監督:柴田剛
出演:住田雅清、とりいまり、堀田直蔵、白井純子、福永年久
2004年/日本

映画が始まってから、一時も、目を離せなかった。
映像に圧倒され続けた。
椅子に背もたれがあるから、なんとかここに居られるだけで、
なかったら、何かに掴まっていないと、
後ろに、押しやられてしまうんじゃないかと思うほど、
映像の力が、強かった。

他の観客の気配も忘れてしまう。
自分が、一体、今何をしているのかも分からない。
ただただ、スクリーンから、目を離す勇気が持てない。
音楽の大音量も相まって、
映画の何かについて考えるとか、
話の何かを考えるとか、
そんなことも、全くできない。

ただ、目の前に差し迫ってくる、
光を追うだけ。

技術的な面白さだけでは、きっとない。
迫りくる映画そのものの、エネルギーがスゴい。
そして、最後の最後まで。


身体障害者だとか、殺人者だとか、
そんなことはもうどうでもよくなってくる。
ここにあるのは、
住田雅清という男の話。

なぜ、これほどの映画が、
身体障害者が殺人者という内容の為に、
上映されなかったのか。
勝手な自己規制は、
物事の本質を見ようとしないことの裏返し。



この監督、とてつもなくスゴい。
この映画をつくったということだけで、
私の中では、天才。

明日、デビュー作「NN891102」を観に行こう。












監督:アキ・カウリスマキ
出演:カティ・オウティネン、マティ・ペロンパー、マト・ヴァルトネン、キルシ・テュッキュライネン
1994年/フィンランド


男の身勝手な理想がある。
無愛想で愛嬌もなく、ただ好きなものを語り好きなものを飲み続け、
それがクールだと言わんばかりだ。

男から見れば、
そんな部分に文句を言う女はいい女ではないんだと思う。

女から言えば、馬鹿じゃないかって呆れるばかり。

でも彼女達は、彼らを馬鹿にしながらもそこを可愛いと思ってたり、
そこに魅かれてしまったり。
男の側から描いているのだから、当然だと言えば当然だけど。

でも面白いのは、
同じくらい女の人を可愛く描いていること。

矛盾せずに、男の人も女の人も魅力的に描かれている映画はそうそうない。

とにかく、なんだか時代錯誤な男達だけど、
そこがとても可愛らしくて。
映画は、もちろん明るいトーンではないけど、
楽しくて素敵な物語。


町のバスで行ける距離に何日もかかっているところや、
なんかモヤーッとした疑問は、ちゃんと最後に解決。
男の理想がこれだけ描かれていることも、
女の人が可愛いことも、
全て納得。

とても可愛い映画。
この監督は、個性的で、なおかついい映画をつくる。







監督:ジム・ジャームッシュ
出演者:ビル・マーレイ、ジェフリー・ライト、ジェシカ・ラング、シャロン・ストーン
2005年/アメリカ


監督 アキ・カウリスマキ
出演 サカリ・クオスマネン、カティ・オウティネン、アンドレ・ウィルム
1998年/フィンランド


こういうことは、よくある。
珍しい話ではない。
一度くらいはこういうことをして、全てを失って、
失ったものの大きさを後で知るはめになる。

失ったものはもう取り戻せないし、
新しいものもそう簡単には見つからない。
とても普遍的な話。

誰だって、新しいものに明るい未来を見る。
いつも側にあるものの方が豊かだということに気づかない。


白黒、サイレント映画は個人的に可能性があると思う。
でも、この映画にその可能性があったかは、また次回観た時に考えよう。


監督:パウロ・チアゴ
出演:カルロス・リラ、ホベルト・メネスカル、ジョアン・ジルベルト、
   アントニオ・カルロス・ジョビン、フランク・シナトラ、ジョアン・ドナート
2005年/ブラジル


期待をせずに観た映画。
でも、興味深いドキュメンタリーだった。
ボサノヴァがボサノヴァになっていく頃に、
そのシーンを作り出した人、その渦中にいた人の
回想ドキュメンタリー。


楽器を持たないと、本当にどこにでもいるようなおじさんが、
ギターを持った瞬間、そのギターの音色と歌声の美しいこと。

作品中に歌われる全ての曲に対訳をのせている。
これほどに、女性に対して優しい愛の歌ばかりを歌っていたのかと、
驚く。


土地が生む音楽は本当に美しい。
「この海と気候に、この音楽以外何がある?」
と何度も聞かれる。

日本には一体どんな音楽があるのだろう。
近年新しく出来た音楽はないかもしれないが、
土地土地に、一番合った音楽はある。
私が、東京なら住めると思う理由も、
東京で息づく音楽が好きだからだ。

これほどまでに、美しい音楽が作られる場所。
治安も悪く、貧富の差も激しい。
騒音や機械音の代わりに波や風の音を聞く。
そんな場所から生まれる音。

そして、そこにこれほどの才能がちゃんと同時期に集まる。
離ればなれだった才能が一つに集まり、自由に、一つの音楽を作り出す。

こういう偶然は、きっと出来上がった音楽よりも、
ずっともっと素晴らしい神様からの土地へのプレゼントだ。







監督:アキ・カウリスマキ
キャスト:マルック・ペルトラ、カティ・オウティネン
2002年/ドイツ・フィンランド・フランス


素晴らしい映画。

私と監督が、もし同じ景色を見てもきっと違うものが見えてるのではないかと思う。
幾度かの、あまりにも完璧過ぎるカットにおかしくもないのに笑い出してしまった。
素晴らし過ぎる。

この映画の、一体何がいいのだろう。
映像の独特の美しさ。
脚本の面白さ。
役者の巧さ。
挙げていけば、きっと映画に必要な要素を全て褒めることになる。

自分が、スゴく甘い目で映画を観ているのは知っている。
でも少し厳しめに観ても、本当によく出来た映画だと思う。
私の映画の基準はただ一つ。
終わったあとにすぐまた観たいと思うか。
そして、実際に観れるか。
それだけ。

最近は、ドイツに住んでた頃のように観るものに困ってしまうことはない。
むしろ、次に観るものが山のようにあって、2度観を出来るほどの余裕もない。

そういう中での、久しぶりの2度観。

強く感動するものや衝撃的なシーンが印象に残る、そんな映画だけが素晴らしい映画ではない。
静かに、予想通りに終わったとしても、
何がが動けばいい。

普遍的に求めるものがきっとこの映画にはたくさんあるんだと思う。
映画に対しても、物語に対しても。












監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
2001年/ポルトガル

今年100歳になるということで特集が組まれていた。
素晴らしい「家路」と同じ年につくられた62分の中編。

物語の引っ張っていく力が弱かったのか、
観る前に腹一杯食べた私が悪いのか、
終始、睡魔に。

繰り返される映像とナレーションの多さ。
「夜顔」や「家路」の映像美と品の良さはそのままに、
この人の映画の良さである「セリフ」や「間」で心を引きつけることが少なかった気がする。
半分ドキュメンタリーとして作られたものだからか。。




でも、100歳になろうというのにまだ作り続けているというのは、本当にスゴい。

この歳になって
「もう何かを始めるのは遅いんじゃないかな」
と思い続けていた最近。
今から始めても、まだまだ今までの人生を2回できる長さはある。
なんだか「遅い」とかいう言葉を発してもいい年齢。
そんなものにも達してないんじゃないかと、恥ずかしい気持ちに。


そういう人生をちゃんと生きている人がここにいて、
新しいものを作り続けている。
こういうものが、作品とは別に人に与える大きなもの。
誰も彼も100才まで生きられないし、
ましてや80年近く一つのことをやり続けるなんて。


もう一度、機会があればちゃんと観直そう。



監督/脚本:ロイ・アンダーソン
2007年/スウェーデン、フランス


色々な人の色々な話が少しずつ繋げられている。
ほとんどは、センチメンタルな寂しげな話。
誰もがもってる悲しみや悩みを、
少しずつ、色々な人が語ってくれる。

どれも繋がりがなく、ただ次々と並べられているような感じ。
でもずっと観てたら、何かが繋がってる。
ストーリーがしっかりなくてもちゃんと話は見えてくる。

「また、明日があるよ」
って何度も出てくる台詞。
人生の楽しみは明日もあるし、
明日があるから楽しみはきっと小出しで来るんだ。って自分の人生に優しい気持ちになる。
悲しい話も悲しい気分にさせない。
でも、現実逃避やポジティブシンキングでもない。
もっと自然な気持ち。


ロックスターとの結婚を夢見てる女の子。
結婚する二人の為にたくさんの人が集まってくる。
その理由は、二人に「おめでとう」って言いたいから。
誰一人彼女のことは知らないのに、お祝いの言葉を言う為だけに、
知らない人達が集まって大声援で祝ってくれる。

これは、彼女の夢のお話だけど、
こんな優しい夢を見れる彼女はとても可愛くて、愛おしい。
そんな夢の話を、微笑みながら優しい気持ちで聞いてるおじさん達も、なんとも素敵。


この監督は、映画の手法じゃなくて、
映画の存在そのもので幸せなファンタジーをつくる。
映像がスゴいのでもない。
ストーリーが現実離れしてるのでもない。

一体、何があんなに幸せな可愛いファンタジーをつくるんだろう?
人生を嘆き悲しんでいる人ばかりが出ているのに、
とても優しい気持ちになれる。
傷の舐め合いではなく、
悲しんでもなお人に対する優しさが残ってることに気づかせて、
そこに喜びを感じさせてくれる。
自分の中の変わらない部分があることに、
きっと未来の夢を見るのかもしれない。





脚本・監督:チャン・リュル
2005年/韓国・中国


この映画を観て、一体どんな感想が言えるだろう?

静かな、本当に静かなまま映画は進む。
主人公は、ほとんど感情を出さずに、諦めたかのように、
酷い現実を、黙って受け入れる。

受け入れる。
違う。きっと、心の奥に痛みが届かないように、
シャットアウトしている。
痛みを感じない為に、もう一つの自分をつくって、
すべて、そのもう一人の自分に体験させている。
だから、次々起こることも、
黙っていられる。


彼女の無垢を、搾取していく男達は、どこの世界にもいる。
見返りの為に、彼女が何度も犯される。
信用を植え付け、男達は、結局体だけを奪う。
そして、彼女を陥れてでも、自分を守る。

映画の中では、男と女。欲望と体。というものだったけど、
世界中では、色々な形で、こんなようなことは行われている。


彼女が、一番大切なものまで失い、
殺していた感情が、やっと現実に戻ってきたのか、
彼女のとった行動は、確かに不道徳で、犯罪に違いない。
でも、彼女をそこまで追い込んだもの。
それを考えることなく、彼女だけを責めるのは、
あまりにも浅はかだ。

こういう構図。
本当に、どこにでも見かける。
語られていないこと、見えていないことにも、
ちゃんと、感情があるし、事実もある。
見えてるものや、結果だけでは、全ては分からない。



監督:アキ・カウリスマキ
出演:ヤンネ・フーティアイネン、マリア・ヤルヴェンヘルミ
2006年/ドイツ、フィンランド、フランス


全てが、ミニマル。
最小限の動き、最小限の台詞。
余計なものを排除した風景。

それらが彼独特の映画を創りだす。
だからといって、映画が無味乾燥なものになるかと言えば、そうではない。

抑揚を抑えた演技は、人の心の変化とは音も立てずに起こることを思いださせる。
動きのないようにみえる映像さえも、
一瞬の積み重ねで時間は作られていることを改めて突き付けてくる。


彼が参加した「30ミニッツ」というオムニバス。
どの映画が、彼のつくったものなのか思いだせなかった。
でも、一枚写真を見たらほとんどを思いだした。
内容全てではなく、断片的なストーリーと映像。

独特の、映画に流れる色と空気。
登場人物の顔、表情、動き。
冬の長い、北の国独特の人と街の陰と闇。


そして、こんなに静かに終わってしまう映画は、なかなかない。
ただ淡々としていて「えっ?」って思うヒマなくエンドロールが流れ出す。

きっと、全てはこんなものなんだと思う。
劇的なことがある訳でなく、ない事が悲しいということでなく、
一瞬前のつづきとしてごく淡々と次の一瞬がくる。
それを自然に繰り返されることが、
地に足をつけた現実なのだ。
突拍子にやってくることではなく。

負け犬3部作の最終章らしいが、
少なくとも、この映画には、救いがある。未来がある。


好きだという人が多い理由が分かった。
ちょっと、この監督の作品を全て観てみよう。