日本のあの老舗スニーカーブランドが世界のZ世代の心をつかんでいる理由

 

 

ブルームバーグ・ビジネスウィーク(米国)

 

Text by Avalon Pernell

 

日本の老舗ブランド「オニツカタイガー」のスニーカーが、世界的に、しかも若い世代のあいだで人気急上昇している。その理由は何なのか。オニツカの飛躍ぶりを、米経済メディア「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」が追う

 

 

 

缶入りの抹茶、モンチッチのガチャガチャ、セブン・イレブンのおにぎりなど──。こうした土産品と併せて、流行りに敏感な訪日観光客が帰国直前、スーツケースに詰め込むアイテムがまたひとつ増えている。それが、フットウェア業界に衝撃を走らせているのだ。

そのマストアイテムとは、創業から76年を迎えた日本のシューズブランド「オニツカタイガー」のスニーカーだ。

この薄底の運動靴は、何十年にもわたって忠実なファンを獲得してきたが、いま新たに人気が爆発している。世界中からの訪日観光客が急増し、それに続いて、何かと日本絡みのものがネット上でもてはやされているおかげだ。
 

最新の決算報告によれば、オニツカタイガー事業の2025年上半期の売上高は660億円近くにのぼる。前年同期比で、50%増となる数字だ。

投資家たちも同ブランドの親会社「アシックス」を支持しており、同社の株価は、この2年で3倍以上も値上がりした。競合大手「アディダス」の株価は同時期で13%値上がりしたが、「ナイキ」の株価は30%値下がりした

 

 

 

銀座の旗艦店はインフルエンサーの人気スポット


これまで知名度が低かったオニツカの「MEXICO 66」や「TOKUTEN」にまつわる動画が、ソーシャルメディアにあふれている。銀座にあるオニツカの旗艦店は、インフルエンサーたちが動画を撮影したがる人気スポットになっている。

この旗艦店には、「MEXICO 66」だけを扱うフロアがある。そこでは買ったシューズにイニシャルの刺繍を入れてカスタマイズすることもできる

 

 

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ブランドを伝えることを重視したオニツカタイガーの“直営店戦略”

 

あの企業の海外戦略を徹底解剖

 
 
 
 
 

 

 

クーリエ・ジャポン

 

Text by COURRiER Japon

大勢の人で賑わう表参道から少し路地を入った場所にある「オニツカタイガー」の旗艦店の前では、外国人観光客が店をバックに自撮りしているところだった。同ブランドが海外で人気なのは知っていたが、ここ旗艦店もファンにとっては観光スポットのようだ。光に満たされた店内にはスニーカーだけでなく、オリジナルのウェアやバッグなども並んでいる

 

 

 

オニツカタイガーはもともと1949年に鬼塚喜八郎によって設立されたスポーツシューズブランドだ。合併によって1977年にブランド名が「アシックス」に統合されて以降、そのブランド名は使われなくなっていたが、2002年に“ファッションブランド”として復活した。

復活するに至ったきっかけは、ヨーロッパのファッション業界の人たちからの声だった。モデルやスタイリストなどが、オニツカタイガーの靴をもう一度復刻してほしいと訴えたのだ

 

 

 

その要望を聞いて、当時の欧州法人社長だった尾山基が主導する形で復活した。つまり、オニツカタイガーはヨーロッパで復活し、日本に里帰りしたブランドなのだ。同社でブランド構築を担当するグローバルライフスタイル統括部長の庄田良二はこう説明する。

「当時はヨーロッパのほうがスポーツとファッションの垣根が低かったんだと思います。日本のファン層はスポーツ好きな人が多く、そういうシーンでしか履いてもらえなかったんですが、ヨーロッパの人たちにはファッションアイテムとして受け入れられたんです