しつこくてすまねえ…でも紹介させてくれ…
さっき読み終わって、興奮が収まらない!
(ちなみにクソ長文なんで、全部読むには断固たる決意が必要です)
- 楊家将〈上〉 (PHP文庫)/北方 謙三
この前から言ってる水滸伝より、少し時代が遡ります。
無敗と言われた軍閥「楊家」の物語。
「宋」と「北漢」が、肥沃な大地である中原の覇権を巡って争う中、
楊家の長、英雄と言われる「楊業」とその息子たちは、属していた北漢を見限って、宋に帰順する。
楊業の帰順により、宋は北漢を破り、覇権を手にするが、
今度は北方から中原を狙う「遼」との戦いが始まり、
楊業は、その戦場へと赴く。
そもそも、この「楊家将」という物語は、「三国志」や「水滸伝」とは違い、
日本では翻訳すら出ていないんですね。
ただ、中国においても、小説として読まれる、というより京劇や芝居として親しまれているそうです。
日本で言う「水戸黄門」みたいなもの。
小説より、テレビドラマの方が認知度が高い。
そこを、北方氏は、いきなり小説にして出してしまった。
氏曰く、
「私は、初めて『楊家将』の原典の翻訳を読んだ時、
戦争をするだけに生まれてきたのではないかと思える楊業という男に呼び止められ、
書け、と命じられているような気がしたんです」
中身を読めば、あながち嘘でもなさそうだ、と思わざるを得ません。
それほどに、面白いし、どこかしら鬼気迫るものすら感じます。
特に、戦闘の場面は秀逸。
何万対何万という戦闘は、大味になるどころか、凄まじい迫力を持って僕らを圧倒してきます。
そんな大きな戦であっても、薄氷を踏むような駆け引きがあり、
そして、勝機は一瞬。
それが見えた瞬間、思わず鳥肌が立ちました。
こんな一瞬でこれほどの大戦の勝敗がつくのかと、唖然として眺めるしかありません。
楊業は、無敗の将軍で、人々は敬意を込めて「楊令公」と彼を呼びます。
しかし、彼もまた人間。
宋に帰順したものの、文官との関係に苦悩し、
それによって、より生々しい人物として感じる事が出来るのです。
そして、戦場に立った時の彼は、まさに英雄と呼ぶに相応しい。
カリスマとかヒーローとか、そんな安いカタカナで表現するなんて、以ての外。
英雄という言葉以外、表現できない。
また、重要な人物として、遼の将軍、「耶律休可」がいます。こいつもすごい。
彼は「白き狼」(髪の毛が真っ白な為)と呼ばれ、楊家軍の前に立ちはだかり、宋軍を翻弄します。
彼と楊家軍の戦いは、
小説のくせに、瞬きすると見逃してしまうんじゃないか、と思ってしまうくらいに、
めまぐるしく変幻に動き、息つく暇を許してくれません。
そして、楊業と耶律休可の決戦は、あまりにもありえない形で終わります。
そんなことあるんか!と。
しかし、それもまた人間であるからこそ、起こりうる結末なのかな。
って言いたいけど…しかし…けど…ぐむむ…という感じの決着です。ぐむむ…
ただの「正義」対「悪」という二極間で描かれているのではなく、
宋の人間だけでなく、遼の人間の立場も描き、
それぞれの思惑がぶつかり合うからこそ、戦が起きてしまう。
どちらの立場に立っても読めるのです。
だから、面白いし、深い。
北方氏の小説の面白い所、というか、ずるい所は、
いろんな作品がリンクしている事です。
例えば、この楊家将をはじめとして、
『血涙―楊家将後伝』と続き、さらに『水滸伝』へ繋がり、
またさらに『楊令伝』(これはまだ執筆中)と続いていく訳です。
登場人物で言えば、
楊家将で登場する楊業の息子「六郎」
水滸伝では彼の子孫「楊志」が登場し、
その息子「楊令」が楊令伝で主人公として登場する。
つまり…
時代を遡ろうが、下ろうが、いろんな作品に関連する人物を見つける事が出来るのです。
読んでる奴には分かる、みたいな。
おもわず、ニヤリ、としてしまう、ちょっと内輪的な優越感。
とどのつまり、俺みたいなカモには絶好のエサです。逃げられない仕組みになってます。
完全にしてやられました。
…久々に長々と書いてしまった。
まあ、百聞は一読にしかず。
読んでみて。
そして明日は水滸伝12巻の発売日なのだ。
本でこんなにわくわくするのって、小学生のジャンプ以来だ。