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島田社長「NTTの次の成長をリードするのがデータGだ」、AIと光量子に期待
榊原 康
日経クロステック編集委員
この記事の3つのポイント
- NTTの島田明社長にNTTデータグループ完全子会社化の狙いを聞いた
- AIや光量子、光電融合デバイスをビジネスに組み込んで成長を図っていく
- NTTグループ全体にAIをどう導入していくかもデータGの大きなミッション
NTTは1985年の民営化後、分離・分割の歴史をたどったが、40年後の節目に待っていた姿はまさかの一体化だった。NTTドコモに続き、NTTデータグループも完全子会社化した。NTTデータグループをNTTグループの中核に据え、次世代情報通信基盤「IOWN」をはじめ、AI(人工知能)や光量子コンピューターなどを武器にグローバル市場に戦いを挑む。島田明社長に決断の背景や今後の戦略を聞いた。
(聞き手は榊原 康=日経クロステック/日経コンピュータ

島田 明(しまだ・あきら)氏
1981年4月日本電信電話公社(現NTT)入社。西日本電信電話(現NTT西日本)財務部長や東日本電信電話(現NTT東日本)総務人事部長などを歴任。2012年6月NTT取締役総務部門長、2015年6月常務取締役総務部門長、2018年6月副社長、2022年6月社長(現職)(写真:加藤康)
2020年のNTTドコモ完全子会社化に続き、2025年にはNTTデータグループも完全子会社化と、一体化への執念のようなものを感じました。一方、これまでの分離・分割は何だったのだろうかとの思いがあります。
NTTグループの事業ポートフォリオの変遷を見ると理解しやすいと思います。1985年に民営化した頃は電話のビジネス、固定通信が90%近くを占めていました。その後、時代の変化とともにポートフォリオが変わってきました。直近ではSI(システムインテグレーション、データセンターを含む)が4割に拡大し、その半分は海外です。
NTTデータグループを完全子会社化したのは、NTTデータグループの事業がNTTグループの今後の成長を支える大きな柱の1つだからです。それを全面的に中心へ持ってこないとポートフォリオの核がなくなってしまいます。
AIの登場も大きい。2025年度上半期でAI関連の売り上げは880億円程度。通期で1500億円を見込んでいますが、恐らく超える。対外的に公表している2027年ごろに5000億円という目標も超えていくかもしれない勢いです。
もともとNTTデータグループはさまざまな産業向けにシステムを構築してきましたが、SAPやSalesforceのようなビジネスアプリケーションの導入支援も手掛けています。個別システムにAIを入れていくのはもちろん、後者のほうにもAIを活用して進化させていく流れがものすごく増えていくと考えています。
2025年11月に開催した「NTT R&D FORUM」で発表した通り、2030年に100万量子ビットの光量子コンピューターの実現を目指しています。AIと光量子コンピューターを含めたITのビジネスが確実に大きくなっていく見通しが既に立っているため、やはりポートフォリオの中核に持っていく必要がありました。我々の次の成長を考えると、NTTデータグループにリードしていってもらう必要があります。
もちろん、NTTドコモのようなコンシューマー向けのビジネスがなくなるわけではありません。金融や保険をはじめ、スマートライフ領域で付加価値を高めていきますが、日本のマーケットが中心です。かたやAIや光量子コンピューターはビジネス向け、それもグローバル展開を強化していきますので規模が全く違います。今はSIが4割ですけど、確実に半分以上に拡大するはずです。
NTTデータグループの完全子会社化にかかった費用は約2.4兆円。親子上場問題の解消や意思決定の迅速化などの狙いは理解していますが、その費用を他のM&A(合併・買収)に振り向けたほうがよかったのではとも思います。グループ連携の強化では駄目だったのでしょうか。
やはり親子上場の問題が大きいです。NTTデータグループはもともと保有資産が少なかったが、グローバルのビジネスをNTTデータグループに統合した段階で、データセンターや海底ケーブルなども一緒に保有する「アセットヘビー」になった。これにはさまざまな議論がありました。データセンターへの投資を増やしてアセットヘビーにするより、デジタル分野のM&Aを確実に実行し、もっとアセットライトなビジネスを拡充したほうがいいという意見も出ました。我々がデータセンターにもっと投資してほしいと言っても、議論が分かれて時間がかかってしまう問題がありました。
海底ケーブルやデータセンター、通信サービスなどのインフラからNI(ネットワークインテグレーション)、SI、コンサルティングまでフルスタックで提供できる会社は世界を見渡してもほとんどいません。我々はアセットヘビーになってもフルスタックがよいと思っており、そのほうがユニークな存在になれる。NTTデータグループとも意思を統一していく必要があり、完全子会社化したほうが意見を整理しやすくなります。
一方、データセンターへの投資を拡大しようとなると、相当なキャッシュが必要になります。当然、NTTデータグループ単体よりも大きなバランスシートにしたほうが調達しやすい。こうした観点でNTTデータグループの幹部ともさまざまな議論を重ねた結果、完全子会社化したほうがよいとなりました。議論のたまものだと思います