極私的映画と音楽のススメ -10ページ目

極私的映画と音楽のススメ

印象に残る映画には印象に残る音楽がある。
思い出の名場面に流れていた音楽、言葉などをご紹介

マイ・ブルーベリー・ナイツ オリジナル・サウンドトラック/サントラ
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映像がとても綺麗な映画でした。

やたら早く動く電車、早送りで登っていく太陽

たくさん出てくる青空。

そして夕焼けのシーン。


この映画も、その場所に居ないはずなのに、

行ったことがないのに何故か匂いを感じる映画ですね。


最後の方の言葉に

「道路を渡るのは簡単。それは向こう岸にいる人しだい」
というのが出てきます。


人と人の距離感の感じ方なんてのは
それこそ人それぞれ。


こっちが勝手に深いと思い込んだり

自分のしたいこと、やりたいことに没頭するための領域にたたずむことが

適度な距離だと思い込んだり


こういうのは往々にして、齟齬を生むもの。
ゆえに、まー七面倒なことがおこったりする
突然沸き起こる嵐は大体がそういうことに起因していたりする。


この映画に出演しているナタリー・ポートマンやレイチェル・ワイズ
演じる役柄はカジノに入り浸ったり、旦那のもとを離れて遊びまくったりと

自分の領域にたたずんでいる。


どことなく、何かの束縛から離れんとするために、そういうシチュエーションに

身をおいているような気もしないでもない。


きっと彼女たちにとって、それは心地よい距離なんでしょうね。

彼女たちの傍らにいる男性諸氏にとっては非常に居心地が

悪い領域ではあるんだけれど。


彼女たちなりの距離の置き方。

これが二人を隔てている道路の距離。。


でもその領域にたたずむことができていたのはきっと、

対岸にいる人がいてくれたから。
そんな事実に、対岸の人物を失ってから、たいていの人は気づく。

この二人との出会いを通して
ノラ・ジョーンズ扮する主人公は、おそらく自分なりの距離感を

つかんだのではないかな。そして元いた場所へ戻ってくる。

その場所は彼女にとっての対岸といえる場所だったりする。


「道路を渡るのは簡単。それは向こう岸にいる人しだい」

と言っては見たけれど、たぶん心の中では

「こちら側にいる自分しだい」なんて考えてるんかな?


なんて素敵なラストを見ながら考えておりました。



さてブルーベリーパイを食べに行こうかな。






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ランボー
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ランボーだとやっぱこの第1作目が一番ですね。

そのほかは単なるアクションですが、この作品は違う。


やっぱこの映画にもベトナムがあります。


アメリカは戦争のために男たちを鍛えに鍛え、

殺しの専門部隊を作った。


で彼らを有る意味”英雄”として送り出した


もちろん彼らの役割は、作戦を練ることではなく

実践現場の最前線で、いわば白兵戦で勝利することのみ



ゆえに、功名に仕掛けられた罠にかかるものもいただろうし、

とらわれたものもいたに違いない



そして戦争が終わってみれば・・


戦闘部隊として鍛えられた彼らは、平和な時代には居場所がない。

それだけでなく、余りにも過酷な現場を目の当たりにしているため

俗に言うシェルショック的な精神的ダメージを受けている



そんな彼らを人々は疎ましく思う


そして・・・


この映画をみてなるほどなあと思ったのは

彼らが、感情のやり場を間違えると、存在自体が凶器になってしまうということ

かの国は戦争のために凶器を作っていたことになる


しかし、彼らも人間、弱い部分ももちろん有る。


これは戦争のために作られた屈強な男たちも

実は、弱者であることをうまく伝えている映画だと思います。



だって、こういう人が、号泣するのをみるとねえ・・

やっぱ人間なんだなあって単純に思ってしまいます。


ロッキーの涙とは全く違う種別の涙。

スタローンも初期の頃は、まだ演技が出来ていたような気がするな。



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この映画も、見よう見ようと思っていて結局見たのは
社会人もだいぶ経ってから

自分の生命の灯火の期限を告げられたとき
自分ならどんな行動をとるかなあ
なんてことを考えてしまいました



でも結局、男にとっては、
ちかくで微笑んでくれる女性(恋人でも友人でも、

知人でも部下でも同僚でも)が生きるエネルギーに

なるんだなあと実感。



人間だれしも一人じゃ生きていけない。
周りの自然(カムイ的なもの)も含めたものと共存しないと
だめなんですね、きっと。



「生きる」(谷川俊太郎)

生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと



生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと



生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ



生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと



生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

ピアノ レッスン
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幻想的な風景である。


浜辺に、ぽつんと置かれたピアノ。

そのピアノが奏でる物悲しいメロディ


未開の地だったニュージーランドの荒涼とした

風景の中に、その音色が溶けていき

ピアノのシルエットもまた蜃気楼のごとくまどろんでいるかのようだ


言葉を話せない主人公

彼女が言葉をつたえる術・・

それはピアノの鍵盤が奏でる響き


彼女の声の代弁であるピアノは、

そのまま彼女自身といってもいいのかもしれない


浜辺に打ち捨てられたピアノ

スコットランドから、ニュージーランドまでつれてこられた

彼女の置かれた状況、それだけでなく、彼女の心の内ともシンクロしている


そんなところに現れる男性。

ピアノを手に入れ、鍵をもち、

ピアノの鍵盤の数だけレッスンをしてくれという


ピアノは、彼女の存在に他ならない。

鍵盤一つ一つが彼女の構成要素ともいえる


そんな鍵盤の数だけレッスンをするという行為は

彼女にとって自分の心の内をさらけ出していく行為に他ならない


声を失っている彼女が、あきらめ掛けていた思い

もっというと心の奥底にしまいこんで、忘れかけていた思い


そんな想いが、レッスンを重ねるごとに

すこしずつ浮かび上がってくる



そんな彼女の変化。


それが呼び起こす悲劇。


そんな現実さえ、やさしくくるんでしまう音楽。


この映画はただひたすら、

荒涼とした大地の風、潮の匂いを感じながら

身を任せていれば良いんだと思う。


とくに何も考える必要もない


自然の奏でる音や匂いと

調和するピアノの音色、それだけを感じていれば良いんだと思う




幸せなはずなのに、なにか足りない気がする・・・

そんな風に感じている方にお勧めの映画です。


七人の侍
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この映画が面白い理由。


それは、それぞれのキャラクターがしっかりしているということに尽きるんじゃないでしょうか。


旅をする過程で一癖も二癖もあるような面々が

集っていく


単純に、次はどんな荒くれ者が現れるのだろうかと

楽しみに待っている自分に気づくのだ


もうそうなったら、この映画の世界に引き込まれていると

いってもいいのでしょう



これは時代劇ではなく

現代劇といえるのかもしれません

それほど何かがリアルに迫ってきますね


白黒なのに、色がそうぞうできるし・・


見終わったあと、言葉が出ない映画のひとつですね


幸せになるためのイタリア語講座 デラックス版
¥4,230


いつも現実って、思うようには行かないですよね。

(Reality Bites!!)


現実を直視するあまり、ちょっとだけもっていた自信とか、
将来の夢とか希望とかが、消えていってしまうんですよね。


そんなときに、前向きに生きいくことって結構難しい。
それぞれ、悩みや、不安を抱えてなんとなく下を向いてしまったり・・

そんなとき、ちょっと、自分のいる場所を変えてみたり、
新たな課外活動に参加してみたりすると、いろんな他人との出会い/関係の

なかで、なにかが変わり始めて、そんな悩みは消えていったりするもの。


そう、自分のいる場所から、ちょっと外にでるだけで・

そんなちょっとした勇気があれば。。


この映画はイタリア語講座をつうじて、なにか大切なものをみつけだしていく

大人たちのお話。


忙しいという字は心をなくすと書きますが、
そんな状況にあると感じる方にはオススメです。


きっと自分なりの答えを見つけることが出来るはず。


初投稿:2005/8/8、再掲載:2008/3/4


アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー 』は植物人間=生きているのか死んでいるのか?

という問題について焦点をあてた作品でした。



この作品では、尊厳死、いわゆる安楽死の是非が静かに問われています。


意識はある。

しかし体は動かない。


そんな状態にあることなど想像も出来ないが、

自分ならどうかなあ。


映画とか音楽とかがすきなんで、

それを楽しむことが出来るなら生きる希望は見出せるかな・・なんて思ったりするけど・・



大切なのは、すべてを望むことはできないけれど

その状態の自分でできうる最大限の楽しみ方を見つけることかもしれません。



同じシチュエーションを描いたのは、

クリント・イーストウッドの『ミリオンダラー・ベイビー 』。


ボクシングに己の人生を見出していた彼女が事故によっておった障害。

この状態が彼女にとって負けなのであれば、

イーストウッド扮する男がとった手段もやむをえないと感じることができた。



表題作の主人公ラモンにとってこの状態はどうだったんだろう。


いろいろなしがらみがあるだろうし

葛藤もあったんだと思う。


けれども彼の人生を、彼の選択を決して敗北だとは思わない。

自分の命を自らの意志で、尊厳でたつことは誰にでも出来ることじゃない。

その時点で彼は自分の人生をコントロールしきったともいえるのではなかろうか。

その意味では彼もまた勝者なのだ。



この映画のテーマ色は青、それも空のようにすがすがしい色。


空も、海も、彼の周りに存在するすべてのものたちが、自然が、

静かな色彩で彼を見守っている。


そして音。

カルロス・ヌニェスの奏でる物悲しいケルト音楽が

最後の時を静かに、やさしく彩っている。


とても静かな空気があたりを支配する

しかし厳粛な空気よりもどこか温かみを感じてしまう。



人生の薄暮の時期。

そんなややもすると翳りを帯びた風景


そんな風景と

美しい海と、規則正しく打ち寄せる波が絶妙なまでにマッチしていて。

そんなことを思った瞬間、命の尊さにとたんに気づいて衝撃を受けた。


一人の命ではない。

家族や友達や、町や集落など自分に関連するものたちすべてと

つながって人は生きている。


生きること。

その意味を深く、深く感じる映画でした。



ぜひご家族でごらんになってみてください。

そして命について語り合ってみてください。

絶対的な答えは、ないかもしれないけれど、

命をテーマに話し合うこと、それ自体が今の世の中ても大切なことだと思うから。



初掲載2006/03/19,再掲載2008/2/14


たんたんと毎日って過ぎていくように感じることってありませんか?


毎日、仕事やら勉強やらで忙しく過ごしているはずなのに、

時の速さだけが妙に気になってしまったりして・・


楽しい日々はとても早く過ぎていきますが、

実は、ごくごく普通の日常もそれなりのスピードで駆け抜けていってしまうんですよね。



それって、流れのさなかにいると気づかないものです。

後から考えると、ああ、また日々が過ぎていく・・

ってな思いに駆られてしまいます。


でも、きっと何もおきていないような

たんたんとした日常だったとしても、時の流れに身を任せつつも、

ふと立ち止まって注意して川岸を見てみると、

そのときそのときで、自分自身が成長していくのが分かったりすると思うんです。


だから、日常がたんたんと過ぎていくことに、

不安を感じることなんてないんだなあと思います。


だって、自分はその流れの中で

意志をもって動いているのだから・・



そんなことをこの映画を見てから思うようになりました。


基本的に日常は、映画のように奇想天外なことなんて

そうそうおきないし、たんたんとしたもの。


でもその中でどう行動していくかが大切なんでしょうね。



この映画は特に何かが起きるわけではないし、

主人公たちはたんたんとした日常に身を任せています。


でもその日常の中でもいろんなことが起きて、

その中で彼らは意志をもって、行動していきます。



きっとそんな彼らの先にはアカルイミライが待っているような気がしてなりません。


無気力な毎日ではなく、意志のある日々。

それこそが、過ぎ行く日常をより充実したものに変えていくはずです。



ラストの御茶ノ水駅の線路の交差。

これが人生の縮図をあらわしているようで、とても印象に残っています。


ごちゃごちゃしているけれど、意志がしっかりしていれば、

時の流れという電車は、必ず目的の駅に着くんですよね。



小津安二郎に捧げると銘打たれたこの映画。

見る価値は十分にありますよ!!



※このブログは加筆・修正版です

 投稿:2005/10/3 加筆修正:2006/4/12 再掲載:2008/1/15)



見知らぬ町に降り立ってみる。


たとえ旅行だとしても、観光名所を離れた場所に足を向けると、

そこにあるのは奇異のまなざしだったりします。



外国を旅行しているときには、フランスでは「中国の人だ!」と子どもに叫ばれたり、

デンマークの住宅街の店では怪しげな目つきで見られたりいろいろありますが、

日本にいてもそんな視線を感じることもあります。



まあ、横溝正史とか京極夏彦の世界じゃないので、今はそれほどひどくないんでしょうけど、

昔は、地元意識が強くて「よそもの」に冷たくするという事実があったのかもしれません。



この映画は、ふとしたことから、投獄された経験を持つ

かわいらしい少女がとある町に降り立ったところから始まります。



はじめは疑心暗鬼で彼女を見ていた住民たち。

でも、彼女の天真爛漫な笑顔とか、溌剌とした生活にゆっくりとかたくなな心が

解けていきます。



しだいに、分かり合っていく住民と、彼女。


そして・・・



「よそもの」である彼女と村の住民の心が通い合っていく様がとても美しい。

こういう映画を見ると、世の中捨てたもんじゃないなあと思ってしまいます。



人と人のつながりが希薄になっている現在、

この映画をみて、つながりを認識してみるのもいいのかもしれません。


この森で、天使はバスを降りた
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初掲載:2005/11/24、再掲載:2008/1/13
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選曲にやられた映画といえるかも知れません


ここで聞くことのできる曲たちって
リアルタイムで聞いてなくても、なぜか
ものすごく懐かしい気分になります。



そう、自分の中学生あたりの頃を
思い出すんですよ。



HeartのCrazy on Youとか
http://jp.youtube.com/watch?v=GYbyCIxSY_w

StyxのCome Sail Awayとか
http://jp.youtube.com/watch?v=BARLfUmyBJA

Gilbert O'SullivanのAlone Again (Naturally)とか
http://jp.youtube.com/watch?v=iCZGqcMZ6Jw

The HOLLIES のAir That I Breatheとか
http://jp.youtube.com/watch?v=vZMA5oRzMj0

Todd Rundgren の Hello It's Me
http://jp.youtube.com/watch?v=zfE47sZjgJs

Sloanの Everything You've Done Wrong
http://jp.youtube.com/watch?v=d9R2PTPdriI

聞いてみるとすごく懐かしくないですか?
70年代の楽曲の持つ魔力ですね。


向田邦子の本を読んでも思いますが
男性よりも女性のほうが、精神的な成長が早いんでしょうね
この映画に出てくる男も、なんかおどおどしてて、
芯がない感じですもんね。



ちょっと一昔前を懐かしく思い出すことのできる秀作です。