きらめく初夏の日差し。爽やかな水草の香り。永遠を約束するかのような川のせせらぎ。大自然が奏でる交響曲。
マコトはようやく手に入れた自らのテリトリーの中央部に陣取り、周囲を見やった。敷地面積、住処の出来栄え、隣接するテリトリーとの距離感、日当り、夜の静けさ、景色。全てにおいて自らの理想通りだった。
「シーナ」
マコトは昨日契りを交わしたばかりの伴侶を呼んだ。
「そんなに警戒しなくても大丈夫さ。今日からここが二人の愛の巣だよ」
恐る恐るテリトリーの中に進入したシーナはゆっくりとマコトに近づき、彼と身体を寄せあうことでようやくその緊張を解いた。
「良い所ね」
シーナの笑顔にマコトの顔は一層緩んだ。苦労が報われた一瞬。
「ここの住人は強敵だったからね。この辺りで一番の実力者だったみたいだ」
「あなたを誇りに思うわ」
シーナはそう言うとマコトの頬の真新しい傷口にキスして、軽快に新しいテリトリーを駆けめぐった。
「ここは新しい寝床を敷こうね。ここは……」
マコトはささやかな望みを嬉しそうに伝える女性を眺めるという、男にとってこれ以上ない幸福な時を得ることで、ここまでの人生における目標を達成した充実感を、永遠に果てることの無い責任感へと転化していった。
「いいさいいさ。シーナの好きなようにすれば良いんだから」
「そんなこと言わないでよ。ここはあなたの家なんだから」
「おまえの好きなものが、俺にとって一番くつろげるものなのさ」
それは実感だった。これまで持っていた些細なこだわりや、自己満足を促すような思考が薄まっていく。何かを発散することで得られていた心の力が、何の変哲もない時を過すことだけで得られていく。
「死ぬまで一緒よね」
シーナは少しはにかみ、マコトは微笑んだ。
何かを失うことに怯えがちな若い男は自らが手にした人生の全てと思えるもの。しかし、マコトは意外にもその存在こそがあらゆる恐れを払拭するのだと感じた。
「一生、俺がおまえを守るよ」
マコトはシーナに言ったそんな陳腐な言葉の本当の意味を感じた。全ての責任を負うという重大さとそれがもたらす奇妙な気楽さ。
「陽が落ちるまでに寝床を作りましょう」
シーナはゆっくりとマコトに近づき、若草の香りでマコトの気を誘い、衝動に堪えながら上空を見上げたマコトは呼吸を整えながらシーナに続いてテリトリーを後にした。