「走り込み」という練習は、日本のスポーツ界で長年行われてきた”基礎練習”です。

僕の世代ぐらいの方であれば、競技に関わらずほぼ全員が経験してきた練習かもしれませんね。

 

 

 

 

長く走れることはあらゆる運動の基礎だから、足腰の強化・体力の強化のためにも必ずやるべきだという考え方。

それに対して、近年では走り込みの是非について触れられることが増えてきました。

競技の特性次第では不要なのではないか、もしかしたら阻害因子になっているのではないか、という議論です。

 

▶︎参照:野球のトレーニングに「走り込み」は必要なのか?

https://victorysportsnews.com/articles/3792/original

 

 

 

記事にもProcrixとしてコメントしました(以下)。

走り込みは特に投手に要求されてきましたね。

ウェイトトレーニングも含め、どんなトレーニングも「その結果どんな能力を獲得したいのか」、そして「そのための手段として的確なのか」、というロジックがあまりにも曖昧なのではないでしょうか。

走り込みの目的の多くは投手の下半身を強化して安定した動きを獲得しようと考えていると思われますが、まず「投手の下半身の安定」を筋肉レベルではなく、動作レベルで定義しなければ手段が本当に的確なのかは見えてきません。

最終的にパフォーマンスを決めるのは筋肉ではなく動きです。

そこから逆算してその動きを発揮するためにこういう筋肉、という順番のはずです。

指導側が徹底的に論理性を追求しなければ、目的と手段のギャップの構図は形を変えて繰り返されてしまいます。

 

 

 

***

 

 

 

今回はそんな走り込みについての質問にお答えします。

 

 

 

質問>

走り込みのような練習でケガをしないようにするには何が大事なのかを教えてほしいです。

(理学療法学生)

 

 

 

まず、質問は走り込みの是非についてではなく、走り込みをやる前提での内容です。

走り込みをやる前提で怪我をしないために大事なことを問われていると解釈します。

 

 

 

回答>

まず、走り込みといってもいろいろあるのでちょっと枠組みを決めます。

ここでいう走り込みとは、長い距離を長時間かけて走る練習とします。ペースはゆっくり。50%ぐらいでしょうか。

これでもまだかなり抽象的ではありますが、ここではこれ以上細かく定義する必要もないと思うのでこれで進めます。

 

 

 

そもそもの疑問として走り込みによって怪我をする可能性があるのかという点について触れなければなりません。

結論から言えば、「ある」です。

でももちろん全員が怪我をするわけではありません。

(だとしたらそもそも”練習”として存続できません)

 

 

 

では、怪我をするケースはどんな状況でしょうか。

まず、走り込みによって怪我をする部位を想定してみます。

・足底筋膜炎(足裏)

・シンスプリント(脚の脛)

・膝痛(オスグッドなど)

・腰痛

 

 

 

大枠でこの辺りだと思います。

ゆっくり走っているので肉離れや捻挫は稀なケースとして除外します。

 

 

 

それぞれの怪我でそれぞれの発生メカニズムが存在するので、他の多くの解説情報に譲ります。

*走り込みによる怪我と直結の解説ではありませんが、負荷が集約するプロセスは参考にしていただけると思います。

 

▶︎シンスプリント

https://jarta.jp/conditioning/4083/

 

▶︎オスグッド

https://jarta.jp/conditioning/987/

 

▶︎腰痛

https://jarta.jp/conditioning/12556/

 

 

 

***

 

 

 

これらの発生の共通した構図としては「同じ部位に負荷が集中していること」が大きな要因です。

 

 

 

この要因を左右するのが、「走り方」と「リカバリー」です。

 

 

 

 

まず走り方から。

走る動作は、片脚立ちの連続です。

ゆっくりであっても同様です。

むしろゆっくりの方が長い時間地面に足を接地するので、筋の遠心性収縮による負荷はトータルとして大きくなる可能性もあります。

トータルというのは長い時間走るので負荷の回数が多くなるという意味です。

 

 

 

この片脚立ちというのがなかなか厄介で、例えば歩行であっても片脚立ちによる膝への負荷は体重の3~5倍と言われたりもします。

走り動作では着地の衝撃も大きくなるので、当然これよりも負荷は増大します。

 

 

 

だから例えば走り込みで膝の怪我を防ぐためには、負荷に耐えられるように膝周りの筋力を鍛えよう、というのはやや早計です。

怪我をしないという動きは、ものすごくシンプルに表現すると「一部分に負荷を集中させない動き」「負荷を全身で分散させる動き」のことです。

 

 

 

だからまず走り方そのものが膝に集中していないかということを考察すべきであり、そうであればまず膝に負荷を集中させている走り方を改善しなければなりません。

 

 

 

筋トレが不要という意味ではなく、障害の構造を階層的にみたときの優先順位です。

 

 

 

流れ上、膝を取り上げてきたのでそのまま膝の話で進めます。

(とはいえ、上記の怪我の要因と多くが重なるので使えると思います)

 

 

 

膝の特性を考えると、その動きは曲げるか伸ばすかがメインです。(回旋も少しではあるが含む、結構重要ではある)(足首もメインの動きは同様)

 

 

 

そしてその上にあるのが股関節。

股関節は球関節と言われ、多軸性の関節です。

つまりあらゆる方向に曲がります。

ということは、膝の動きのベクトルを決めるのは股関節です。

股関節の角度によって膝にかかる力のベクトルは影響を受け、それとずれた向きに膝を曲げようとすると膝がねじれて靭帯や半月板を損傷するケースもあります。

 

 

 

この辺りを話し出すとややこしくなるのでシンプルに捉えると、股関節の角度次第で、膝にかかる負荷は変化するということです。

 

 

 

なので膝の負担軽減を考える場合は、必ず股関節とセットで考える必要があります。

そして関節としての股関節だけでなく、体重を支えて衝撃を支える股関節周りの筋肉たちもその要因に含まれます。

 

 

 

着地の際、股関節周りの筋群(大臀筋・ハムスト上部・内転筋がメイン)がちゃんと働いているか、働く角度を作れているか。

ちゃんと働いているかとは、収縮のタイミングも含みます。

 

 

 

とここまで書いてきてやっぱりややこしさが増してきたので、シンプルにまとめます。

 

 

 

 

要するに。

 

 

 

走る時に骨盤が後傾していると着地の時に膝に負担が増大します。

膝が前に出ようとするベクトルが大きくなるためです。

それを防ぐための筋群やそれらが付着する部位や関節に負荷がかかります。

 

 

 

なので骨盤を立てればいいのですが、僕が考える「骨盤が立つ」とは、外見上立っているのとは少しニュアンスが違います。

「その下にある構造体がしっかり機能している結果として」骨盤が横から見て垂直に近いかどうかという意味を含みます。

(走り込みはゆっくりのスピードだから)

 

 

 

その下の構造物とは、ハムストリングスの上部(大臀筋下部・股関節深部筋も含む)のことです。

そしてその前提として股関節そのものが安定した球体運動ができているかも重要です。

例えば股関節を曲げた時に詰まっていないか、股関節の回転中心を感覚として認識できているかどうかなどです。

 

 

 

走る際は、まず第一がここです。

 

 

 

着地の際、ハムストが効いた結果骨盤が立っていること。

ちなみにハムストが効かずに立てようとすると腰の筋肉を緊張させて骨盤を立てる状態なので腰痛に近づきます。

(ハムストでなく前モモで支えると骨盤は後傾する)

 

以下を参照してみてください。

 

参照▶︎ハムストリングス上部を使えるようになる方法

https://jarta.jp/conditioning/5113/

 

参照▶︎スピードは必ず高められる。

https://ameblo.jp/bodysync/entry-12356919131.html

 

 

 

ちなみにサッカーだとヨーロッパのトップクラスの選手と日本人選手のジョギングのときの動きの差はとても大きいです。

https://ameblo.jp/bodysync/entry-12383609670.html

 

 

 

プロ野球でも、チェックしている部分です。

https://ameblo.jp/bodysync/entry-12322709489.html

 

 

 

***

 

 

 

図を用いずに文字で伝えるとこんな感じで説明が非常に複雑になってしまいますね。。

誤った解釈になると選手が被害を被るので、できれば直接の指導か講習会への参加をお勧めします…。

 

▶︎人間の動きを構造レベルから理解し、コンディショニングのスキルを高めるならこちら。

https://jarta.jp/j-seminar/course/conditioningskillcourse/#c

 

▶︎トレーニングで「走り方」の身体操作を向上させるならこちら。

 

https://jarta.jp/j-seminar/course/traininglogiccource/#c

 

 

 

***

 

 

 

最後に怪我のもう一つの要因。

回復の遅れです。

おそらく、一度の走り込み「だけ」では怪我はしないと思います。

現状のスポーツの練習状況から鑑みて、他の練習や生活習慣、そしてそれらの積み重ね(オフが少ないなど)によって蓄積した疲労(損傷)が発生の土台的要因になっていると推察できます。

 

 

 

つまりリカバリーできていない。組織が回復・修復される時間的猶予が確保できていないことが考えられます。

 

 

 

リカバリーにしっかり取り組むのは怪我を防ぐためだけではなくパフォーマンスアップにも「直結」します。

僕はリカバリー能力そのものを高める身体作りも強化や身体操作と同等に重要だと考えています。

よければこちらも読んでみてください。

 

▶︎リカバリー能力アップのファクター

https://ameblo.jp/bodysync/entry-12464992152.html?frm=theme

 

 

 

 

 

全てはパフォーマンスアップのために。

 

 

 

 

 

中野 崇

 

 

 

 

僕への質問は下記フォームからどうぞ>

(グーグルフォームに飛びます)

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSelxq8nrPamZjasxqb-MRYnBNB5T47J3E9UOsqQK9csljOtSQ/viewform

 

 

 

 

 

JARTAバランスボールトレーニング

すでにリリースされている動画プログラムです。

公式サイトからご購入いただけます。

https://jarta.jp/online-jarta-training-program/

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▶︎バランスボールトレーニングを行う意味。

https://ameblo.jp/bodysync/entry-12452177179.html

 

 

 

▶︎JARTAのトレーニング指導をご希望の方は下記から。

http://jarta.jp/dispatch/

 

 

 

 

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