今回もさらに引き続き、魅力ある世界観について話をします。
ではさっそくいきましょう。
④.和風な世界観について
今回は和風な世界観についてお話しします。
西洋の転生ものばかりが目立つ昨今ですが、和風の作品も根強い人気を誇っています。
なによりも舞台が日本になるので、日本人読者には親しみやすいです。
歴史的な偉人を登場させるだけでも一定数のファンを呼び込むことが出来ます。
和と言われてすぐに頭に思い浮かぶのは、どんな作品でしょうか?
戦国武将、将軍、大奥、妖怪、陰陽師、茶道、華道、三味線、かるた、正月、神社、お寺、霊媒師、呪い。
キリがないのでここらへんにしますが、和は令和の時代になっても日本文化の至る所に染みついています。
和に紐づくワードを聞いただけで彷彿とする感情が、読み手の貴方にはあるでしょうか?
どこか刹那的で、幻想的で、儚さの中で確かに燃ゆる和魂。人の世の儚さを知りながら、強くあろうとする先人達。彼らはどこか飄々としていて、己というものをしかと持っていたように思えます。
求めた栄誉あるいは与えられた使命を全うしようとするその姿は、今の日本人にも根付いた美意識ではないかと私は思います。
要するになにが言いたいかというと、和風な世界観というのは、日本人の生き様を描かなければいけないということです。
人々はその生き様に勇気と元気と希望をもらいたくて見ます。
日本人の持つ強かな部分を存分に表現することこそが和風作品の醍醐味です。
さて、ここまでが大前提。
和風作品にはもう一つ大事な要素があります。
それは「豊かな感受性」です。
これは美しい自然と精神的な部分を尊ぶ文化が生み出したものと言えます。
日本人は目に見えないものを神格化し、何でも大事にする風習がありました。八百万の神が生まれたのも必然というもの。
それは綺麗な景観や、美しい代物には素晴らしいものが宿るという感覚にも深く紐づいているのではないかと思います。
はらりと舞い落ちた桜に母親を重ねたり、竹藪の坂の上から射す月光と蛍火で生まれる幻想的な世界を見て恋人のことを思い出したり、空に広がる大輪の花を見て一大決心したりします。
身の回りで巻き起こる事象の一つ一つに、日本人の思惑は揺れ動き、前に進んだり、後ろに戻ったりするのです。
簡単に例えると。
「あ、箸が転がった。落ちた。汚れた」
とだけ感じるのではなく、
「ああ、箸が転がってしまった。しかも落ちて汚れてしまった。何か不吉なことがあるに違いない」
と思ってしまうことがあるということ。
どんだけ心弱いねん。と思ってしまうところですが、これが日本人の悪いところであり、良いところです。
この感覚があるからこそ、日本人は感受性が豊かで、雅という感性を持っているのです。
事象と景観に想いを馳せることができるからこそ、感情の込もった——命の宿った事象と景観を表現することが出来ます。