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Acoustune「HSX1001 Jin-迅-」レビュー。金属だからこそ到達できた孤高の音を聴く
2025/09/02
高橋 敦
Acoustune「HSX1001 Jin-迅-」レビュー。金属だからこそ到達できた孤高の音を聴く (1/2) - PHILE WEB
Acoustune 完全ワイヤレスイヤホン「HSX1001 Jin-迅- 」オープン価格(実勢価格:税込89,980円前後)
目が覚めるような鮮烈なサウンドで人気のイヤホンブランドAcoustune(アコースチューン)。彼らが目指した理想の音を完全ワイヤレスイヤホンで実現するために採用した手法が、「金属チャンバー」×「無線モジュール」の組み合わせだった。今夏にはファン待望の交換用金属チャンバーが複数登場するなど、「HSX1001 Jin-迅- 」の名の通りにスピーディーなサウンドは一聴の価値ありだ。
無線モジュールと音響チャンバーが分離できる独自構造
ダイナミック型ドライバーによるシングルフルレンジ構成と、音響チャンバー部と機構ハウジング部を分離したモジュラー構造を採用した金属筐体。Acoustuneのイヤホンはその2大要素へのこだわりを貫いてきたからこその魅力を備え、それを愛するファンに支えられている。
Acoustuneフラグシップ「HS2000MX SHO-笙-」でも採用したモジュラー構造
であるがその金属筐体が、同社の完全ワイヤレスイヤホン開発における壁となっていたという。金属は電波を遮り無線通信を阻害する。しかし金属筐体でなければAcoustuneが目指す音質に達しない。
だがしかし彼らはその壁を、先に挙げた2大要素のもう一方によって突破。モジュラー構造を活用し、音質に関わる音響モジュール側は引き続き金属筐体とし、そこに樹脂筐体の無線通信モジュールを組み合わせることで、完全ワイヤレスイヤホンとして機能する形としたのだ。
その無線モジュールは、先んじて完全ワイヤレスに取り組み無線技術を蓄積していた、同社サブブランド「ANIMA」との共同開発によってクオリティを確保。すなわち、Acoustuneならではの難しさをAcoustuneならではの手法や資産で乗り越え、まさにAcoustuneならではの完全ワイヤレスイヤホンとして誕生したのが、この「HSX1001 Jin-迅-」となる。
Acoustuneのサブブランド「ANIMA」から登場した完全ワイヤレスイヤホン
また本機はユーザー自身の手で交換できる新モジュール構造を活かして、別の素材音響チャンバーで別の音質を獲得、バッテリー劣化や仕様の陳腐化には無線モジュール交換で対応、有線モジュールで有線イヤホン化などが可能になるオプション展開もある。将来への期待も膨らむ。
モジュール部は自分で簡単に交換できる仕様だ。音響チャンバーは色褪せることがない一方で、デジタルの部分はトレンドやバッテリーなどの消耗がある。確かに「交換」の意味合いもあるが、オプションで用意されているのは「有線モジュール」や金属素材の異なる音響チャンバーだ。
モジュールとチャンバーの着脱はトルクスドライバーを使用する
音の輪郭を強くハッキリと描くアグレッシブな音
まずは標準装備の音響チャンバーに注目だ。剛性と軽量性を兼ね備えるアルミはイヤホン筐体の定番材であり、標準装備として納得の選択。そこに、ポリマーバイオマテリアル「ミリンクス」振動板採用ドライバーの最新世代を本機向けに再設計したものを搭載。まずは同社のスタンダード的な構成を押さえてきた。
金属らしさを感じることができるケースデザイン
その実力を、対応高音質コーデックLDAC/aptX Adaptiveのうち、今回はLDAC接続でチェックした。やや硬質な音調、キレのよさが持ち味。星街すいせい「もうどうなってもいいや」を聴くと、エレクトリック感増し増しのアグレッシブさが痛快だ。ギターのカッティングのシャキッとした鋭さを筆頭に、音のエッジが効いている。
ボーカルにおいては、サ行をあえて刺し、タ行もあえて立たせることで刺激性や攻撃性を強めた歌い方のその成分、つまりはこの歌の「もうどうなってもいいや」感をより引き出してくれる。中盤の効果音的に響く超低音の、その響きの沈み込みがしっかりしているのもポイント。
総じて現代ハイエンド機らしいワイドレンジ感や解像感を存分に楽しめ、音質特化型として高水準を満たした完全ワイヤレスイヤホンだ。その上に将来の発展性まであるというのだから、長く楽しめる愛機になってくれることだろう
「真鍮×有線」を実現した“アップグレードガジェット”「C:02 M:02」
Acoustune「HSX1001 C:02 M:02 」オープン価格(実勢価格:税込44,000円前後)
追加の音響チャンバーおよびモジュールの第1弾はすでに発売中である。真鍮製音響チャンバー「C:02」と有線接続化モジュール「M:02」、そして3.5mmケーブル「ARM014」、交換作業用ドライバーのセットとなる“アップグレードガジェット”「C:02 M:02 」パッケージだ。
まず真鍮製音響チャンバー「C:02」は、追加音響チャンバー第1弾として極めて順当。Acoustune歴代イヤホンの中で、真鍮チャンバー採用機は常に人気を集めてきた。となれば追加音響チャンバーにおいても「真鍮ほしい!」の声は予想され、それを踏まえての第1弾での投入ということだろう。ドライバーは標準チャンバー「C:01」と同型とのことなので、純粋に真鍮とアルミの筺体材での音の違いを味わえる。
左からアルミ、真鍮、洋白と、3種類のチャンバーがラインナップ
一方で追加接続モジュール第1弾「M:02」は有線接続化モジュールだが、こちらも順当。登場直後の現状、標準の無線モジュールは最新スペックであるしバッテリー劣化も当面はない。となればいまほしいオプションは有線化モジュールだ。こちらは電波干渉を気にする必要はないので、同社の主要有線モデルと同じくアルミ筐体を採用。
リケーブル端子がPentaconn Earな点も同社主要モデルと同じく。つまりこれと音響チャンバーC:01/C:02の組み合わせは、普通に同社有線イヤホンそのものになる。というか「C:02 M:02」パッケージは音響チャンバー、有線接続化モジュール、ケーブルが揃っているわけで、それ単体で有線イヤホンのお得なパッケージとしても成立してしまっているのだが、いいの?
有線モジュール「M:02」は、コネクター部にPentaconn Earを採用
ともあれこちらも無線モジュールと組み合わせ、「C:02」と「M:01」で試聴。「もうどうなってもいいや」を聴くと、メインリフのシンセの肉感など、エレクトリックサウンドの中でのアナログ的なニュアンスが強まる印象だ。歌もよりしなやかに厚く、ほぐれた感触に。そのほぐれによってサ行タ行の攻撃性は薄れ、しっとりとした雰囲気が出てくる。
また筐体の重さがグッと増して制振力が高まったおかげか、ベースなどの低音は、豊かな広がり感ではなく、密度感や重みで存在感を発揮。真鍮筐体に期待されるサウンドを期待通りに提供してくれるチャンバーだ。
アップグレードガジェットの第2弾は「洋白チャンバー」
Acoustune「HSX1001 C:03 M:02G 」オープン価格(実勢価格:税込69,680円前後)
※写真のケーブルは開発中のものです。
加えてアップグレードガジェット第2弾として、洋白製音響チャンバー「C:03」と有線接続化モジュール、4.4mmケーブルのパッケージも登場した。こちらは2025年8月8日に発売したのだが、取材は先んじて行ったため春時点での評価機をチェックした。
チャンバーとモジュールを分離した様子
洋白は真鍮と同程度の比重を持つ金属。音調もアルミチャンバーより真鍮チャンバーに近い。その上で、強度全般において真鍮に優るという特性のためか、エッジの出し方はアルミほどシャープではなく真鍮ほどはほぐれさせずの、滑らかな鋭さといった感触。この塩梅をちょうどよいと感じる方も多いだろう。
さすが金属筐体のプロ、Acoustune。それぞれの材の魅力を存分に発揮する仕上がりだ。
SPEC
HSX1001 Jin-迅-
SPEC ●通信方式:Bluetooth Ver.5.4 ●対応コーデック:SBC、AAC、LDAC、aptX、aptX Adaptive、aptX Lossless ●ドライバー:10.2mmダイナミック型「改良型第3世代ミリンクスドライバー」 ●連続再生時間:約15時間(ケース込み約50時間)※再生コーデック、音量などにより前後します ●質量:約9.5g(イヤホン片側)、約60.5g(ケース) ●付属品:イヤーピース(AEX70 S/M/L、AEX50 S/M/L)、充電ケーブル、キャリングケース
C:02 M:02
SPEC ●型式:有線接続モジュール×音響チャンバー(真鍮) ●ドライバー:10.2mmダイナミック型「改良型第3世代ミリンクスドライバー」 ●質量:約10g(チャンバー部)、約2.5g(有線モジュール部) ●付属品:イヤーピース(AET07 S/M/L)、3.5mmステレオミニケーブル、交換用精密ドライバー
C:03 M:02G
●型式:有線接続モジュール×音響チャンバー(洋白/ジャーマンシルバー) ●ドライバー:10.2mmダイナミック型「改良型第4世代ミリンクスドライバー」 ●質量:約10g(チャンバー部)、約2.5g(有線モジュール部) ●付属品:イヤーピース(AET07 S/M/L)、4.4mmバランスケーブル、交換用精密ドライバー
(提供:ピクセル