日本式の育成で生産性向上…米進出「三度目の正直」ダイキン、従業員に「カイゼン」の意識定着
空調機器を生産する米国の工場(10月15日、米テキサス州で)=小林泰裕撮影
空調機器世界最大手のダイキン工業が、米国事業を急拡大している。過去2回の撤退を経て、日本式の生産や人材育成を取り入れて生産性を引き上げ、競争力を高めた。
(ニューヨーク支局 小林泰裕)
指導「ドージョー」
米南部テキサス州ヒューストン近郊にある主力工場。東京ドーム43個分に当たる約200万平方メートルの敷地には23本もの生産ラインがあり、従業員が真剣な表情で室外機などを組み立てている。約1万人が働き、家庭向け空調機器を中心に年間約470万台を生産している。
工場には「ドージョー」と呼ばれる人材育成拠点が併設され、ベテラン従業員が新人に溶接やネジの装着などを指導する。一定のレベルに達しなければ、生産ラインには入れない。
米国事業を統括する冨田次郎副社長は「移民社会の米国は、言語も文化も多様。難しかったが、日本のものづくりの文化を丁寧に伝え、従業員に『カイゼン』の意識を定着させた」と話す。
4工場集約
ダイキンは1981年と98年にも米国に進出したが、現地で主流の全館空調市場で苦戦し、いずれも撤退を余儀なくされた。
「三度目の正直」を目指し、2012年に米空調機器大手グッドマン・グローバルを37億ドル(当時のレートで約3000億円)で買収。さらに4億8000万ドルを投じてテキサス州などに点在していた4工場をヒューストン近郊に集約し、生産効率を高めた。
日本や欧州など他地域の工場と部品や生産ラインの仕様を統一し、部品不足や機器の故障が発生した際の対応力も向上させた。
売上高4倍
また、省エネ規制が段階的に強化されていることが環境性能の高いダイキン製品には有利に働いた。近年は、AI(人工知能)の普及を背景にしたデータセンター向け空調も好調だ。
こうした追い風を受け、2024年度の米国事業の売上高は1兆6360億円と、この10年で4倍に拡大した。北米の空調機市場のシェアは19%で2位。数年以内の首位浮上を目指している。
今後の課題はトランプ米政権による高関税政策だ。タイから輸入している部品などに関税がかかり、25年度には本業のもうけを示す営業利益が470億円下押しされると見込む。米国景気の先行きにも不透明感があり、供給網の見直しや工場の生産効率改善など、一段の経営改善が急務となっている
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