と捉え、
米韓連合軍の積極的攻勢によって
北朝鮮を占領し、南北統一を果たすという
「作戦計画5027」が策定された。
また、
1999年には、
在韓米軍は韓国軍との協議で、
北朝鮮がクーデターなどで崩壊した場合など
「北朝鮮の内部混乱」を「戦時」とみなし、
軍事介入することを想定した
「作戦計画5029」を策定した。
さらに、
在韓米軍は2003年半ばには、
「受身」の韓国防衛から北朝鮮崩壊を
積極的に作為・促進する
「作戦計画5030」を策定した。
「作戦計画5030」は、
北朝鮮の限定的な軍事資源を枯渇させ、
当時の金正日に対する軍事クーデター
などを誘発させる事態、
あるいは、
最終的に金正日の
「除去」に繋がる雰囲気を
醸成させることを目的としており、
「撹乱工作作戦」と呼ぶべきものであった。
上記作戦計画のうち、
「作戦計画5030」を除く他の3つの計画では、
米軍と韓国軍の役割分担が明確だ。
米軍は
「海空戦力を主体として、
航空機やミサイルなどで
北朝鮮軍を打撃」し、
韓国軍は
「地上作戦を担当する」
という役割区分のようだ。
筆者の韓国での防衛駐在官時代(1990~93年)
米軍将校たちは
「俺達にとって韓国軍と北朝鮮軍を
識別するのは難しい。
顔も言葉も同じだ。
制服が違えばわかるが、
北朝鮮が韓国軍の軍服を着たらお手上げだ」
と、本音の話をしてくれた。
韓国では、
朴前政権になって、
反日の姿勢が強くなった。
しかし、
上記のように、
米軍の海空戦力が発揮しやすい朝鮮半島では、
在日米軍基地を含む日本の支援抜きに、
韓国の国防は成り立たない。
韓国の反日メンタリティは分かるが、
韓国の安全と繁栄にとって、
日本の支援・協力が不可欠であることを、
韓国人は改めて思い知るべきだ。