『ピアノレッスン』(豪) | 極私的映画と音楽のススメ

極私的映画と音楽のススメ

印象に残る映画には印象に残る音楽がある。
思い出の名場面に流れていた音楽、言葉などをご紹介

ピアノ レッスン
¥3,591


幻想的な風景である。


浜辺に、ぽつんと置かれたピアノ。

そのピアノが奏でる物悲しいメロディ


未開の地だったニュージーランドの荒涼とした

風景の中に、その音色が溶けていき

ピアノのシルエットもまた蜃気楼のごとくまどろんでいるかのようだ


言葉を話せない主人公

彼女が言葉をつたえる術・・

それはピアノの鍵盤が奏でる響き


彼女の声の代弁であるピアノは、

そのまま彼女自身といってもいいのかもしれない


浜辺に打ち捨てられたピアノ

スコットランドから、ニュージーランドまでつれてこられた

彼女の置かれた状況、それだけでなく、彼女の心の内ともシンクロしている


そんなところに現れる男性。

ピアノを手に入れ、鍵をもち、

ピアノの鍵盤の数だけレッスンをしてくれという


ピアノは、彼女の存在に他ならない。

鍵盤一つ一つが彼女の構成要素ともいえる


そんな鍵盤の数だけレッスンをするという行為は

彼女にとって自分の心の内をさらけ出していく行為に他ならない


声を失っている彼女が、あきらめ掛けていた思い

もっというと心の奥底にしまいこんで、忘れかけていた思い


そんな想いが、レッスンを重ねるごとに

すこしずつ浮かび上がってくる



そんな彼女の変化。


それが呼び起こす悲劇。


そんな現実さえ、やさしくくるんでしまう音楽。


この映画はただひたすら、

荒涼とした大地の風、潮の匂いを感じながら

身を任せていれば良いんだと思う。


とくに何も考える必要もない


自然の奏でる音や匂いと

調和するピアノの音色、それだけを感じていれば良いんだと思う




幸せなはずなのに、なにか足りない気がする・・・

そんな風に感じている方にお勧めの映画です。