活字中毒の解毒剤
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夏の名残の薔薇

著者: 恩田 陸
タイトル: 夏の名残りの薔薇

ハイ。先ほど読み終えた本です。

またまた恩田陸です。


この作品は恩田さんお得意の三人称多視点で描かれるミステリ小説だ。

とある山奥のクラシカルなホテルを貸しきって毎年行われる豪華なパーティ。

主催者はまるで魔女のように妖艶な魅力を持つ三姉妹。

晩餐の席で繰り広げられる彼女たちの虚構で飾られたグロテスクな会話。

そして、滞在中にそれぞれ登場人物に起きた出来事。

次々と起こる変死事件。

同じ時間をそれぞれの視点から描くと同時に、実在するアラン・ロブ グリエ著「去年マリエンバートで」という作者の脳内で描かれた画像をそのまま文章にしているという一風変わった散文を引用し、それが深く物語とリンクしている。


この物語の語り手たちはとても孤独に感じた。

それぞれに秘密を抱え、愛する人にさえその胸の裡を見せようとはしない。

それぞれある人を憎み、ある人を愛し、殺人願望を募らせ実行する。

それは、妄想なのか現実なのか。

記憶、デジャヴ、現実が渾身一体となり、何が真実か何が幻かの判断が付かなくなる。

ラストは思いもよらぬ真実が待ち受けている。

果たして、この中で本当に罪を犯した人はいったい誰なのか・・・。


本格的なミステリ小説。

最初はあまりページが進まなかった。

この小説の趣旨があまり見えなかったのと、舞台が山奥の古いホテルだなんてありきたりに感じてしまったせいだろう。

だが、読み進むうちに徐々に三姉妹にまつわる奇妙秘密やそれぞれの出生の秘密が繋がってくるのでページをめくるのがどんどん面白くなってくる。

それに、それぞれが同じ場面を語っているにもかかわらず、ある語り手ではあの人物が死んでいたり、ある語り手では、生きていたり、読み手に不思議な感覚を呼び起こさせる。

そして意外な語り手で進められる最終章は結末に唖然とさせられた。


いつも思うのだが、恩田陸は天才だ。






あらゆる場所に花束が・・・

著者: 中原 昌也
タイトル: あらゆる場所に花束が…

第14回三島由紀夫賞作品。

まず、この本の装丁に驚かされる。

通常タイトルのあるべき場所に堂々と作者名が、そして、その下に小さくタイトルが・・・。

血のように真っ赤に塗りつぶされた背景には心霊写真のごとく白く浮き上がる顔。

中央には緑のシャツを着た男が拳を握り締め、白目を剥いている。

下方にはイスに座りうなだれている男。そしてそれを咎めているような男。

表紙をめくり、裏表紙を見ると、そこにもまた鉛筆デッサンのような顔のない人など、奇妙な絵が描かれている。

4年ほど前に店頭に並んだこの作品を手に取ったとき、私は作者を知らなかった。

もちろん彼の作品を読んだこともなく、ただ私はこの装丁に興味を持ち、この本を購入したのだ。


まず、この本に何かの期待をしてはいけない。

ページをめくるたびに次の展開が気になったり、主人公の気持ちの移り変わりや、環境に共感を得たり、ハラハラしたりドキドキしたり、なんてことは起こらない。(と、思う)

一般的なストーリ性のある小説が読みたいのなら、この本は読まないべきである。

登場人物はとてもクールで客観的。

まるで人間の冷の部分、陰の部分のみで形成されているみたいだ。

何らかの関連性があるにせよ、それぞれ登場人物の行動や心情は大変理解しがたい。

おそらく理解する必要もないのだと思うが。

とても衝撃的なラストで締めくくられるが、それも登場人物たちは冷めた傍観者となっている。


感情移入することはない作品だったが、読み終えて心の深いところに澱のように何かが残ったのは確かだ。


余談だが、友人が某イベントで著者に会ったそうだ。

彼は自分で作った手作りキーホルダーをいろんな人に配っていたらしい。

とても不思議な人だったって。



蚊トンボ白鬚の冒険

著者: 藤原 伊織
タイトル: 蚊トンボ白鬚の冒険

久々の更新です。

なんだか、忙しく・・・・。


さて、先日、自ら癌であることを告白された藤原伊織さん。

かの有名なW受賞作品『テロリストのパラソル』は大ベストセラーとなり、新宿中央公園で爆発事件があったときは、この小説に影響されたものではないかとニュースなどでとりざたされたりもした。

筆の遅い彼だが、さんざん待たされた後、書店にて分厚いハードカバーを手にしたときの胸の高鳴りはなんともいえない恍惚感を与えてくれた。


『蚊トンボ白鬚の冒険』を手にしたときも、書店で今夜布団にもぐりこみ、この本の表紙をめくることを想像しニンマリしたのを覚えている。


いざ、その時がきて、表紙をめくり、私は夢中で読み耽った。

ところが、、、数ページ読んだところで、アレ???

え---そんな設定!!!と驚いてしまった。。

主人公は頭の中に蚊トンボが入り込み、そのおかげで、人並みはずれた能力を身に付けてしまうのである。

こりゃ、SF小説??ヒーロー物???

どうしたんだろう。。。まぁ、タイトルを見た時点で勘ぐるべきところだったのかもしれないが・・・。

このまま、悪いやつをやっつけて、日本を救うのか???

なんて思っていたが、、、読み進むにつれて、しっかりハードボイルドモード。

ヤクザの戦争に巻き込まれ、彼女がさらわれ、、、ストーリーは展開してゆく。

そして、なんといっても蚊トンボと主人公のやり取りもおもしろい。

けんかしたり、なぐさめあったり、、次第に互いの意思が通じ合ってくる。

最後は、とても切なく物語は幕を降ろす。


なんか、映画を見ているように状況をイメージしやすい作品だった。

藤原先生には病気を克服し、まだまだすばらしい作品を残してほしいものだ。

BANANA FISH

著者: 吉田 秋生
タイトル: Banana fish (1)

マンガです。

初め吉田秋生の絵が苦手で慣れるまで苦労した。

彼女の代表作は他にも色々読んだが、これがずば抜けて面白い。

文庫本で11巻+アナザーストーリー1巻。

かなりの長編だが、読み始めると止まらなくなる。

ストーリーも深く、登場人物の個性もバラエティにとんでいる。

れっきとした大人マンガだ。

途中、登場人物の多さに誰が誰だかわからなくなるが・・・。(MONSTER同様・・・)

少々の中だるみを超えれば、感動的なラストが待っている。

そして、主人公のアッシュの魅力にメロメロにハマってしまう。

彼がホモじゃなければ、十分に妄想のおかずになること間違いなしなんだけど。。

さらに、アナザーストーリーも泣ける一品である。


余談だが、韓国ドラマでイビョンホンとチェジウがベッドの上で、同著者の「夜叉」を稲中を読んでるみたいに腹を抱えながら笑って読んでいたが、決して笑えるマンガではない。。。



アフターダーク

著者: 村上 春樹
タイトル: アフターダーク

彼の小説を読んだことのある人は大勢いるだろう。

あまり本を読まない人でも1冊くらいは読んでいたりする。

私は高校生の頃、初めて彼の作品を読んだ。

世間知らずで青っちょろいことばかり考えていた高校時代に、彼の作品は私を一歩大人へと導いてくれたのだった。

彼のすばらしい文章は想像力をかきたて、主人公やそれを取り巻く人々の言葉は知的な大人への憧れを抱かせる。

どうして彼の作品の主人公達は魅力的なのか。

それは、たくさんの音楽を知っていて、たくさんの本を読んでいて、たくさんの知識の持ち主で、

だが、それが見え透いたインテリでもなく嫌味でもなく、ごく自然に存在しているからだ。


この作品の主人公、マリも同じようなことが言える。

彼女は美人ではないが若くて、健康的で知識が豊富で、発する言葉はとても魅力的だ。

この物語は、彼女のある一晩の出来事。

一晩中デニーズで本を読む彼女の元に珍客が現れる。

ラブホテルのマネージャー元女子プロのPカオルや美人の姉に好意を抱いていたタカハシ、そして眠り続ける姉。

さまざまな夜が交差する。


いつもの彼の作品とは少し違う気がする。

SF的なロードノベルズ的な要素が加わっていないからなのかもしれない。

物足りないと感じてしまう人もいるかもしれない。

だが、私は物足りた。



ユージニア

著者: 恩田 陸
タイトル: ユージニア

またまた恩田先生です。

今のところ、彼女の作品の中で私ランキング第3位です。

この作品を読み終わって開口一番出た言葉が

「うーーーわっかんねー」

でした。

あたし、頭悪い???

とにかく他にこの本を読んだ人の感想が聞きたい!!

ねぇ、どう想う?

結局、誰が本心を言っているの?

何がそこまでさせたの?

キィーーーーグゥーーーーーゲェーーーー

変な奇声を上げてしまったのでした。

やっぱ、私頭わるいのかな。。。

もう一度読まなきゃ、っと言うことで、再読しようと本日、ページを開きました。

とにかく、今、面白い本を探している人はこの本を選んでください。


ある街の医師、青澤家の三代の誕生日を祝う会で起こった大量毒殺事件。

犯人の自殺であっけなく幕がおろされるが・・・

事件後長い年月をかけて事件の真相が見えてくる。


ストーリーはRPGをやってるみたいに、進んで行くのになかなか核心が見えない。

交差する関係者の証言。

絡み合った糸を解いてゆくと見えてくる人物像。

人それぞれに秘めた内なる想い。

あなたの中のジグソーパズルが完成したとき、そこに映された答えは何でした??


感想のコメントをお願いします。



短編集  魚喃 キリコ

 
著者: 魚喃 キリコ
タイトル: 短編集

マンガです。

私の好きなマンガベスト3に入る作品。

短編19編が納められています。

短い物語の中にこんなにも感情を投影できる作家さんは数少ないと思います。


普通の少女マンガに飽きてしまった人。

小説は苦手だけど、リアルな恋愛感を味わいたい人。

胸に突き刺さるようなあのキュンとする気持ちを思い出したい人。

現実に嫌気をさしてきている人。

毎日、退屈な日々を過ごしている人。

生きることが窮屈に感じてしまってる人。


そんな女の子に贈るマンガです。


この本に出てくる女の子は、自分自身です。

目の前にある現実と胸の裡に秘めた思いを代弁してくれる本です。

そして、小さなきっかけをくれるはずです。





さわやかタイ読本

著者: クーロン黒沢, エポック伊藤, 皿井 タレー
タイトル: さわやかタイ読本―国際奇人変人都市・バンコクへようこそ!

数々の文学賞受賞者のあとにこれを紹介するのは、ちと、どうかと思うのですが・・・


アングラ好きの旅行者に贈るこの一冊!!

タイへ行くならこれを読め。

奇人変人、安宿事情、エロ情報、珍料理に珍アイテムに珍スポット。

ダークでディープなタイランドが満載されたこの一冊。

無事、この本を読み終えることができたのならば、想うのは下記のどちらかだろう。


・コワーイ!!こんな所行きたくない!!バンコクやめて、サムイ島あたりでバカンスを楽しもう!!

・リゾート地はキャンセル!!バックパックに荷物を詰め込んで、「地球の歩き方」を片手に格安航空券を買いに行こう!!


もちろん私は後者。

バックパック背負って安宿めぐり、びびりながらも、ディープスポット巡り。

おかげでどっぷりタイにハマり、2年間で4回もタイ旅行を満喫。

おまけにタイ語教室にまで通う始末。(途中で挫折)


とにかく、この本にはおそろしい呪いがかけられている。

呪縛された人はタイにハマってしまうこと間違いなし?!


その後、続編!?『まろやかタイ読本』が発売になったので、

こちらも後日UPします。。。





夜のピクニック

    
   著者: 恩田 陸
   タイトル: 夜のピクニック

今、ちまたで大注目の恩田陸です。

だーい好きなんです。本当に天才ですね。。

彼女の作品には子供の頃にクリスマスプレゼントを開ける時のようなわくわく感が随所にちりばめられている。

しかも、開けてみるとこれがまたとドンピシャリ。ずっと欲しかったものが目の前に・・・的な感動が味わえる。

おまけに、ジグソーパズルが完成したときのような達成感も味わえる。

まさに一石二鳥本なのである。

本屋大賞おめでとうございます。


高校生活最後の一大イベント「歩行祭」でくりひろげられる、駆引き、葛藤、焦燥。

頭脳明晰で少し大人びた少年、少女たちのさまざまな想いが交差して、物語は進んでゆく。

突如現れた亡霊のような男の子。数日前に届いた友人からの奇妙な葉書・・・・

結末が気になるキーワードは盛りだくさん。

途中で本を閉じる時は先が気になってしょうがないーーーっっと叫びたくなる。

物語のバランスがめちゃめちゃイイんですよねぇ。。。

きっと、恩田さんって料理もすごく上手い気がする・・・・。






笑う山崎

『笑う山崎』 花村萬月著 祥伝社


さて、第一日目ということで、私が花村萬月にハマるきっかけになった『笑う山崎』です。

もう5.6年前になりますが萬月を初めて読んだとき、私はなんとも言えない羞恥心を感じたことを鮮烈に思い出します。

その羞恥心とは、例えると満員電車の中で乗り合わせた全ての男性に自分の昨晩のセックスを想像されているかのような感覚に近いものでした。

自分の決して公にしない部分それも、自ら気づかない振りをしている部分を隅から隅まで露呈された気分に陥ってしまう。そんな小説が萬月文学ではないでしょうか。

私がキャバ嬢をやっていたころ、文学好きのお客さんと好きな作家の話になり、私が花村萬月の名を上げると、「女の子で萬月にハマるなんて珍しいねぇ」とよく言われたものです。。

確かに、暴力描写や性的描写は激しいかもしれないけど、女子ファンは少ないのでしょうかね???


さて、本題の『笑う山崎』ですが、主人公の山崎は中年下戸の極道で決して格好のイイ男とは言えない男。

フィリピン人の妻、マリー(元ホステス)と娘パトリシア(マリーの連れ子)と結婚し、彼の中ではおそらくまっとうな家庭を築こうとする。

だが、一方仕事では冷酷で極悪非道なヤクザ業。

やってることはむちゃくちゃで全てにおいて荒唐無稽。何を考えているのかさっぱりわからないこの中年親父だが、この本を読んでいるうちに、その不器用さと切実さに惹かれている自分がいたりする。

そして、この男に抱かれてみたいと思ってしまったりもする。

そんな感じでどっぷり入り込み一気に読み干してしまった。

また、萬月独特の間やリズムも萬月にハマるひとつの要因になるのではないだろうか。